空飛ぶ十字剣

空飛ぶ十字剣

これを見るのは何年ぶり・・いや、何十年ぶりだろう。なぜか映画館で見て、パンフも買ってある。ロードショー公開で見たのではなく、二本立て三本立てになってから見た。したがって立体メガネだか偏光フィルターメガネだかもなし。映画の売りは「ウルトラ・キュービック方式でとられた超立体映画」だが、こちとら何のことやらさっぱりわかりましぇん。ついでに言うと「宦官」の意味も知らなかった。今のところソフト化されてないが、幸いテレビで放映したのを録画してある。東京12チャンネル(現テレビ東京)の火曜ロードショーで、CM抜きで1時間30分。・・てことは2時間枠でやってくれたのだ。数分のカットですんでいるのだ。サブタイトルは「必殺の空手道か唸る新型兵器か」。ビデオにとったのをDVDに移したわけだが、画質が悪いことやノイズが入るのは仕方ないとして、画面が切れているのはどうにも残念。肝腎な部分がうつっていなかったり、上が切れているためうつっているのが首から下だったり。後者は見ていてもずいぶんオマヌケな感じだ。主演はレオン・タン(譚道良)とパイ・イン(白鷹)。たぶんレオン・タン目当てで映画館へ行ったのだろう。功夫映画関係の本に、実力がある俳優として彼とブルース・リャンの名が挙げられていたから。雑誌にはリャンの方が多く取り上げられていたが、私にはどうもぴんとこなかった。関係ないけどこの二人、顔がよく似ている。さて時は17世紀末、明王朝も衰退し、権力を握っているのは宦官ツァオ(パイ・イン)。彼を補佐しているのが二人の将軍ルー(チン・カン)とシャウ(リン・ダー・シン)。パイ・インは「アンジェラ・マオの女活殺拳」や「侠女」などでおなじみの人。細身の優男、あごのホクロがチャームポイント(←?)。時々目をすがめるような表情になるのが魅力的。悪役をやってもあんまり憎たらしく見えない。チン・カン(金剛)は「少林寺木人拳」や「怒れるドラゴン 不死身の四天王」などいろいろ出ている。リン・ダー・シン(林大興)は知らない人。若くて細くて松田優作氏似。パンフの表紙は彼だろう。髪型や衣装は違うけど、顔だけ彼。レオン・タンが超地味なので、彼の方へ目が行ってしまうかも。さて、ツァオの心を曇らせているのが、天子の弟ニン王子の存在。

空飛ぶ十字剣2

王子ったってヒゲの生えた中年で、美形期待するとはずされる。自分に歯向かうニン王子を倒そうと、ツァオの一団は馬を走らせる。これが冒頭のシーンだが、だらだらと長い。90分枠なら喜び勇んでチョッキンチョッキンカットするところだ。王子は一足早く逃げ延びた後。しかし行き先はわかっている。ホアン・チュー寺だ。そのホアン・チュー寺で修行しているのがタン(レオン・タン)。彼は13年前父親をツァオ達に殺され、復讐を誓っている。13年前のシーンで、ツァオやルーが今と変わらないのは大目に見るとして、シャウまで同じというのはいくら何でもおかしい。13年前なら彼は少年と言ってもいい年頃だったはず。それとも彼は年を取らない妖術でも会得しているのか。そういう設定にすればおもしろいのに。それはともかくやっと登場したレオン・タン。残念なヘアスタイル、残念なコスチューム。カツラと丸わかりで、しかも似合ってない。一昔前の田舎の女の子って感じ。小柄で足が太く短い。顔立ちも地味。おまけに頭で鐘をゴォーン。すごい!と言うより笑っちゃう。まあすごい技持ってるというのはわかるけど。頭で瓦を割り、飛んでくる壺を手や足で壊す。そして連続蹴り。スローモーションで連続してというのは、実力がないと見せられない。細切れなどの小細工はいっさいなし。夜、ツァオの寝所に忍び込んだのがラン(デヴィッド・タン)。映画館で見た時はびっくりした。レオン・タンじゃなくていやに顔のでかい、歌舞伎役者みたいなのが出てきたから。化粧してるみたいだし老けてるし。もっとも今回見たらさほど変でもなかった。沖雅也氏とか仲雅美氏とかそっち系の顔立ち。ツァオの命狙って忍び込んだのは見え見えだけど、うまいこと言ってツァオに取り入る。用心深い彼が初対面のランを信用するはずないけど、なぜか気に入られて、オヨヨ。今回見直してわかったけど、この映画女性はほとんど出てこない。カットされた部分に出ていたのかもしれないが。何しろ超立体映画だから矢だの石だのいろいろ飛び出させなくちゃならない。男女が恋に落ちたって何も飛び出さない(←?)。したがってこの映画で唯一色っぽいシーンは、ツァオがランの手を握ったり、肩に手を回し、夜のお勤めをほのめかすここだけどす。

