おいしい生活

おいしい生活

ウッディ・アレンの作品はあまり見たことはないが、これはわりと好き。ドジな泥棒レイ(アレン)は、貸店舗の地下から銀行までトンネルを掘る計画を立てる。ネイルサロンで働く妻フレンチー(トレイシー・ウルマン)を説得し、資金を出させ、仲間と掘り始めたものの、地図を逆さに見ていたせいで失敗。一方店ではフレンチーお手製のクッキーを焼いて売ったところ、これが大ヒット。一年後にはお菓子帝国サンセット社の社長夫妻に。大金持ちになってもレイは変わらないが、フレンチーは背のびする。成金趣味と陰口をたたかれているのを知ると、教養を身につけてやれと、美術商デヴィッド(ヒュー・グラント)に個人レッスンを頼む。ハンサムで洗練されたデヴィッドだが、なかみは計算高い男。フレンチーと結婚すれば莫大な財産が入る・・と、彼女をヨーロッパ旅行に誘う。一方レイはチチ・ポター(何ちゅう名前だ)という金持ちの首飾りに目を付ける。そんなある日、会計士が横領し、行方をくらます。会社は倒産、家も預金も抵当に、クッキーの”親権”も奪われ、要するに一文無しに。態度を硬化させたデヴィッドに、金目当てだったのねと気づいても遅い。レイの計画も失敗。でも・・離れていた二人の心は再び寄り添い、めでたしめでたし。フレンチーは、美術、音楽、ワインなど教養を身につけようと懸命だが、人間には持って生まれた性分というものがある。上を目指すのは悪いことではないが、うわべを飾ってもがさつな性格はそのまんま。一方レイは自分を変える気はない。仲間とカードをし、味の濃い、油でぎとぎとしたものを食べる。彼の、健康に悪そうな生活ぶりが何だか魅力的に見える。たいていの人は健康のため、見た目のために何かがまんしている。しょっぱいものはだめ、あぶらっこいものはだめ、野菜を食べろ、ジムに通え・・。倒産後の処理・・従業員への補償とか全然考えてなくて、”二人は幸せ”で終わってしまうのはノーテンキすぎるが、これはいわばある夫婦の生活の一面を切り取っただけの映画だから、それ以外の人のことは描かれなくてもいいのかも。セリフが多く、ややくどいが、気持ちよく見ていられる。ムショ仲間ベニー役はジョン・ロヴィッツ、友人デニー役はマイケル・ラパポート、チチ役エレイン・ストリッチは「スクリュード」に出ていた。レイをインタビューしているのは「60ミニッツ」のホスト、スティーヴ・クロフト本人。フレンチーのいとこで、ちょっと頭がとろいメイ(エレイン・メイ)のキャラがのどかでいい。あの老紳士にプロポーズされたかな?