ツーフィンガー鷹

ツーフィンガー鷹

製作は1979年だが、日本での公開は1988年とあるから、かなり後。これは映画館で見た。ユン・ピョウの映画は「チャンピオン鷹」とか「モンキーフィスト/猿拳」とかけっこう見に行った。彼の魅力はやんちゃな弟みたいな、母性本能をくすぐると言うか、見ていて微笑ましくなると言うか、そういうところにあると思う。ブルース・リーやジャッキー・チェンにはちょっとグロテスクなところがあって・・いやこれってほめ言葉ですけど・・それが故に大スターになれた。でもユン・ピョウにはそういうところがない。いたって普通、見ていて安心。ただし横に個性的な人がいると食われてしまうこともある。実際この映画を見てから数十年たってるわけだが、覚えているのはレオン・カーヤンがユーレイみたいなのと戦って殺されてしまう・・その一点だけなのだ。ユン・ピョウよりカーヤンの方が印象に残ったのだ。タン(ユン・ピョウ)は姉と二人暮らし。両親はいないようだ。洗濯屋をやっていて、集金や注文取りは彼の仕事。ところが彼は臆病で気が弱い。それをいいことにみんな料金を踏み倒す。おまけに新しく洗濯物押しつける。帰ると今度は姉に怒られる。見ている人は何で気の強い姉が集金に行かないのかと不思議に思う。姉役は「ヤングマスター/師弟出馬」に出ていたリリー・リー。小柳ルミ子さん似。出番は意外に少ない。もっと活躍してもいいキャラなのに。タンの義兄弟フォンがカーヤン。彼はこの映画ではヒゲなし。私はたいていの場合男優はヒゲなしの方が好きだが、カーヤンはヒゲがある方がいいかな。フォンはウォンの弟子で、腕前もかなりなもの。カンフーだけでなく、世間一般のことにも通じていて(と言うか、タンが通じていなさすぎるのだが)、おくてのタンを心配し、男にしてやると連れ出したりする。女性に囲まれ、酒と醤油の区別もつかないほどあがっているタンのかわいいこと!さて、ウォンは武術だけでなく人格的にもすぐれ、まわりからは尊敬されている。医術にもすぐれ、患者が料金払わなくても気にしない。演じているクワン・タッヒン(関徳興)は眼光鋭く、老齢だが動きはなめらか。調べてみたらこのウォンというのは有名な黄飛鴻なのだそうな。最初の方で獅子舞のシーンがある。何と言うかユン・ピョウだけでは持たないので、こういうのを入れて時間稼ぎみたいな。

ツーフィンガー鷹2

の獅子舞のシーンもかなり長い。これでタンが飛び入りで獅子舞を披露するなら話は別だが、彼は何もしない(できない)。途中からフォンと組んで奮闘するウォンがいっそう目立つばかり。さて、ウォンの名声を妬んでいるのがライバル道場のタム。何をやっても負けてしまうのがおもしろくない。その彼のところへ白虎というお尋ね者が転がり込んでくる。演じているユエン・シュンイー(袁信義)は「女デブゴン強烈無敵の体潰し!!(ドラゴン酔太極拳)」に出ていたな。うなるだけでセリフなし。タンは首にかけたお守りの鈴をいじくるのが癖。で、鈴の音を聞くと、白虎は妻を殺された時のことを思い出し、相手が誰だろうとかまわず襲いかかるわけ。タンにすればなぜ襲われるのか見当もつかない。執拗に追い回されるが、逃げ回るしかない。白虎の妻役の人は「カンフーハッスル」に出ていた膨張するオバサンかな?あれこれあってフォンは白虎に殺されてしまう。舞台がはねてひとけのなくなった劇場での戦いはなかなかユニーク。白虎は前と後ろに仮面をつけていて、そのせいでフォンには相手がこちらを向いているのか背中を向けているのかわからない。で、クライマックスではタンと白虎の死闘。ウォンも老齢ではあるが白虎と互角に戦っていて・・まあ半分くらいは別の人がやってるんだけど、それでもすごいな。タンは正式にカンフーの修行をしたことなくて、フォンに頼んでウォンに弟子入りしようとするけどそれもだめになって。だから生まれつきの身の軽さ、すばしこさの他は日々の洗濯で鍛えた指の強さ、つまんだりする俊敏な動きが武器となる。何しろ脱水機なんてないから、指で布をはさみ、ツーッと滑らせて水分を切る。途中で姉でも出てきて助太刀すればおもしろくなっただろうけど、そういうのはなかったな。ユン・ピョウのためにみんなして力を合わせて盛り立ててやろうみたいな雰囲気があって、そのせいでかえってまわりの実力者達の方が目立ってしまったみたいな、そんな作品。とは言え21か22くらいの若くて新鮮でかわいいユン・ピョウを見られるだけでも、ファンにはうれしい。