空飛ぶ十字剣3

なぜタンが寺を離れるのかはよくわからない。一部の僧侶も寺を離れ、後でタンを助けるため現われる。直後ツァオの一団が寺へやってくる。もぬけの殻に見えたが、タンの師匠など数人が残っていた。師匠役マー・チャン(馬場)は見たことがある。「クレージーモンキー/笑拳」に出ていたらしい。ここで衣を棒のようにして突き出すのが珍しい。先っぽがプルプル振動しているのも珍しい。見ている人は思わずよけるんだろうけど、映画館で見た時は立体じゃなかったから、何じゃこりゃと思いながら見ていた。師匠はツァオに頭突きを食らわせるが、倒されてしまう。ツァオの手が師匠の胴を突き抜け、背中から飛び出す。うげ~。頭突きの衝撃から回復するのには七日かかるのだそうで、その間はツァオの力もいくらかは減じるのか。ネットで調べると、ツァオの”脳みそ食い”について書いてる人が多い。首をはねたり、断頭クワガタ剣で首がポンポン飛んだり、残酷な描写が多いこの作品だが、テレビでは脳みそ関係はカット。髪をごっそり抜くシーンはあるが、その先はカットされてる。見たいとも思いましぇ~ん。ニン王子はすでに毒を飲んで自殺していた。タンの復讐が始まる。短く切った数本の竹筒が何度か出てきたが、あれは位牌なんだな。見ている時は何をしてるのかなと思ったけど。途中でフォンチューとかいう男性が出てくる。そう言えばこんな顔の人出ていたっけ‥と思い出したが、すぐ死体になってる。だから彼の役回りはわからないまま。冒頭の長々と馬を走らせるシーンなんかいらないから、こっちの方をちゃんと見せて欲しかった。カットする場所を間違えとる!タンはまずルーを狙う。タンは武術だけでなく幻術も使うらしい。元々ルーは頭の方はあまりよくない。幻惑されて自分の部下を次々に殺してしまう。そのうち外に出るが、画面が切れてるせいで、木に登ってるタンがうつらない。ルーは両手首を切断されるが、その状態であんなに動けるはずがない。とどめでスパッの方がいいと思う・・ってこんな文章ホントは書きたくないけど。書いてる自分が恐ろしい。

空飛ぶ十字剣4

次に狙うのはシャウ。彼はルーと違って頭がよく自信家。男達がタンを待ち伏せし、断頭クワガタ剣で襲ってくる。助けに来た僧達の首がポンポン飛ぶ。しかしシャウも倒される。ランはタンに協力を持ちかけるが、タンが聞くはずもない。その後タンは部下に化けてツァオを襲うが、うまくいかない。ここらへんでランがニン王子方であることがわかる。と言うか、現われた時からわかっていたことだけど。ツァオはランを信頼していたので、なかなか信じられないが、いよいよクライマックスに突入だ!最初屋内で戦っているが、そのうち外へ出る。ルーの時もそうだった。何しろレオン・タンの得意技である木登りを見せなくちゃならない。そして今度は「空飛ぶ十字剣」という題名の通り、十字剣を飛ばさなくてはならない。頭突きを食らって今日でちょうど七日目。影響は残っているのか。それともツァオが言うようにもう治っているのか。せっかくの設定もうやむやで終わってしまったのが残念。さて、胴を斬りつけられてもツァオは平気で、それもそのはず銭で作った鎖帷子を着ているのだった。途中でそれを脱ぎ、ブンブンと振り回して投げる。十字の形をしているから十字剣だ。途中で何かに当たってもブーメランみたいにちゃんと手元に戻ってくる。飛んでるのを見てないで、その間にツァオを襲えばいいのにと思うけど、タンもランも見てる。まあ戻ってくるから目を離せないんだけどね。しかし帷子を脱いだツァオは無防備でもある。だから結局倒される。ここらへんのシーンではカメラにゴミがついていて、何で拭かないのかと気になる。そのずっと前の、ニン王子の協力者が首をはねられた後の空のシーンでも同じ形のゴミがついてて。ちょうど飛行機みたいな形をしているので、最初見た時はうつっちゃったのかとびっくりした。で、このクライマックスの戦いのシーンでは、ゴミがうつったりうつらなかったり、あるいはゴミが移動したり。後者はトリミングのせいだろう。さて、やっとのことでツァオを倒したが、傷を負ったランも死に、タンだけが生き残る。てなわけで・・久しぶりに見たけど、この頃の映画は出来に関係なく何ともいいようのない魅力がある。知恵をしぼり、長年訓練した手と足(と石頭)を使って作られている。CGがないからごまかしもきかない。こういう映画を嫌いになれるわけがない!