PERFECT DAYS

PERFECT DAYS

久しぶりに映画館へ。いつもは2階席は私一人だけど、今回は5人くらいいたな。1階と合わせりゃ20人近くいたかも。平日の午前だから多い方。パンフは1100円、高いね。ヴィム・ヴェンダースの作品はテレビで「ベルリン天使の詩」を見たくらい。「シティ・オブ・エンジェル」関連でね。平山(役所広司氏)の1日は5時15分頃、近所の人が道路を掃く音で目覚めることから始まる。寝ているのは2階で、夜も窓を開けたままのようだ。フトンをたたみ、1階の台所で洗面、歯を磨いてヒゲを剃る。2階で作業着に着替えてまた下りて。玄関には小銭やガラケーなどが並べてある。5時30分に外に出て、自販機で缶コーヒーを買い、これが朝食。に乗って決まった場所まで来るとカセットで音楽を聴く。流れてくるのはアニマルズの「朝日のあたる家」。この映画はいろんな曲が流れるけど、私が知ってるのはこの曲と、オーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」だけだな。平山の仕事は公共トイレの清掃。アパートは押上にあって、仕事するのは渋谷。それにしてもこんな変わったトイレがあるとは・・。同じところを1日三度清掃するらしい。一緒に仕事するタカシ(柄本時生氏)は平山とは正反対。遅刻してくるしおしゃべりだし、仕事ぶりもきれいにしたってどうせまたすぐ汚れる・・と、いいかげん。平山はいつも戸外でお昼を食べる。サンドイッチを食べ、木漏れ日をカメラにおさめる。仕事が終わると自転車で銭湯へ。たいてい一番乗り。浅草の地下街のなじみの店で一杯やって、でもそれじゃあ栄養不足だな。この地下街テレビの「植野食堂」にも出てきたな。私は・・通ったことはあるけど、よく見たことはないな。アパートへ帰ると寝るまでの間文庫本を読む。暗いし姿勢悪いし目によくないな。で、寝る。これがくり返し何度も出てくる。休日はコインランドリーで洗濯、フィルムを現像に出し、でき上がったものを持って帰る。新聞紙を使って部屋を掃除してから写真の選別。気に入ったものは缶に入れて保存し、いらないものは捨てる。押し入れの中は缶がびっしり。古本屋にも行っていたな。買うのは100円の文庫だけ。夕方になると色っぽい女将(石川さゆりさん)のいる飲み屋へ。

PERFECT DAYS2

毎日のリズムがちょっと狂ったのは、姪のニコが家出してきたこと。最初は平山は離婚して、ニコは娘なんだと思ったけど違った。彼女は平山の仕事を手伝ったりする。階で寝るので、平山は気をつかって階で。いろんな家具が詰め込まれた、そのすき間に寝ている!普段寝起きしている階の部屋は、隅にフトン、カセットテープ、文庫本がぎっしり詰め込まれた本棚、水やりを欠かさない植物。本を読むには電気スタンド。テレビも掃除機も持たないミニマリスト。でも・・階の一部屋に全部押し込んであるのだ。そういう生活スタイルを築き上げたのだ。そんなことができるのも一人暮らしだから。彼の連絡を受けて妹(麻生祐未さん)が来る。実家は鎌倉にあって裕福らしい。運転手つきの車。父親と衝突して家を出たのか。父親は病気らしいが、妹に言われても平山は会いに行く気なし。家業や家族に関わりたくないと家を出たとして、あとはほったらかしにできるかと言うとなかなかそうはいかない。家族の誰かが重荷を押しつけられ、苦労するはめにたいていはなる。家業なんてつぶれたってかまわない、親なんかどうなったっていいとはならないし、なれない。過去に何があったのかは不明だが、一抜けたと知らん顔していられる平山は運がいい。妹は金には困らないだろうが、ある意味運が悪い。あのものが詰め込まれた部屋は平山の過去を表わしているかのようだ。存在しないものとして普段は無視されているけど、でも片づけられることなく存在している。この後平山は密かに好意持ってる女将が男と抱き合ってるのを見てショックを受ける。でもその男友山(三浦友和氏)は女将の元夫で、もう再婚しているがガンが全身に転移している状態だとわかる。彼はそれを告げに来たのだ。それに比べれば平山は別に悪いところはなく元気に仕事できる。何と幸せなことだろう。いつか彼も孤独死なんてことになるかもしれないが、少なくともそれは今じゃない。エンドクレジットで流れる静かでやさしい曲がよかった。ピアノだけど、最初はオルゴールかと思ったくらい。写真屋の不愛想な主人、逆に気さくな古本屋の女主人、いつも平山の隣りのベンチで昼食をとる内気そうな女性、タカシとは違いきっちり仕事をする女性・・みんなよかった。