黒い天使

黒い天使

ピーター・ローレが出ていると知って早速DVDを購入。コーネル・ウールリッチの原作があるらしい。ウィルシャー・ハウスの一室、歌手のマーロウは、メイドのフローを外出させる。さてはこれから愛人が訪ねてくるのか。でも化粧台に置いてあるのは男の写真ではなく自分の写真。ちょっと違和感。彼女は受付に電話し、ブレアが来ても絶対通すなと指示。小包が届いて、中に入っていたのはハート形のブローチ。それを送っておいて、頃合を見て訪ねようとしたブレアは、電話のせいでドアマンに通してもらえない。それでいて入れ違いに来た、マーロウと約束したという男(ローレ)はすんなり通される。道路にとまっている車の中には二人の男。バーでピアノを弾くブレア。酔った彼の世話をするのはいつもジョー。今夜もパレス・ホテルまで送り、ベッドに寝かしつける。それとなく時計がうつされ、時間の経過がわかる。ベネットがマーロウのところへ来たのは夜中。何も知らないで見ているので、彼がマーロウの愛人か?と思う。ドアが開いていてレコードがかかっている。そして死体発見。そばにあった銃を何で手に取るかね。指紋つくじゃないか。もっとも彼女は射殺ではなく絞殺らしいが。すぐ警察に通報するかと思ったら何やらモタモタしていて。一度部屋から出るとオートロックらしく、もう中に入れない。そこへエレベーターが開いてフローが帰ってきたため、急いで階段の方へ。引かなくてもいい彼女の注意引いちゃった。フローはベネットのこと知ってたようで、早速警察が彼の家へ。フラッド警部やってるのはブロデリック・クロフォード。まだ若く、さほど太っていない。そのせいか顔がいやに大きく見える。家にいたのは妻のキャシー。そこへベネットも帰ってくる。どうやら彼はマーロウと浮気していて、それをネタにゆすられていたらしい。それに耐えきれなくなって、今夜は脅すつもりで銃を持って行った。自分は殺してない、部屋に入った時死体の胸にあったブローチが、次見た時はなくなっていた。誰かが出て行った気配もある。しかし誰も彼の言うこと信じてくれない。早速裁判が始まるが、ベネットは不利。何しろ動機あるし銃も持ってた。

黒い天使2

夫の無実を訴えても、フラッドはもう十分捜査したと取り合ってくれない。新事実でも出れば別だが。キャシーはブレアを訪ねる。しかし彼も力にはなれない。彼は男(ローレ)が入るとこ見てたし、ドアマンも。何でスルーされるのかなと思うが、これは後でわかる。キャシーはブレアこそ怪しいと言い出すが、ジョーが来て誤解を解く。話を整理すると、ブレアが作り、マーロウが歌ってヒットしたのが「ハートブレーク」という曲。夫婦仲が壊れてからは、マーロウはこの曲を嫌っている。あのブローチを送ったのは結婚記念日だったから。これを見て二人がまだ幸せだった頃を思い出し、考え直してくれるかもと期待したから(甘い!)。ブレアが犯人でないことはジョーが保証する。何しろあの時酔った彼を寝かしつけ、部屋を出る時は外から錠をかけたのだ。またフラフラ飲みに出かけられないよう。キャシーはあやまり、これが縁でブレアは犯人捜しに興味を持ち始める。ベネットが部屋に入った時、「ハートブレーク」のレコードがかかっていたというのが引っかかる。マーロウならかけるわけがない。ブレアはあの晩自分と入れ違いに入っていった男がベネットだと思っている。しかし彼女の家に飾ってあった写真を見てびっくり。ベネットは自分が見た男じゃない!で、まずは男捜し。何でドアマンに聞かないんだろうと思うが、そのうち”リオの店”に行き着く。そこのオーナーがローレ扮するマルコ。ここらへんでは見てる人全員マルコが犯人!と思ってる。何しろローレだもん!フラッドになぜ知らせないんだろうと思うが、この映画遠回りばかりする。ブレアはキャシーと組んで、ここで雇ってもらうためオーディションを受ける。ブレアは本職だし、キャシーも以前は歌手だったらしい。マルコは気に入ったらしく合格。彼のオフィスには金庫がある。その中にハート形ブローチが入っているに違いない。ブレアはこのところ酒を断っている。酒ビンを見れば心が揺れるが、じっとがまんする。彼はキャシーに惹かれ始めている。それに前と違って今は生活に目的が、張りがある。キャシーにもそれはうすうすわかっていて心苦しいが、彼女の夫への気持ちは変わらない。

