ヒンターラント

ヒンターラント

オーストリア/ルクセンブルク製ということで、知っている人も出ておらず普通なら見ないけど、連続猟奇殺人ミステリーということで。第一次世界大戦に敗れ、オーストリア=ハンガリー帝国は消滅し共和国に。1920年、ロシアでの過酷な収容所生活を終えて帰還してみれば、祖国は崩壊していた。国のために戦ったのに帰還兵は白い目で見られるし、多くの者は生活の当てもない。おまけにトラウマに苦しめられる。ウィーンの街並みはまるで絵のようで、建物はどこか傾いて見える。ペルク(ムラタン・ムスル)にはそれでもアパートの部屋が残っていたが(何で仲間を泊めてあげないんだろう)、妻と娘は田舎へ。会いに行こうとしたら駅で財布をすられ・・。実は彼は元警部で、数々の難事件を解決した腕き。おりしも一緒に帰還した仲間が殺され、元同僚で今は警視のレンナーの要請で捜査に協力することに。さぞ現役時代は妻子をほったらかして飛び回っていたのだろうな。せっかく生還したのにうじうじしているのはそのせいなんじゃないかしら。おまけに彼の生死が不明な中、妻とレンナーの間には関係があったらしいし。その一方で監察医のケルナー(リヴ・リサ・フリース)は、過去ペルクに命を助けられたことがあり、彼に好意を持っている。ある晩結ばれるが、ペルクの妻への思い変わるわけではない。妻のペルクへの思いが変わらないように。内容も暗けりゃ画面も暗いけど、ケルナーや若手刑事セヴェリン(マックス・フォン・デア・グレーベン)にはこれからだという生命力が感じられる。セヴェリンは最初ペルクが殺人犯だと思い込むが、腕きだったと知ると態度を変える。他にホフマンという若いのがいて、こちらはどことなくキリアン・マーフィに似た顔立ち。この二人を見ていれば目の保養になって、辛気くさい内容もがまんして見ていられる。ヒゲに埋もれたペルクじゃねえ・・。ケルナーが言う、戦争のおかげで・・男性がいないから・・女性の自分がこの地位につけたという言葉が印象に残る。次々に犠牲者が出、そのうち犯人の動機もわかる。でも・・あの混乱した状況でペルク達が帰還したことを犯人はどうやって知ったのかな?公報にでも載るの?ラストシーンには娘もいた方がよかったな。せっかくの御対面なんだからさ。