インベージョン
平日昼間のシネコン、お客は15人くらい。あんまりヒットしなかったんでしょ?これ。中学生の頃雑誌の付録で読んだ。簡略版だろうけど。その後ちゃんとしたのも読んだけどあんまり昔のことなのでよく覚えていない。今回は四度目の映画化。三作目はWOWOWで見たけどだいぶ原作から離れていたな。今回もあんまり期待してなくて、ダニエル・クレイグが出てるから・・ってその程度。美しい母親が子供守るために奮闘・・なんていうのを聞かされりゃそりゃあねえ・・。SF的なおもしろさとか期待できないなって予測つく。「フォーガットン」という前例もあるし。見終わって感じたのは・・何かこれおかしくない?欠落していること多すぎない?ってこと。ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、ジェレミー・ノーザムというそれぞれ実績のある俳優が出ている。脇もヴェロニカ・カートライト、ジェフリー・ライトと手堅い。監督は「ヒトラー~」のオリバー・ヒルシュビーゲルだ。もうこれだけで半分成功したようなもの。そこらへんの、安っぽいCG使いまくりの、きちゃないゾンビぞろぞろの三流SFになんかなりっこない。SFではあるけれど格調高い、奥の深い、しかも映像の美しい人間ドラマに・・。しっかりした原作もあることだし、変にハデなことやらなくたって観客を怖がらせることいくらでもできるし。人体を乗っ取るというのは、顔に貼りついたり口からナメクジ出入りしなくてもできるはず。それこそ眠っている間にそーっと。今回原作を読み直しながら頭の中でいろいろ思い浮かべた。この場面を映像化したらさぞかし・・ってね。原作は展開はスローだが、それでも目にぱっとその情景が浮かぶとか、ぞくぞくするとか、そういう部分がある。何度も映画化されるのも無理ないな・・って感じ。ところが今回の映画ときたら・・。何を血迷ったのかやたらめったら汚らしい。記者会見の会場で配られる水。給仕がその中に・・ぎゃッ!何だこりゃ。あれが感染方法かよ。水を介して・・というのは「カンパニー・マン」思い出す。同じジェレミー・ノーザムだし。ま、それは関係ないけどこの描写見たとたんあちゃ~ですよ。ニコール扮するキャロルが感染するのもノーザム扮する元夫タッカーにゲロを吐きかけられ・・。はあ~何で?何でこんな汚い描写ばっかり?寝ている間の変身だってちっとも密やかじゃなくてゾンビ状態。
インベージョン2
キャロルは眠らないよう懸命にがんばるけど、ちょっとウトウトっとするとハイッ「NHKスペシャル」!CGによる血液中の変化の模様。あのねえ・・そんなのうつさんでもよろし。何余計なことしとるねん。こういうの入れないではいられないんだろうなあ。カーチェイスもそう。入れなきゃ気がすまない。その一方でガレアーノ(ジェフリー・ライト)達による反撃作戦(?)何にも描かれない。とにかくキャロルの危機、子を思う母の強さ・・そればっか。ラストのあっけなさにもびっくり。クライマックスでは銃で何人も殺したキャロル。さすがに恋人ベン(クレイグ)は殺せなくて足を撃って・・。おいおいそれだったら他の人も手足にしとけよッ!何か見ている自分が情けなくて・・何でこんなの見せられなくちゃならないのよ。どうも製作過程で何やらごたごたがあったらしい。最初どのように作られる予定だったんだろうなんて知りたくても、今となっては・・。こういう形で完成し、公開されちゃったんだから。てなわけでとんでもないできそこない。でもいちおう人間って何・・とか、そういう部分ははっきり提示している。人間が支配している限り、戦争や犯罪はなくならないということ。乗っ取られれば憎しみも争いもなくなり、地球は平和になる。その代わり美しさとか清潔さには無関心になるから別の問題が起きるだろうけど。キャロルは精神科医。美しさだけでなく知性も備えている。ベン達との食事の席上、小難しいことを言い出したのがいて、他の人は相手にしないけどキャロルだけはちゃんと聞いていて、自分の考えを述べる。その真面目さがよかった。キャロルを仲間に引き入れようと説得するタッカー。もう変身していて人間的な感情は失っているはずなのに「まず息子、次に仕事が来て、ぼくはいつも三番目だった」などと恨みごとを言うのがよかった。それを聞いてもキャロルが全く心を動かさないのもね。さぞ冷たい奥さんだったんだろうなあ・・(怖)。それとこの映画で私が一番怖かったのは、夜国税調査官と名乗る男が家に押し入ろうとするところ。CGとか使わなくたって一番怖いのは人間なんだよな~って改めて思った。このようにところどころいいシーンはあるのだ。それだけに残念でならない。運の悪い作品。話は変わるけど「地球の静止する日」・・ヒロインはジェニファー・コネリー・・よしッナイスキャスティング!他にキャシー・ベイツ・・下宿の大家さん?
