新源氏物語

新源氏物語

見るのは初めてだと思うが、なぜかところどころ見覚えのあるシーンがあった。桐壺(寿美花代さん)はあまりいい身分の出ではないが、帝の寵愛を一身に受けている。そのせいで他の妃達の嫉妬やいやがらせを、これまた一身に受けることとなる。帝も少しは配分考えろよ扉を閉めて通れなくされたり、汚物をまかれたり。気の弱い桐壺は男児を産むとまもなく他界。成長した光(市川雷蔵氏)は新しく入内した藤壺(寿美さん)が母親に生き写しと聞き、思慕を寄せるように。そのうち寝所に忍び込んで思いを遂げるが、以後二人とも苦しむことになる。特に藤壺は子供ができてしまい、いっそう苦しむ。光は左大臣の娘葵(若尾文子さん)と結婚するが、あちこちに恋人がいる光には冷たい。冷たいと言っても彼女が要求しているのは一人の妻を大事にし、愛してくれる夫。女性からすればしごくもっともな望み。でも一人を守り通すなんて「落窪物語」の少将くらいなもので。光には六条御息所という年上の恋人がいて、彼の足が遠のくと生霊となるほど嫉妬深い。葵を苦しめ、出産直後の彼女を取り殺してしまう。やっと夫婦らしい仲になれたのにと光は嘆くが、そもそも好色なおまえが悪いんじゃい!映像化したらさぞ怪奇ムードが出ておもしろかったであろう夕顔はスルー。末摘花(水谷良重さん)との一夜に。ここで描かれるのは、原作とは全く反対のよくしゃべり、光をリードし、朝ごはんも作る積極的な末摘花。あらまあ・・。他に出会った直後に若紫を拉致する光。ひどいことするなあ。レイプに誘拐・・これじゃいくら悩んでいたって誰も同情しませんて。女達の中には朧月夜(中村緒さん)みたいに自分から近寄ってくるのもいるけど、たいていは寝ているところを襲われる。藤壺だって帝との間に子供が生まれたのならどんなにうれしかったことだろう。でもこれからは母として息子を守っていかなければならない。秘密がばれたら・・何しろライバル達はスキャンダルはないかと虎視眈々と狙っているのだから。つきまとう光から逃れるには出家するしかない。でもその前に一度だけネ。朧月夜に手を出したことがばれて明石須磨へ隠棲することにした光、それを見送る成長した紫・・ってところでエンド。まあ当時の観客のお目当ては光輝くばかりに美しい雷様(カミナリ様じゃないよ)だっただろうからな、出来なんてどうでも・・。私自身は若尾さんのぼってりした顔つきやしゃべり方が印象に残った。きれいだなあ・・。