霧の中の少女

霧の中の少女

ある晩少女が家を出たまま行方がわからなくなる。夜、寝ているところを電話で起こされたのが退職間近の精神科医フローレス。ヴォ―ゲル警部が霧で事故を起こした、ケガはしてないけど服に血がついている。その説明を・・となる。フローレス役はジャン・レノ。たいていの映画なら彼が暴走警部やるところだが、今回は珍しく聞き役。ヴォーゲル役はトニ・セルヴィッロ。「湖のほとりで」に出ていたらしいが、よく覚えていない。このアヴェショーという町は、すっかりさびれているが、少女・・アンナ・ルー失踪事件で注目されている。地元警察ではなく、有名なヴォーゲルが指揮をとっているからだ。彼は大規模な捜査をやり、メディアを利用し、ハデなことをするので知られている。そうやって犯人が尻尾を出すのを狙うというやり方。ただ彼には”破壊魔事件”の失敗という過去がある。ロメオという男性を犯人として逮捕したが、裁判で無罪に。多額の賠償金が支払われたが、ロメオは脳卒中を起こしてしまう。ヴォーゲルのせいで人生メチャクチャにされてしまった。もっともヴォーゲルは今でもロメオが犯人と思っているようだが。さて、アンナ・ルーの両親は信心深く、娘の失踪には何も思いあたることがない。そのうちマティアという少年が浮かび上がる。彼は密かにアンナ・ルーに思いを寄せていて、ビデオカメラで彼女を盗撮していた。その映像には、彼女をつけ回しているらしい車もうつっていて・・。息を詰めて見ていると、ここで唐突に流れが変わる。ヴォーゲルもフローレスもどこかへ行き、別の映画が始まったみたいになる。学校での授業風景。全くやる気がなく、終了ベルが鳴るのを今か今かと待っているような学生達。教師のロリスはアヴェショーへ来てまもないようだ。妻のクレアは弁護士らしいが、ここでは仕事がなさそう。娘のモニカはいつも不機嫌で反抗的。最初はクレアは再婚で、モニカは義理の父親が好きになれないのだと思ったが、違った。実の親子。友達と別れさせられてこんな田舎へ来たのが気に食わないのだ。ここへ来た理由はクレアの不倫か。ロリスは妻を許し、愛しているようだが。ある日ロリスはテレビを見て驚愕する。自分の車がアンナ・ルーをつけ回していた車としてニュースで流れている。

霧の中の少女2

すぐ警察に連絡するが、あいにくその日のアリバイはない。一人で山歩きをしていたからだ。おまけに帰ってきた時には手にケガをしていた。たちまちマスコミの攻撃を受ける。レーヴィという弁護士が現われる。彼はロメオの弁護をやっていた経験から、ヴォーゲルのやり口は承知している。ロリス達は金に困っており、今では家賃も払えない。そんな中でどうやって(高額に違いない)弁護費用を払うのかと思うが、たぶんレーヴィはロメオの時と同様、えん罪として訴訟を起こし、賠償金を得るつもりなのだろう。我々はレーヴィを信用して大丈夫か?と思うが、ヴォーゲルの態度はロリスを宙ぶらりんの状態に置き、不安にさせるばかり。彼を犯人に仕立て上げようとしているようにも見える。警察なのに信用できない。これって無実の人にとってはすごく不安なことで。こういう・・あまりにも条件が揃っているという人は、えてして犯人ではないことが多い。何しろジャン・レノが出ている。彼がただの精神科医、聞き役で終わるはずがない。時々今現在の・・フローレスとヴォーゲルの会話に戻るのだが、妙なことにフローレスの方が魚釣りの話をしたりしている。彼はヴォーゲルをしゃべらせるためにここに来ているのに。アンナ・ルーのことは半分忘れ去られている。恋人がいて家出したんじゃない。アンナ・ルーの両親には金なんかないから、金銭目当ての誘拐でもない。となれば変質者の犯行で、ヴォーゲルは彼女はもう死んでいると思っている。もちろん両親にはそんなことは言わないけど、彼が捜しているのは死体である。てなわけで見ている者はロリス一家がこうむる災難を見させられる。彼がナイフを手に、一人でいるところを見て、とうとう自殺に追い込まれるのか・・と心配する。しかし彼はなぜか治りかけた手の傷を・・。その後アンナ・ルーのリュックが見つかり、それにロリスの血がついていたということになって、彼は逮捕される。一方ヴォーゲルはベアトリーチェという記者を訪ねる。今まで何度か「彼は無実」という彼女からのメールを受け取っていたが、無視してきた。ここで彼は思いがけないことを聞かされる。30年前に失踪した少女達。警察は単なる家出と片づけたが、ベアトリーチェは連続殺人だと思ってる。

霧の中の少女3

警察は取り合ってくれず、妄想狂扱いされたけど、今でも調査している。彼女は犯人から送られた封筒をヴォーゲルに渡す。中にはアンナ・ルーの日記とビデオテープ。この後のヴォーゲルの行動はよくわからない。彼が行ったのは廃業したホテルらしい。そこでビデオテープを壊すのはなぜなんだろう。そこにテレビクルーが現われ、ドッキリカメラみたいになるのはなぜなんだろう。ヴォーゲルは妄想女にだまされたとか言っていたけど、それもよくわからない。ベアトリーチェ役はグレタ・スカッキ。ヘアスタイルとメガネのせいでわからんかった。結局犯人は30年前の連続殺人鬼が犯行を再開したということになったのか。アンナ・ルーのリュックについていた血はヴォーゲルが捏造したもの。容疑が晴れたロリスは、この後のやり方によっては大金が入ってくる。手記の出版、テレビ出演、訴訟。レーヴィが後押ししてくれるし、クレアも賛成してくれた。見ている者は30年前の犯人はフローレスに違いないと思っている(レノだし)。でも彼を疑う者は誰もいないから、このままか。あ、でもヴォーゲルの事故が残ってる。驚いたことに彼はロリスが真犯人と見抜き、彼を殺したらしい。その帰り、霧のせいで事故を起こしたのだ。服の血はロリスのもの。ロリスはロメオの件を調べ、同じ方法で大金を手に入れようと計画した。標的はアンナ・ルーではなくヴォーゲル。条件が揃えばヴォーゲルは証拠を捏造する。だから彼の目の前に自分の血を残した。ラスト・・思った通りフローレスが30年前の・・となる。彼が犯行をやめたきっかけは心臓発作だが、倒れた彼の目の前にいるのは釣った魚か、これから始末しようとした死体か。ここは印象的なシーン。たぶん多くの人は、記念品の髪の束を手にしているフローレスの前に、ヴォーゲルが現われるのでは・・と期待する。彼がロリスを殺すシーンを見せないのはそのためなのでは・・と思ったりする。でも何事もなく終わってしまう。てことはヴォーゲルは捏造をした上に殺しまでしたってことで終わり?何だ、つまんね~の。ロリス役アレッシオ・ボーニ。途中でヒゲを剃るけど、アントニオ・バンデラス風味の二枚目。ジャン・レノは今回みたいに、脇役で出ていた方が映画の出来がよくなるような気がする。