恐怖の叫び

恐怖の叫び

夫ジムの死亡記事を見てやって来たサンドラ。おじのマークは、甥が結婚していたことを知らず、すぐには信じようとしない。サンドラがジムと出会ったのは大学。と結婚したのはお金のため。ジムと妹のジュリーの両親は早くに亡くなっている。遺産は母親のもので、二人が30歳になるまではマークが管理することになっている。彼が遺言書にそう書かせたのだ。はっきりしないが、30歳になるか結婚するかすればマークの管理を受けなくてすむようになるのか。それともジムは30歳になったのか。とにかく彼は遺産が欲しい。それでサンドラは友達として協力することにしたのだ。愛情からではない。六ヶ月したら離婚することになっている。六ヶ月あれば相続の手続きも完了するからってことか。彼からは大学資金として2000ドル受け取った。結婚して五ヶ月になる。記事を見るまでジムの死に気づかなかったということは、一緒に住んでいなかったということかな。でも名目だけとは言え妻は妻だ。夫が亡くなったのなら相続権があるはずだ。マークによれば遺産は200万ドルらしい。結婚証明書はあるし、ジムの遺言書は写ししか持っていないが、サインずみの原本がどこかの貸し金庫にあるはず。まあこんなふうに冷静に切り出されると、何て非情で計算高い女なんだ・・と、マークでなくても反感持ちますわな。一方サンドラがマークに感じるのも、疑り深くてよそよそしくて裏に何かありそうな雰囲気。要するにお互いの第一印象は最悪だったということですな。サンドラの来訪を喜んだのはジュリーだけ。馬を乗り回す活発な女性だが、冒頭サンドラの乗った車のまわりを駆けるところは無謀と言うか、気違いじみている。彼女にはロニーという恋人もいる。何かと言えば行動を制限するマークのことを嫌っている。葬式は明日だが、棺はもう閉じられていてジムの顔を見ることはできない。ジュリーに聞くと、死因は肺炎だという。葬式が終わっても遺言書がまだ見つからない。弁護士に捜させているが、見つかるまではすることがない。ジュリーと二人で乗馬に出かけるが、ジュリーの目的はロニーに会うことだった。そしてそれをとがめるマーク。ますます印象悪くなる。なぜそこまで彼女を束縛するのか。これじゃあ兄妹の遺産を横取りしようとしていると思われても仕方ない。

恐怖の叫び2

屋敷には別館があって、マークはそこで何やら研究しているらしい。ジュリーは自分達の遺産を研究につぎ込んでいるのだと疑っている。夜になると叫び声・・それも兄の声に似た・・がするが、マークは悪夢で片づけ、取り合ってくれない。叫び声はサンドラにも聞こえたから、現実だ。ジムの部屋を調べてみるとパイプが一本もないし、衣類も一部なくなっている。ジムは本当に死んだのだろうかと疑い始めるサンドラ。兄は何をされているのか、次は私とおびえるジュリー。・・さて、サンドラ役はバーバラ・スタンウィック。映画よりもテレビシリーズ「バークレー牧場」の主役として私にはなじみがある。と言ってもこっちでは放映されてなかったから見たことはないのだが、「テレビジョンエイジ」にしばしば写真が載っていた。髪が真っ白で気丈そうな老婦人。こちらの映画でも馬に乗ったり木に登ったり屋根を歩いたり配膳用エレベーターに乗り込んだりと、よく体が動くところを見せる。それでいていかにも都会的な、知的でクールな美しさがある。1947年というと、40歳くらいで、大学生には見えない。原作ではどうなっているのだろう。マーク役はエロール・フリン。ジムのおじという設定だが、フリンはスタンウィックより年下だし、何だか変な感じ。昔世界ノンフィクション全集に、フリンの自伝(ネットで調べてみたら「ハリウッドの王子」という題名だった)がおさめられていた。今自分の蔵書の中にないってことは、持っていたけど処分したのか。あんまり昔のことなので覚えていない。いちおう読んだような気もする・・。この映画の頃はフリンも下り坂なんだろうが、私は彼の映画は全然見ていないので、こんなものかなと思いながら見ていた。甥の妻ならサンドラはもっと若いはずで、スタンウィックじゃ堂々としていすぎる気も。どこか世慣れない感じなら、「レベッカ」のマキシムとヒロインみたいな感じになったことだろう。いやつまり私にはマークが時々マキシムに見えたってことですけど。暗い秘密を抱えた中年紳士。ジュリー役はジェラルディン・ブルックス。目の間がちょっと開いていて、ジュディ・ガーランドに似た、愛らしい顔立ち。オープニングクレジットでリチャード・ベースハートの名前を見て、出てるとは知らなかったのでびっくりした。