SF/ボディ・スナッチャー(1978)
「インべージョン」よりはずっとマシな出来。わりと怖かった。マシュー(ドナルド・サザーランド)は衛生局の職員。同僚のエリザベス(ブルック・アダムズ)は、ある日を境に夫ジェフリーが他人に思えてくる。自分がおかしいのか何か得体の知れないことが起きているのか。最初は取り合わなかったマシューもそのうち何かがおかしいと気づき・・。元々引かれ合っていた二人は急接近。マシューはエリザベスを救おうと奔走する。いろいろ気持ち悪いものが出てくる映画だが、出演者も負けてはいない。白目出して寝ているサザーランド。目玉をぐるぐる回すアダムズ(これが私には一番不気味だった)。マシューの友人で精神科医キブナー役はレナード・ニモイ。出てきた時から怪しい。彼は本を次々に出している有名人でもある。ジャック(ジェフ・ゴールドブラム)も作家志望だが、全然書けない。才能のなさ、努力不足を棚に上げ、キブナーを嫉妬している。ゴールドブラムはまだ若くやせていて、あの顔立ちだからすごく印象に残る。サザーランドもニモイもかすんでしまう。甲斐性のないジャックだが、妻ナンシー(ヴェロニカ・カートライト)がほれ込むのも納得のセクシーぶり。カートライトもすばらしかった。しっかり者で機転がきき、変化に対応できないでいるマシュー(乗っ取られているかもしれない相手に電話かけるとか)とは対照的。彼女は「インべージョン」にも出ていた。特撮はしょぼいが、冒頭胞子みたいなのが宇宙を旅し地球にたどり着くシーンや、エイリアンが人間と入れ替わる瞬間とかうまく見せていて、なるほどね・・と感心した。乗っ取りが進み絶望的な状態だが、原作では主人公がさやを焼き、エイリアンは侵略をあきらめ、人類は助かる。しかしこの映画では暗い結末。印象は強いが後味は非常に悪い。不満としてはエイリアンの生態がほとんど不明なこと。乗っ取り、入れ替わるまでしか描かれず、人類が滅びたとしてその後どうなるのか不明。飲んだり食べたりするのか、寿命は?ロバート・デュヴァル、ケヴィン・マッカーシー、ドン・シーゲルなどがチョイ役出演。シーゲルの作った旧作も見てみたい。びっくりしたのは息子がクリストファー・タボリということ。「知りすぎた17才」は見たことないし、見ようとも思わないけど、大昔彼を何かのテレビ番組で見てすっごく印象に残ったのよね。今じゃオッサンだけど・・は~(ため息)。
ボディ・スナッチャー/恐怖の街
これは日本では未公開らしい。NHKBSでやってくれたので見ることができた。原作が単行本で出たのが1955年。映画は1956年だからずいぶん早いな。原作の設定は1953年。主演のケヴィン・マッカーシーは「スパイ大作戦」とかいろんな番組でおなじみ。たいてい悪役。56年だと40を少し出たところ。原作のマイルズは28歳だが、マッカーシーもかなり若く見える。ベッキー役ダナ・ウィンターは「大空港」に出ていた人。黒髪で整った顔立ち。ほっそりしていて気品があって清潔さが漂う。日本ではさほど人気が出たようにも思えないが、地味な感じがするからかな。・・医師のマイルズは看護婦サリーの連絡を受け、学会から戻る。患者が殺到しているらしい。ところが戻ってみるとそんな気配なし。その代わり幼なじみのベッキーと久しぶりに再会。お互い好意を持っていたのに、なぜか別の人と結婚し、同じように破綻した。やり直すチャンスかも。この映画に限らずSFでも戦争物でも本筋とあまり関係のない恋愛模様が描かれることは多い。宇宙人や怪物、戦車や飛行機を出してくるより、美男美女をイチャイチャベタベタさせてた方が時間もお金も節約できる。