アガサ・クリスティー(映画・マープル)
クリスタル殺人事件
「オリエント急行殺人事件」がヒットしたせいで、いくつかアガサ・クリスティーの作品が映画化されたけど、内容より誰が出てるかの方が話題になってた気が・・。この作品は、あの!エリザベス・テイラーが!というのがまずあって、続いてキム・ノヴァク。二大美女共演。男の方はロック・ハドソンとトニー・カーティスの二大美男。それだけ見ると華やかだが、内容は・・。ミス・マープル物で、ジョーン・ヒクソンのも見たし、原作も読んだ。だから内容は頭に入ってる。ワクワクもせず普通に見てるわけ。犯人も動機もわかってる。で、よくも悪くもテイラーの映画だな・・と。話題性は十分だし演技も問題ない。ただ、太りすぎだしちっとも悲劇のヒロインに見えない。それらしくは見えるけどどこか作ってる。見ていて感情移入できない。まわりに迷惑かけてばかりの気分屋のおばさん。気の毒じゃない。テイラーは確かに美女だけど顔のすぐ下が肩。首がない。オッパイの下がすぐおなか。ウエストがない。イライラして食べては太ってるんだろう。女優なんだからもうちょっと体形コントロールしろッ!それにくらべればノヴァクはまだ体形保ってる。クローズアップがないのでシワも見えない。大したものだと思う。でもこの人なぜか印象があいまい。表情がぼやけている。若い頃はもっときりっとしていたはずだが。ぼんやりしていて下品で痴的(←?)。まあそういう役柄なんだけどね。カーティスは輝きがうすれ、頭もうすくなり・・。四人の中ではハドソンがよかったように思う。途中までは重いだけでどうってことないが、苦悩の色が深まる終盤あたりはとてもよかった。脇役ではジュラルディン・チャップリンがすっきりと軽い感じでいい。テイラーやノヴァクにくらべればまだ若いからね。肝腎のマープル役アンジェラ・ランズベリーは・・私にはぴんとこなかった。タバコを吸うシーンがあったけど、ありえないでしょ!!冒頭白黒で、見ていて「あれッ?」と思う。そのうちこれは映画なのだ・・とわかる。マープル達が集まって推理映画を見ているところ。ところが真犯人を名指しする・・という時にあいにくフィルムが切れてしまう。お客は肝腎なところで・・と残念がるんだけど、マープルはさっさと帰ろうとする。しかもこれこれこういうわけで真犯人は誰々・・と言いきる。中にすでに一回見て結末知ってるのがいて、彼によればマープルの言う通りなんだそうな。
クリスタル殺人事件2
マープルがいかに名探偵かを表わすため、こんなエピソードをくっつけたのだろうが、私には彼女の知ったかぶりが鼻についただけ。「四階の部屋」のところで書いたけど、ポアロは芝居を最後まで見ないで犯人を当ててみせると、ヘイスティングスと賭けをする。彼は自信満々だったけど、どたん場でいきなり新事実が披露され、予想ははずれてしまう。ポアロは怒るが、負けは負けだと潔くヘイスティングスに金を払う。私が思うに芝居や映画ってたいていそういうものだと思う。マープル達が見ていた映画だって、整合性よりも意外などんでん返しが売り物の娯楽映画だと思う。マープルの予想がはずれた方がよっぽどリアルだ。もっともそれだとこういうエピソードをくっつける必要性がうすれるか。まあとにかくマープルには最初から最後まで何の魅力もない。ろくに活躍もしない。テイラーに体重・・いや、比重かかってるからなあ。クラドック警部役はエドワード・フォックス。マープルの甥になってるが、原作では違う。甥のようにかわいく信頼できる存在。金髪で美男で有能なクラドックは、私のお気に入りのキャラである。ヒクソンの「ミス・マープル」ではジョン・キャッスルが演じていてすごくはまり役。それにくらべるとこちらのフォックスは軽くて重みに欠ける。ややとぼけた感じでちょっと貧相。背が低い(173センチ)のが目立つ。大男のハドソンと並んだりするといっそう・・。他の出演者では冒頭の白黒映画にヒルデガード・ニール。チャールトン・ヘストンの「アントニーとクレオパトラ」にクレオパトラ役で出た人だ。私は見てないけど評判悪かったようで。執事ベイツ役は「将軍たちの夜」などのチャールズ・グレイ。執事は原作だとハンサムなイタリア人で、犠牲者の一人だが、映画では死なない。事件が起きるパーティでパシャパシャやってる女性カメラマンも原作ではマリーナ(テイラー)の養女だが、映画では素通りする。何しろテイラーを腹いっぱい・・じゃない、目いっぱい出させるのがこの映画の目的だろう(たぶん)から、たいていのことは省略され、無視される。びっくりしたのはチョイ役でピアース・ブロスナンが出ていること。おそらくメアリー・スチュアートを演じるマリーナの相手役の若者だろう。この時のテイラーも衣装がぱんぱんでやぶけそう。クライマックスもはっきりせず、あまり出来はよくない。顔ぶれを楽しむだけの映画。
