キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱
キュリー夫人の映画と言えばグリア・ガースンのがあって、イザベル・ユペールのがあった。今回はロザムンド・パイク。たいていの人は伝記を読んでるから、ある程度のことは知ってる。偉大な業績、美しい夫婦愛、不屈の精神。でもそんな通りいっぺんの描写じゃ物足りないとばかりに、暗部も描き出す。私も何種類かの伝記読んでるけど、あのスキャンダル知った時にはびっくりしたな。ホントかよ・・って。見ていても首を傾げるシーンは多い。母親は結核で、子供達にうつさないようそれはそれは気をつけていた。子供を抱きしめてキスをしてなんて言いますかいな。新婚旅行に出かけたピエールとマリーは、全裸で湖に飛び込む。もしエーヴ(次女で、キュリー夫人の伝記を書いた)がこのシーン見たら卒倒するだろう。ランジュバンとの不倫も同様。もっとも、マリーも一人の血の通った女性であって、聖女でも何でもない、かえって人間ぽくていいじゃないかという好意的な見方もあるようだが。時々広島の原爆投下とか、ネバダでの核実験、チェルノブイリの事故などが唐突にはさまれる。その一方でガン治療。それはそれでいいのだが、それよりも当時の無知から来る放射能の被害をもっと描いた方が・・という気はする。また、マリーが放射能が体に及ぼす害を、なかなか認めようとしなかった事実も。映画では認めているけどね。それと彼女のポーランドに対する強い愛国心も、ほとんど描かれていなかったな。彼女の性格も、出てきた時からとげとげしく、傲慢で頑固。ピエールの死や、スキャンダルや、アカデミーの会員になれなかったとか、フランス人じゃないとかいろんな差別や逆境の中で生き抜くにはそうならざるを得なかったのだろうが、見ていて感情移入しにくいのは確か。ピエールに同情した人も多かったのでは?リップマン教授達への態度は、いくら映画でも変。また、天才科学者とあるけど、あんまりそういうふうには見えないね。意地っ張りで恐ろしく辛抱強く一つのことをやり続ける、でも私生活はさびしい女性の一生という感じだった。ピエール役はサム・ライリー。「高慢と偏見とゾンビ」でダーシーをやっていたらしい。ピエールは喀血するなどどう見ても結核のように描かれているが、母親を同じ病気でなくしているマリーがなかなか気にとめずにいるのは変。ちなみに晩年のピエールが苦しんでいたのはリウマチ。長女イレーヌ役はアニャ・テイラー=ジョイ。