アメリカを売った男

アメリカを売った男

これは史上最悪の機密漏えい事件の映画化ということらしい。コンサルタントとしてエリック・オニールの名があるから、実在の人なんだ。FBIの捜査官に昇進したいと意欲的なエリック(ライアン・フィリップ)。ある日ハンセン(クリス・クーパー)の補佐に配置換えされる。バロウズ(ローラ・リニー)によると、彼は性倒錯者で、行動を報告して欲しいとのこと。しかし妻ボニー(キャスリーン・クインラン)とは円満だし、信心深いし、怪しいところは何もない。そのうちバロウズに、ハンセンはロシアに情報を流している売国奴だと言われる。いろいろ証拠を集めているが、決定打がなく・・。ハンセンは自分が冷遇されていると思っている。国を思う彼の気持ちは、正当に評価されることはなかった。自分がやっていることは、システムに不備があるという、国への警鐘である。その一方で、まわりをだましているという快感も。エリックは仕事とは言え、ウソにウソを重ね、苦しい毎日。彼の負担をいっそう大きくするのは、妻のジュリアナ(カロリン・ダヴァーナス)。向こうの奥さんって「話して」「私に説明できないの」「信じて」「辞めてよ」と、詰め寄ってくるからダンナは大変。そりゃハンセン達がずかずか自分達の生活に入り込んでくるのは気味が悪いし、ダンナに八つ当たりして当然。でも妻には隠し立てせずすべて話せというのは・・エリックの仕事の性質上無理だってわかるはず。結局ジュリアナだって、エリックの領分にずかずか入り込んで・・ハンセンと同じことやってるんだよな。私がこの映画で一番印象的だったのは、エリックがバロウズのアパート訪ねるところ。彼女はたぶんたまった洗濯物をかたづけているところ。捜査官には既婚者もいっぱいいるけれど、自分は家庭と仕事の両立は無理と判断したのだろう。夫も、たぶん恋人もいないし、ペットも飼っていない。その潔さ。彼女がハンセンを追いつめるのは、長年の努力を水の泡にされてしまった恨み。彼のもとでスパイ捜しをしていたけど、そのスパイはハンセン自身だった!監督は「ニュースの天才」のビリー・レイ。本作も地味だけど手堅い。青味がかった映像で全編通す。エリックの父親役でブルース・デイヴィソンがちょこっと。カメラマンが「ルックアウト/見張り」のデヴィッド・ヒューバンド。他にゲイリー・コール、デニス・へイスバートなど。ライアンは、シーンによってはちょっと太って見える。