黒い天使3

そのうちやっと金庫に近づくチャンスがめぐってきた。マルコはショスタコーヴィッチの野外演奏か何かに出かけた。まあ彼そういうのが趣味なんですか意外。オーディションの時、やかましいバンジョーの演奏に顔をしかめていたけど。それはともかく、前金庫を開けた時、後ろにいるキャシーにもそれとなく番号見えるようにしていたから、彼が戻ってきてもさほど驚かない。で、金庫のなかみだけど、手紙と箱。手紙はマーロウがマルコに送った脅迫状。箱のなかみは花嫁姿の写真と出生証明書。キャシーは前もってフラッドを呼び出しており、ブローチを証拠にマルコを逮捕させるつもりでいた。ところが・・。マルコは彼女を最初に見た時からベネットの妻だとわかっていた。二回目、注意して見ていたらちゃんと気がついていた。目の動きでわかる。ただ、マーロウと同じで、キャシー達も自分をゆするつもりなんだと思ってる。あの晩彼がマーロウを訪ねたのは金を渡すため。彼には前科があり、それを娘の夫にばらすと脅されていたのだ。写真の花嫁は彼の娘。彼にとっては娘の幸せが一番大事。あの時ウィルシャー・ハウスの前にいた車の中の二人はフラッド達。別件でマルコに用があった。あの後彼はフラッ達と一緒にいたから、アリバイは完璧。てなわけでマルコは犯人じゃありませんでした。ここは意外だけど(ローレだしてっきり・・)、ここで事件が解決したのではあまりにも単純すぎますわな。まだラストまで時間あるし。さて、結局振り出しに戻ってしまった二人。ブレアは、キャシーには悪いけどやっぱりベネットが犯人なのではと思ってる。ブローチは彼が盗んで捨てたのだ。それより二人の将来考えた方が。しかし彼女は夫一筋。マーロウとの浮気も許していそう。どうせ誘惑したのマーロウに決まってるし。絶望したブレアは酒に逆戻り。飲んで~飲んで~あらぁ。ここらへんで見ている者は思うわけよ。マルコでもブレアでもないとすると犯人は誰?って。ベネットじゃないのはわかってる。すると残ってるのは・・ジョー。彼はブレアのこと心配している。寝かしつけているとこなんかもしかして彼に”ほの字”?って思ったくらい。ブレアを酒びたりにさせているのはマーロウ。彼女さえいなければ・・って、そうなりますわな。ところが・・ジョーは途中からパタッと出てこなくなる。ブレアのアリバイ証明した後、全然。

黒い天使4

そりゃこの後キャシーのおかげで酒と縁は切れたし、曲を書くなどまともな生活に。彼の出る幕はないんだけど。ところがこの後思わぬ展開に。酒を求めてバーをハシゴするブレア。そのうち彼はミリーの胸に光るハート形ブローチに気づく。何であのブローチがここに?しかもこれをくれたのはブレアだと言うではないか。がびょ~ん、どゆこと?混乱したブレア、酒場での殴り合い。でもって酔ってるし暴れるしでつかまって拘束される。蘇ってくるおぞましい記憶。ゲッ、殺したのオレじゃん!飲み過ぎて今まで記憶なくしていたのだ。ホテルの小間使いはチップ欲しさに鍵を開けるのが常。ジョーがこれで安心と帰ってしまった後も、好きなだけ外へ出て飲んでいたというわけ。帰ってきたらまたチップもらって錠をかけていたのだろう。さあ大変こんなところに閉じ込められているバヤイではない。ベネットの処刑は明日だ。おまけに医者は注射打って彼を眠らせようとするし。何とか抜け出し、ベネットの家へ駆けつけるが、キャシーは夫と最後の面会をするため留守。フラッドも他の事件で不在(夜中なのに飛び回ってるようだ)。さあ、どうなる。さて私がこの映画で印象に残ったのはマーロウ。彼女が化粧台に飾っていたのは自分の写真。つまり彼女は自分が一番かわいい。また、彼女が欲しいものは愛情ではなく金。金がすべて。彼女が住んでいる部屋とブレアの部屋では大違い。贅沢な作りだし家賃も高そう。だから人の弱味握っては金をゆすり取る。しかしそんなことをしていていつかは仕返しされるとは思わないのかしら。殺されたのはゆすりが原因じゃなかったけど、ベネットが銃を用意していたことでもわかるけど、いつかは相手も耐えきれなくなって反撃してくる。ラスト・・逮捕されたブレアがキャシーに「いいコンビだったな」と言うのがせつない。この二人ならヒットを飛ばし、成功間違いなしだったのにねえ。ブレア役ダン・デュリェは悪役として有名なんだそうな。オーディションの時受かるようにキャシーをサポートするなどショー・ビジネス界の泳ぎ方を知り尽くしているようなところがいいし、デュリェがちゃんとピアノを弾いてるのもいい。キャシー役はジューン・ヴィンセント、マーロウ役はコンスタンス・ダウリング。