ラプラスの魔女

ラプラスの魔女

WOWOWでは毎月たくさんの映画やるけど、見るのはほんの一部。まずアニメは見ないし、英米製以外はほとんど見ない。韓国だって毎月たくさんやってるけど、たまにビョン様のを見るくらい。テレビでも韓国製はしょっちゅうやってるな。チャンネル回すと必ずと言っていいほど女性のがなり声が聞こえてくる。何をそんなに怒っているのかね。ここんとこわりと邦画も見るようになった。英米に偏って見てると、いつもおんなじような内容見させられてるのに気づく。種切れなんだろうな。邦画を見るようになったのは何と言っても字幕がついているから。ついてなきゃ見ない。だってホント何言ってるかわかんないのよ字幕なしじゃ。この映画もそう。何でもっと口を大きく開けてはっきりしゃべらないんだろう。櫻井翔氏は「謎解きはディナーのあとで」の人だな。・・赤熊温泉で水城という映画プロデューサーが硫化水素中毒で死亡。調査のために呼ばれたのが泰鵬大学で地球化学教えている青江(櫻井氏)。空気中の硫化水素の量は微量で、温泉の営業再開には問題なしだが、なぜ水城が中毒死したのかは不明。密閉された空間なら中毒もありうるが、風の通りのある屋外だ。麻布北署の中岡(玉木宏氏)は他殺を疑っている。水城の妻千佐都(佐藤江梨子さん)はずっと年下で、夫の死によって保険金が入る。しばらくして今度は苫手温泉で売れない俳優那須野が中毒死。一ヶ月の間に別々の場所で同じ映画業界の男が硫化水素中毒死というのが中岡には引っかかる。千佐都による連続殺人か。何度聞かれても青江は硫化水素による殺人は無理と答えるしかない。とは言え気にはなっていて、本業がついおろそかになり、助手の哲子(志田未来さん)に注意されたりする。どちらの温泉地でも見かけたのが円華(広瀬すずさん)という若い女性。彼女は死体発見場所に興味持ってるようで。一方中岡は水城と那須野の接点となりそうな人物はいないかと調べ、有名な映画監督甘粕(豊川悦司氏)に行きたる。八年前彼の長女が硫化水素を使った自殺を図り、妻と長男が巻き添えに。取材に行っていた甘粕は難を逃れ(同時にアリバイもあり)たが、妻と長女は死亡、長男謙人は植物人間状態に。彼は事故後の経過をブログに綴っており、ここらへんは家族愛と言うか感動的と言うか、そっち系の映画見せられているような気にさせられる。

ラプラスの魔女2

ネットでの批評読むとけなしている人が多く、私自身も何じゃこりゃ映画の部類だと思ったが、私の場合何か一つでもいいところ、気に入ったところがあればそれでオッケーの方なので、見て損したとは思わない。原作は未読だが、主人公は誰になるのだろう。それと言うのも青江は主人公にしては・・。いやもちろん櫻井氏だし、彼が出ているから、彼が主役だと思って、みんな見に行くんだと思うけど。最初のうちは彼が事件に巻き込まれ、最後には謎を解いて事件を終わらせるのだと私も思っていた。でもそのうち違和感を感じ始める。彼は中岡に何度聞かれても同じことしか答えない。そりゃ化学者としてはそうとしか答えられないのだ。でもそれだと映画は停滞するんだよね。彼の講義を聞いている学生達は一様につまらなさそうな表情をしている。居眠りしている者もちらほら。それも無理はないのだ。青江の講義退屈で興味を引くようなところがない。全員に単位をくれるから受講しているだけ。他の映画に出てくる大学教授の中にはおっそろしく行動的で、天才的な頭脳を持ち、警察を尻目に難事件を次々に解決・・なんてのもいるが、現実にはそんなのいないのだ。とは言え映画としてはこれじゃ困るんだけどね。最後の方で青江「結局何の役にも立てませんでした」と言うのが笑える。それでいてその少し前のシーンでは謙人が一部の天才じゃなく、価値もなさそうな人の方が重要・・みたいなこと言っていて。でも謙人や円華は脳外科手術によって天才になってしまったんだけどね。この映画ってかなり薄っぺらくて、説明不足の部分もいっぱいあるんだけど、それでいて幾重にも重なっているようなところもある。見ようによっては深いのだ。さて、では中岡の方は青江に匹敵、あるいはそれ以上の活躍見せるのかと言うとそうでもない。事件解明への意欲はあって、青江がいくら否定的なこと言ってもめげずに、自分の勘を信じて突き進む。上司も応援してくれるんだけど、この上司のセリフがまた薄っぺらくて、後で覆るんだろうなってのが今から見え見え。最後の方で思った通り上からの圧力で事件は闇に葬られちゃうんだけど、中岡は組織に属している以上どうすることもできない。・・となると実質的な主人公は円華と謙人ということになるのかな。

