8月の家族たち
私はこういうののしり合ったりわめき合ったりという映画は見ないのだが、ベネディクト・カンバーバッチが出ているので仕方なく。キャストは豪華で、舞台は狭く、セリフは多い。それぞれ表と裏があり、秘密を抱えている。隠しているけどばれてるし、ばれてるけど黙ってる。幸せや安らぎは手の届くところにあるが、手は出さないし、届いたと思ったら消え失せる。べヴァリー(サム・シェパード)が失踪し、集まった家族。やがて溺死体が発見され、葬儀。妻ヴァイオレット(メリル・ストリープ)は口腔ガンの治療で髪が抜け、薬のせいでハイになってる。口のガンなのにタバコを吸う。長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)は夫ビル(ユアン・マクレガー)の浮気が許せず、別居中。14歳の娘ジーン(アビゲイル・ブレスリン)は反抗期。両親がもめてるのは嫌だろうけど、と言って両親に干渉されるのも嫌という複雑なお年頃。次女アイビー(ジュリアンヌ・ニコルソン)はいとこのチャールズ(カンバーバッチ)と恋仲だが、実は姉弟だと知り、動揺する。三女カレン(ジュリエット・ルイス)はスティーヴ(ダーモット・マルロニー)と婚約中だが、彼はジーンにマリファナを吸わせたり、すきあらば手を出そうという好き者。ヴァイオレットの妹マティ・フェイ役マーゴ・マーティンデイルは「ミディアム」にアリソンと同じ霊能者役で三回出ている。太っていて感じのいい人だが、この作品では思いがけない告白をする。べヴァリーと密通し、生まれたのがチャールズ。しかも彼女はバーバラに二人の結婚を止めるよう命令するのだ!自分でしろよ!ストリープとロバーツの罵倒バトルがこの作品の売り物だろうが、見てる人はバーバラはともかく、ヴァイオレットの方はどうなろうが知ったこっちゃないと思うよ。彼女はべヴァリーの過ちを知っていたけど黙ってた。取っておきの切り札として。でもさんざんちらつかせていたはずだ。最後まで残っていたバーバラにも、べヴァリーの死の責任は自分だけじゃなくあんたにもあると主張。家を飛び出したバーバラは一度車を止めるけど、あの後実家に引き返したのか、それとも自分の家に向かったのか。私は後者だと思う。今彼女に必要なのは、自分の家族の関係修復。アイビーとチャールズはどうなるんだろう。と言うか、こんな残酷な設定必要だったのかな。マティ・フェイの夫役クリス・クーパーやメイド役の人もよかった。