死体を売る男

死体を売る男

ロバート・ルイス・スティーヴンソンの短編小説がもとで、監督はロバート・ワイズ。ボリス・カーロフとベラ・ルゴシが出ているが、ルゴシの方は意外なほど軽い役。冒頭御者のグレイ(カーロフ)が足の悪い少女に馬の顔をなでさせるなど親切にしてやっている。この少女ジョージナが母親のマーシュ夫人に連れられてやってきたのは医師マクファーレンの家。馬車の事故で父親は死亡、自分はケガ。方々で見てもらったが最後にたどり着いたのがマクファーレンのところ。しかし彼は手術より教師としての仕事の方が大事と断る。一方医学生のフェティズ(ラッセル・ウェイド)は金がないため医師になるのあきらめかけている。マクファーレンはそれを惜しみ、助手に雇う。そうすれば住むところは確保され、給金も出る。私最初はこのマクファーレンがルゴシかなと思ったけど、違う人だ。ヘンリー・ダニエル・・どこかで見たことがあるが、44年版「ジェーン・エア」でブロクルハーストやってた人だ。ルゴシはマクファーレンの召使ジョゼフ役。マクファーレンは解剖の授業のため死体を必要としていたが、正規の入手方法ではとても足りない。夜中にグレイが死体を馬車で運んでくる。フェティズはそれを受け取り、代金を払うのが役目。問題は墓を掘り返して死体を持ってくること。すぐに気づいたフェティズだが、マクファーレンのことは尊敬してるし・・。二人でパブで飲んでいると、グレイがなれなれしく話しかけてくる。どうも彼はマクファーレンの弱味を握っているようで、優越感に浸って喜んでいるように見える。マーシュ夫人に懇願されたフェティズ、しかしマクファーレンは脊柱の手術は難しいと渋る。思い余ったフェティズはグレイに相談。しかし彼が持ち込んだ若い女性の死体は、施しを得るためいつも通りに立って歌っている少女だった。彼女が死ぬはずがない、警察に通報すると言ったものの、死体の調達を頼んだのは自分。一方マクファーレンのところで行なわれていることを嗅ぎつけたジョゼフはグレイを訪れ、金を要求。反対に殺されてしまう。リスボンから来た彼は知らなかったが、昔バークとヘア事件があった。18人も殺し、医師のノックスに売ったが、マクファーレンは彼の助手だった。死体の運搬をやったグレイは裁判でマクファーレンをかばい、それをネタに今日まで彼にまとわりついているわけ。

死体を売る男

マクファーレンのところにいるメグは家政婦かと思ったら実は妻。暗い過去が邪魔して正式に夫婦にもなれずにいるのか。彼女は”千里眼”なのだそうで、将来が見えるらしい。フェティズには早くここから去って欲しいと思っている。その前にマクファーレンはジョージナの手術をし、経過は順調と思われたが、なぜか立つことができず、手術は失敗と思い込む。見ている者は精神的なことが邪魔しているのだとぴんとくるが、知識偏重のマクファーレンは気づかない。後でジョージナは以前グレイにさわらせてもらった馬を見たい一心で車椅子から立ち上がり、フェティズや母親を驚かす。すぐにマクファーレンに知らせようと彼のいる酒場へ。ジョゼフが殺され、今度こそはとグレイの家へ行ったマクファーレンは、格闘の末グレイを殺す。死体は解剖の授業で使い、馬と馬車は売って、彼の痕跡をなくすのだ。そこへ吉報を持ってフェティズが来た。おまけに今までとは別の墓地で葬式があったと聞き、自分にだって墓掘りはできる、グレイがいなくたって・・と早速出かける。フェティズにはグレイは立ち去らせたと言っておく。さて・・ここらへんになると私も首を傾げたくなるわけです。今こそフェティズは死体泥棒なんてきっぱり断るべきでしょ。グレイが去ったのなら今までの墓暴きはなかったことにできる。メグにだって忠告されたではないか。何でまたマクファーレンの手助けをして危ない橋渡るのか。でも・・手伝ってるんですよアホか!それでもせっせと穴掘ってるマクファーレン見て思ったんですよ。今がチャンス!ってね。スコップで頭ポカンとやりゃ、あとは土をかけるだけでいいぞ・・って。でも何もしてない。死体を掘り出し、嵐の中馬車を飛ばす。グレイの辻馬車と違ってマクファーレンのは狭いから、死体は二人の間に。そのうちマクファーレンの耳にはグレイの呼ぶ声が聞こえ始める。あ、そういう終わり方ですか。マクファーレンの狂信ぶり・・後進を育てるためには死体が必要。なかったら殺してでも・・というのが強烈。グレイのマクファーレンへの執着もすごい。いじめる相手がいないと自分の存在意義が見い出せないという。あとフェティズの優柔不断ぶりね。