ラプラスの魔女3

甘粕は謙人の主治医から、ある手術を勧められる。リスクはあるが回復するかもしれない。手術によって謙人は植物状態からは脱したが、どうやら自分に関する記憶を失っているようで。その代わりにある能力を得たが、それがラプラスの何とかで、まあここらへんはどの批評にも書かれていることなので省略してと・・。で、円華も子供の頃の体験がもとで、ある罪悪感にとらわれており、それから抜け出すために(健常者であるにもかかわらず)自ら進んで手術を受けたと。そんなことができたのも謙人の主治医イコール円華の父で、その羽原(リリー・フランキー氏)はこの研究に心血を注いでおり、しかも国の機関も興味持ってる。フランキー氏は悟りすました聖職者みたいな感じで出てくるけど、うさんくさいと言うかわざとらしいと言うか。羽原はまだ脇役だからがまんできるけど、こんなキャラが主人公だったら見ていたくないな。何お上品ぶってるのと言いたくなっちゃう。国が極秘に後押しするほどの画期的な手術、その一方で自分の娘を実験台にし、行動の自由も奪っている・・となれば苦悩に引き裂かれてるのが普通。まともな人間ならね。さて、謙人の回復途中、行方をくらましていた甘粕だが、ある施設にいることがわかる。すでに完成した映画の絵コンテを描き続けており、精神が壊れている模様。となると、二つの事件の犯人は謙人か。ところがそのうち甘粕の裏の顔がわかってくる。あの感動的なブログはみんなウソ。実際は彼の家庭は妻が離婚を切り出すなど崩壊しており、彼はそんな家庭なんかなかったことにしたくて妻子の殺害を計画。後でわかるが実際に家族を手にかけたのは甘粕で、水城と那須野アリバイ作りに協力ということらしい。謙人が記憶を失ったフリをしたのは、殺害犯である父親から自分の身を守るため。何しろ当時彼はベッドの上でほとんど身動きもできない状態だったのだから、ちょっとでも疑いを抱かれれば簡単に殺されてしまう。この部分はなかなかよかった。ブログによる回想シーンはかなり長くて、その時の謙人の甘粕に対する答えは印象に残っているから、ああだからああいう答え方をしたのかとわかる仕組み。この映画でちょっとでも鮮やかさを感じるとしたらここだけだな。前、一つでもいいところがあればって書いたけど、この映画で言うと謙人の存在。

ラプラスの魔女4

青江はパッとしないし、中岡は空回り気味、羽原はお香の匂いでもしそうだし、円華はとらえどころがない。ものすごい力があってとかそういうハデなシーンもない。同じ能力の持ち主で、世界に二人だけなんだからパッと恋の炎が燃え上がっても不思議じゃないけどそれもない。抱き合うわけでもなくじっと見つめ合ってるだけで、まあお行儀のいいこと。後ろから背中押してやろうかと思ったのは私だけではありますまい。おまけに円華は謙人が八年もの間苦しんでいたことにちっとも気づいていなくて。謙人役は福士蒼汰氏。「人生がときめく片づけの魔法」に出ていた人?いやいや、あっちは福士誠治氏。こっちの蒼汰氏は長身で若くて細身で・・「仮面ライダー」の何作目かに出ていたらしい。えッ、「明治開化 新十郎探偵帖」の人?あんれまあ・・(絶句)。植物状態の時は顔もうつらないし、あたしゃまだ子供なんだと思ってたくらい。はっきりうつったのはサイコロ振ってる時で、ここでオオッ、イケメン!となって、見なきゃよかった映画にはならずにすんだわけですの。そう、目の保養になるイケメンが一人でも出ていれば私はオッケーなんです。ハードル低いのよ。櫻井氏じゃないのかって怒られそうですが。ただ、残念なことにクライマックスの廃墟のあたりは画面が暗くて、せっかくのお顔もよく見えないのですじゃ。理由はどうあれ、二人を殺したのは謙人に間違いなさそうなので、どう決着をつけるのかなと思って見ていたけど、いつの間にか姿消してましたな。まあ警察に逮捕されるとか、自ら死を選ぶとかそういうのでなくてよかった。上に書いたように事件は闇に葬られ、したがって謙人が罪に問われることはなし。国家機関は極秘に行方を追っているけど。てなわけであれこれあったけど、結局事件はうやむやのまま。見てる方は「そんなぁ~」とブーたれる。国家権力の圧力って一番ずるいやり方。それはいいとして私の場合謙人と千佐都の関係が説明不足なのが気になった。水城と那須野をおびき出すには協力者が必要で、それが千佐都。謙人は復讐のため、千佐都は金のためってことでいいのかな?そこ描写してよ。他の出演は円華の母が檀れいさん(あんなちょっと?)、円華のボディーガードが高嶋政伸氏(顔色悪いヨ)。エンドクレジットで流れる曲がいい。静かで透明で心地よく、これもこの映画のランクを少し上げてくれている。