テッド・バンディ
シアトルに住むシングルマザー、リズ(リリー・コリンズ)がバーで出会ったのは、ハンサムで感じのいいテッド。娘のモリーもすぐになつき、リズはいい人にめぐり合えたと幸せいっぱい。ところがテッドはあちこちで起きている若い女性の殺人・傷害事件の容疑者として逮捕されてしまう。えん罪と訴えるテッドを信じ続けるリズだが、そのうちその状態に疲れ果て、昼間から酒を飲むように。実在のシリアルキラーをザック・エフロンが演じるというのがこの映画の売りだが、たぶん多くの人はエフロンよりハーレイ・ジョエル・オスメント君の変わりぶり、膨張ぶりに驚くのでは?あのひ弱そうな天才子役が30そこそこだってのに肥満したオッサンに。しかもヒゲもじゃ。いえ、別にいいんですけどさ。いつまでも天才子役じゃいられない。いつもダイエットに失敗してるオッサンの方が好感持てる。ハンサムでもないしこれと言って取りえもないけど、傷心のリズに好意を寄せ、温かく包み込んでくれる。映画はいくつかの州にまたがっているせいで、登場人物が多く、通り過ぎていく感じ。なぜテッドはこんなことをしたのかという部分は描かれず、リズとのイチャイチャばかり見せられる。後で、彼女が警察に通報し、そのことが負い目となって悩み苦しんでいたのだとわかるが、何で通報したの?フロリダの裁判はテレビ放映という前代未聞の出来事に。テッドは弁護士をクビにして自分で自分を弁護したりするが、結局すべての件で有罪となる。陪審員達はハデなパフォーマンスにも惑わされず、冷静に判断したわけだ。裁判長役ジョン・マルコヴィッチがすごくいい。テッドのペースに乗せられることなく常に冷静で広い視野を持つ。調子に乗るテッドに「優勢なうちにやめておきなさい」と釘をさす。判決の後で「人間性の完全な無駄遣い」「自分を大切に」と諭す。テッドは涙を流すが、裁判長の言葉が心にしみたわけではないのは明らか。自分の無罪放免を疑っておらず、成り行きが信じられないのだ。殺人までいかなくても、こういう何かが欠落した人って確かにいる。特にテッドの場合ハンサムで感じがいいから若い女性は警戒しない。とは言え精神の闇を掘り下げるでもなく、残忍なシーンもほとんどないので、見終わって物足りない気がするのは確か。ラスト、実際の裁判シーンとか本人達が出てくる。それを見ると言葉も同じだし俳優も本人によく似せていて、なるべく事実に沿って作ろうとしたのだとわかる。