この映画は80分と短いが、それでも恋の再燃に時間割かれていて、あ~時間稼ぎだ・・と、うんざりする。朝食を作るとか卵とか53年製「宇宙戦争」と同じだ。人類滅亡の危機でもアメリカは余裕があるなあ。さて、町の人の一部が妙なことになってる。ベッキーのいとこのウィルマは同居している叔父がニセモノに思えると悩んでいる。ジミーという少年は母親のことを「ママじゃない」と言っておびえ、帰りたがらない。ベッキーと食事に行くと、レストランは閑散としている。友人のジャックに呼び出され、行ってみるとビリヤード台に死体のようなものが。どこにも傷がなく、全体的に未完成な感じ。まだ生きたことのないような・・。死体は大うつしにせず、まわりでマイルズ達がわいわいやってるだけなので、怖いもへったくれもない。警察に届けず様子見というのは原作通りだが、悠長な感じだ。もっとも通報したって警察官も乗っ取られているからどうにもならないんだけどさ。後でジャック夫妻に町から出て助けを呼べとかなるのも漠然としている。この時代ならカメラでうつすとか証拠になるものを用意できるはずだが何もしていない。
ボディ・スナッチャー/恐怖の街2
イチャイチャが多いのは原作もそうで、要するにこう言った喜怒哀楽が乗っ取られてしまうと何もなくなるってことを言いたいのだろうが、すり替わった人達も特に変わった演技はしておらず、そのまんまなのが物足りない。乗っ取りの方法や元の体はどうなるのかもスルー。原作だとある日さやがふわふわ飛んできて地面に降り立ち・・。大気圏突入で何で燃えてしまわないのかいな。ラスト、マイルズはガソリンをまき、畑に植わっているさやを燃やす。全部は燃やせなかったが、地球は生存には向かないと判断したさや達は別の星を目指して飛び立つ。あたしゃいつ畑が出てきて景気よく燃やすのかと待っていたけど、結局何もありませんでしたな。撮影期間は19日だそうで、それじゃあ筋を追うだけで深みも余韻も期待できないわなと納得。人間にすり替わっても寿命は五年ほどで、生殖能力はなし。乗り移る相手がいなくなったらまた別の星へ・・と原作には書いてあるけど、それでいてさやは「ぐんぐんと、いくらでも生えるのだ」って・・何から生えるんですか?ちゃんと書いてあるようでいて抜けてません?まあいいか、ほじくったって仕方ない。彼らがやってることは侵略だが、相手を傷つけたり殺したりという発想はない。相手が眠り込むのを待つだけだ。さやが燃やされ、残りが飛び去ったとしても、残された者は何もしない。五年たてばみんな死んでしまう。そういうあまり攻撃的でない侵略者は、小説ではいいが映画では描きにくい。したがってマイルズとベッキーを追い回す攻撃的な連中として描かれる。ジャック夫妻もベッキーも乗っ取られ、マイルズは危機を訴えても誰にも相手にされず・・。「次はあなただ!」で終わるはずが最初と最後にシーンを追加して少しは救いのあるラストに。まあ確かにあのまま終わったのでは後味が悪いもんね。原作ではベッキーもジャック夫妻も乗っ取られない。ジャックの妻テディ役はキャロリン・ジョーンズ、ガスの検針員か何かでサム・ペキンパーがちょこっと。錯乱したマイルズから話を聞く精神科医役はウィット・ビセル。「5枚のカード」でも医者をやっていたっけ。この映画の後三回映画化されてるけど、「インベージョン」はひどかったな。せっかくダニエル・クレイグが出ているのに。彼でマイルズを主人公に作っていればなあ・・いくらさやでもボンドにはかないませんでしたとなるのに・・(何のこっちゃ)。