船上の殺人
マーガレット・ラザフォードがミス・マープル。でもマープルと言うより、晩年のアガサ・クリスティーってこんな感じだったのかなと思いながら見ていた。がっしりしていて、顔もいかつい。マイケル・ガンボンに似ている。白黒だけど画面はとてもきれい。題名がアレなので、マープル物にこんなのあったかいな・・と不思議に思ったが、「魔術の殺人」のことだった。舞台を船上に移すなんて余計なことを・・と思ったが、「そして」も島から砂漠へ移していたし(恒例行事なのか)。思った通り内容は全く別のものに。DVDには他の作品の予告入ってるけど見ても「どの小説の映画化?」状態。他の作品も内容全く違うんだろう。この作品でかろうじて残っている原作の面影は、少年の更生施設で不正が行なわれ、それを告発しようとした人物が殺される・・それだけ。マープルは更生委員の一人として少年達の乗っているバトルドア号に乗り込む。委員会で何かを報告しようとしていたフォーリーは毒殺された。彼は何をつかんでいたのか。ラムストーン大佐を始めみんなはマープルの視察を喜ばないが、そんなことは気にせず調査を進める。なぜかストリンガーという男性が彼女を助ける。ポアロにヘイスティングスがいるように、マープルには彼がいるのか(他のマープル映画でもコンビ組んでるようだ)。私の好きなクラドック警視も、この映画では役立たず。金髪でも美男でもなし(何でだよ~)。一つの犯罪(少年達を手先に使った宝石泥棒)の裏にもう一つの犯罪(フォーリーが嗅ぎつけた件)があるとか、犯人かな?と思われた人物が実は別のことで悩んでいて、そのせいで怪しく見えたのだとか、いちおうストーリーは工夫してある。クライマックスでは犯人とマープルが剣をまじえる。殺人は起こるけど血なまぐさはなく、コミカルなシーンも多い。これはこれでいいのだと思う。でも私にはちょっと物足りなかったな。出てくる人が皆同じ顔でわかりにくいとか、船で少年達を更生・・にしてはそれらしきシーンほとんどないとか。全然関係ないシーン(冒頭マープルが服をあつらえるシーン)で時間稼ぎしてるのも「巌窟の野獣」連想した。まあよかったのは、出てくる俳優の多くがどこかしらデヴィッド・マッカラムに似ていて、さすがイギリス映画・・と思えたこと。特にストリンガーはね。若手俳優はイケメンだし、あたしゃイケメンさえ出ていりゃそれだけでオッケーです。
魔術の殺人(1985)
ジョーン・ヒクソン版マープルの「魔術の殺人」は気に入っていて、何度か見ている。こちらはヘレン・ヘイズ版。ヘイズはテレビシリーズ「ハワイ5-0」のジェームズ・マッカーサーの母親として昔雑誌に載っていたので、顔と名前だけは知ってる。でも今回調べてわかったけど、血のつながりはないのね。ジェームズは養子。さて、マープルは友人キャリーを訪ねる。どうも彼女は誰かに毒を盛られているようなのだ。キャリーと夫のルイスは、自宅や所有地を利用して非行少年の更生施設を運営している。誰からも恨みなど買わないはずだが。そのうちキャリーの息子クリスチャンが殺され・・。この作品は1985年の製作。キャリー役ベティ・デービスが亡くなったのは89年。87年の「八月の鯨」に出ているから、今すぐ(←?)というわけでもないのだが、はっきり言って死にそう逝きそう倒れそう。やせこけ、カラカラになってる。ストーリーがどう、演技がどうと言う前に、うつる度に半分死んでるぞおい・・と思ってしまう。いくら大女優でもこれじゃまずいと思うんですけど。ルイス役はジョン・ミルズ。驚いたのはティム・ロスが出ていたこと。マープルは、ロス扮するエドガーを見て「誰かに似ている」と思うんだけど、なかなか思い出せない。実はこれが事件のカギで、エドガーは重要な役なんだけど、この映画は扱いが軽い。原作と内容を変えてある。私がこの「魔術の殺人」を好きなのはエドガーの運命が悲劇的だからなんだけどな。例えばジーナのようなタイプには私は全く魅力を感じない。若くて健康で美しく、人生に対して貪欲。お金が欲しい、自由が欲しい、男をみんなとりこにしたい。生意気で怖いもの知らずで、まわりに迷惑かけても平気。こんな女のどこがいいの?もちろんエドガーのことなんか頭からバカにしている。映画は彼女に比重がかかり、ルイスとエドガーの関係を省いてしまっている。そのせいでラストで謎解き(犯人指名)されても今いちインパクトなし。悲劇の度合いがうすくなってしまった。ヘイズのマープルも普通。ちょっと小柄すぎるような気も。それに隣りに今にも逝きそうなのがいるんじゃそっちに目が行ってしまいますってば。ロスもぱっとしないまま終わってしまい残念だけど、こういうタイプの映画には名前は知らないけどイケメンが出てくることが多いので、そっちの楽しみはある。ジーナの夫ウォーリーとか非行少年とかね。