恐怖の叫び3

原題が”CRY WOLF”なので、彼が狼男?なんて思ってみたり。話はそれるけど、昔々テレビである映画を見た。題名も内容も覚えていなくて。覚えていることと言えば、異常な殺人者と叫び声だけ。だからこの映画を見ながら、ひょっとしてこれがあの時の映画?と思い始めたわけ。私の中ではその異常者がベースハートとして記憶されているもんで。まだ比較的若くて小柄で・・。狼男だったら叫び声上げても不思議じゃないし。でも、結局狼男じゃなかったんだけどね。よく子供の頃のこととか克明に覚えていて、詳しく文章にしている人がいるけど、私はだめだな。かたっぱしから忘れる方だから。上に書いた映画だって、せめて題名覚えていればなあ・・。ところが!ところがですよ皆さん、いい時代になったものです。たぶん土曜の9時からやってた90分枠の番組だろうと目星をつけて調べてみたら・・ありました!「土曜映画劇場」1971年12月25日放映「恐怖の叫び」!やっぱりこれだったんだ!!この「土曜映画劇場」にはお世話になったのよ。「片腕ドラゴン」「ドラゴンvs7人の吸血鬼」と言ったカンフー映画、「戦闘機対戦車」「サンフランシスコ用心棒」と言ったテレビムービー、「妖女ゴーゴン」「白夜の陰獣」「妖婆死棺の呪い」と言った怪奇映画。ほひょ~(ため息)。もう一度見たいものばかり。今考えりゃズッタズタにカットされて、中には元の映画とはかけ離れたものになってしまっているのもあっただろうけど、それでも見られるだけでありがたかったあの頃(遠い目)。最後に流れる「木星」(遠い耳←?)。さて、話を戻してサンドラとマークは反発し合いながらも実は惹かれ合っている。マークはフリンがやってるくらいだから悪者ではなく、それなりの事情があるのだろう。ジュリーが転落死し、マークが事故死で片づけようとするので、再び疑惑が深まるが、見ている方はいいかげん実話せよ・・とじれったくなる。何も隠していないことを見せるため、別館の研究室を案内してたけど、結局彼は何を研究していたのかね。あれこれあってサンドラはジムと再会する。彼は事故で記憶があいまいになっているが、そのうちサンドラのことも思い出す。彼が生きていたということはマークはやっぱり悪人なのだ。

恐怖の叫び4

ここを引き払ってワシントンへ逃げるつもりなのだ。もちろんマークは今度こそ真実を話す。ジムとジュリーの父親には重度の精神障害があり、それは遺伝すると。普段は何ともないが、暴走すると・・。医者に見せても無駄で、見守るしか手はない。それ以来マークは二人を監視するという重荷を背負うはめに。そのジム交通事故の相手をカッとなって殺してしまった。記事にならないよう八方手を尽くした。マークの兄は上院議員で、敵対する勢力がアラ捜しをしている。スキャンダルは困る。まあこの兄は甥や姪の世話をマークに押しつけていてずるいなという気はする。彼は自分の仕事できるけど、マークはほとんどここに釘けだ。不公平じゃないの?結局ジュリーの死は自殺。自分の本性を知ったからとマークは言ったけど、監禁に耐えられなくなって二階から逃げ出そうとして転落した・・その方が話がつながるんじゃないの?彼女とロニーの交際を邪魔したのも、婚約していたジムとエイミーの仲を裂いたのも、子孫を残さないため。だったら初対面の時子供のこと・・妊娠してないかどうか聞くんじゃないの?ジムがマークを殴り倒すのを見て、サンドラはマークの言ってることが事実だと気づく。結局ジムが死に、マークはやっと重荷から解放されることとなる。今この時期にジムが死んだことにしようとしたのはなぜかな。それとマークや兄は呪われた血とは無関係なのかな。精神障害は父方の遺伝で、マーク達は母方のおじなのかな。それとも逆?サンドラは、森の奥に暮らし、薬で症状が落ち着いてるジムの記憶をかき回し、暴走させた・・余計なことをしたってことになるのかな。サンドラに出会った時の彼は、彼女のことを覚えておらず、マークのことも信頼している様子だった。状態が落ち着いていたからこそマークはワシントンへ行く気になったんだろうに。ベースハートの出番は少なく、あまり狂気も発揮しないうちに死んじゃったのが残念。それでいて印象は強烈。スタンウィックやフリンが出ているなんて全く覚えていなかったのに、彼のことだけは覚えていたんだから。てなわけで、50年も前のかすかな記憶を呼び覚まして懐かしい気分にさせてもらった。何だかとってもうれしい。