蛇の道(1998)
これを見たのは2024年版のついで。でも(よくあることだが)オリジナルの方がシンプルでいい。宮下(香川照之氏)は8歳の娘絵美を惨殺され、復讐を誓った(らしい)。警察の捜査がどのようなものだったのか、どのような結果が出たのかは不明。たぶん彼一人だったら(復讐するにしても)どうしていいかわからなかっただろうが、新島(哀川翔氏)という協力者が現われたことで具体化する。新島は塾で数学を教えている(生徒の年齢がバラバラなので、私は夜間学校かなと思ったのだが)。なぜ協力してくれるのかと聞かれ、「やってみたかった、こういうこと」などと言うので、彼にはサイコパス的傾向が?と思ってみたり。なぜか銃を持っているが、宮下は暴力団の下っ端らしいからそのつてで?幹部の大槻、ボスの檜山を拉致してきて監禁するが、なかなかはっきりしたことはわからない。檜山を売った宮下が殺されるはずだったのが、絵美が代わりに・・みたいな。それでも新島は呆れもせず宮下に協力する。そのうち宮下はただの被害者ではなく、裏の顔がありそうに思えてくる。新島の教え子に、天才的な数学の頭脳を持つ少女がいるんだけど、彼女を見る目が異常。彼女はあの後どうなったのか?映画は多くのことを不明にしたまま終わってしまう。銃撃戦も何がどうなってるのかさっぱりわからない。幼女を誘拐し、拷問したあげく惨殺する。それをビデオにとってマニアに販売・・ウ~ム、「8MM」みたいな感じかな。宮下は撮影には関係なく、販売の仲介をしていたらしいが、彼のようなタイプはこっそり観賞していたはずで。実は新島も娘を殺されていたことがクライマックスで明らかになる。彼にとって宮下は組織につながる手がかり。関係者をあぶり出し、全員始末して一気に決着をつける。もちろん宮下も同じ穴のムジナ。小心で人におもねるような、いやらしい性格。香川氏の演技もいいが、ここはやはり哀川氏の、乾いた冷静さがよかった。数学の教師には全く見えないけどね。
蛇の道(2024)
これは柴咲コウさんが出ているので見てみた。舞台はおフランスに移してある。アルベールは8歳の娘マリーを惨殺され、心療内科医の小夜子(柴咲さん)の協力で復讐に乗り出す。彼はジャーナリストで、ミナール財団に潜入し、子供を売買し、売れ残ったのは殺しているという証拠をつかんでマスコミに売るつもりだったらしい。財団はすでに解散しているが、元会計係のラヴァル、続いて元トップのゲランを誘拐、監禁する。当然のことながら1998年版と比べながら見ている。たぶんこっちはもっと説明的になるだろうな・・とも思っている。小夜子は診察の時は別として、それ以外はずっと無表情。鬱病らしい患者吉村役は西島秀俊氏。いかにもこれから自殺しますという感じ。で、自殺する。自分の患者がそうなっても小夜子は冷静。彼女はもう山を越えてしまったのだ。最愛の娘の死という山を。彼女の心はもう死んでいる。アルベール役ダミアン・ボナールはやや太り気味で、ヒゲがむさくるしい。どうも好きになれないタイプ。ラヴァル役がマチュー・アマリック。どこかで聞いたような・・いや、あっちはマチュー・カソヴィッツだな。こっちのアマリックは見たことないな。ゲラン役がグレゴワール・コラン。ん?どこかで聞いたような。「美しき男優たち」という本を引っ張り出して確かめたら、いたいた、若き日のコランが。鼻が長くて変わった顔立ちで黒い僧服があまりにも似合う。でも「ビフォア・ザ・レイン」も「ネネットとボニ」も見たことないのよね。あの清らかそうな青年がこうなっちゃうのね。でも太ってはいないし、ボナールみたいにむさくるしくもない。こちらは臓器目的みたいになっていたな。財団を創設したデボラは元外科医で、臓器を取り出すところを動画にとっていたのがクリスチャン。アルベールの妻ローラが出てきたりして、何か話に取りとめがなくなってくる。クライマックスではデボラと対決とかそういう展開なら話も引き締まるけど、彼女はすでに自殺。これじゃあねえ。ラストの、小夜子と日本にいる夫とのビデオ通話は98年版にはない設定だが、なかなかよかったと思う。ただ、日本とフランスの距離を越える何かが欲しかった。すでに夫に復讐する手段は講じてあるとかさ。あれじゃあ復讐完了してませんぜ。