アガサ・クリスティー(映画・トミーとタペンス)
アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵
原作は「親指のうずき」。舞台は現代のフランスに移してあるが、田舎へ行けばイギリスもフランスも大して変わりはないから違和感なし。テレビシリーズでのミス・マープルとタペンスという違法コンビ(?)をすでに見せられているので、たいていのことはクリアーできる。期待するとしたらタペンスが引かれる家。ちゃんとうつして欲しいな。タペンスにあたるプリュダンス役は「譜めくりの女」のカトリーヌ・フロ。トミーにあたるベリゼール役の人は知らない。ランカスター夫人にあたるエヴァンジェリスタ役はジュヌヴィエーヴ・ビジョルド。年取ったな~。ベリゼールの叔母を老人ホームに訪ねた時、プリュダンスはエヴァンジェリスタという老女から妙な言葉を聞かされる。そのうち叔母が亡くなり、遺品の中にエヴァンジェリスタからもらったという絵があったが、プリュダンスは描かれている家に見覚えがあり、とても気になる。その頃老女はホームから連れ出され、行方不明に。問題の家を捜し出したプリュダンスだが、老女のことは村の誰も知らないようで。何かあっても深く探らず、次へ行ってしまう。もう一言、一行動がない。のんびりしていてまとまりがない。寄り道が多い。フロの顔のクローズアップがない。丸くて小さな顔。きちんとした髪。細くてエレガントな体。でもいつも一定の距離を置いて見せられる。目尻のシワなんてとんでもないとばかりに引いてうつす。二人はもう孫のいる年代だが、枯れてはいない。でもそういうシーンはうつさず、場面は飛んで美しく横たわるフロをうつす。ピンチになってもエレガントにもみ合い、美しく気絶する。目を覚ました時には事件は解決している。今まで見てきた1時間あまりは何だったのだろう。盛り上がりがなくあいまいに通り過ぎいつの間にか解決。これでいいの?案の定けなしてる人ばっか。風景もインテリアもきれいだし、問題の家をちゃんと見せてくれてありがとう。思い込むと暴走しちゃうプリュダンスの性格もよく出ている。でもこう内容がへなへなでは推理物としてはまずいと思うんだけど。これじゃクリスティーに失礼だろッ!あッ、でもトミーとタペンス物って元々会話ばっかりでいつまでたっても事件がはっきりせず、何だかよくわからないまま終わるんだよな。だからこれでいいのかも。それとフロのエレガントな中年女性ぶり・・少しは見習いましょう。
秘密機関
アガサ・クリスティーのトミーとタペンス物。原作はまだ読んでいない。トミー役ジェームズ・ワーウィックは知らない人。目がいつも笑っていてしまりがないけど、いい人そう。タミー役フランセスカ・アニスは「マクベス」に出ている。見たことないけど。他にオナー・ブラックマン。戦争・・と言っても第一次世界大戦・・が終わって再会したトミーとタぺンス。二人は幼なじみだが仕事がないのが悩みの種。最終的に諜報活動・・と言うか探偵のまねごとすることに。そこへ行くまでいちおう手順を踏んで描写されるけど、いろんなことほったらかしなのが気になる。例えばタペンスに仕事を依頼してきたウィティングトン。パリに旅行して三ヶ月ほど学校へ入ってくれとか言っていたけど、何をやらせるつもりだったの?さて、二人が政府高官カーターから依頼されたのは、英米間で結ばれた秘密条約の文書を見つけること。公表されるとゼネストが起きるとか、今の政府がつぶれるとかまずいことになるらしい。でも結局何の条約か不明。アメリカからイギリスへ運ぶ途中船が沈没。ジェーンという女性が持ってるらしいが行方不明。途中でジェーンのいとこだというアメリカの大金持ちジュリアスが登場。ジェームズ卿という名士も登場し、どっちも怪しいが、そのうちジュリアスの方が怪しく思えてくる。三週間前アメリカで顔をつぶされた死体が発見された・・というジェームズ卿からの情報。じゃジュリアスはニセモノ?ジュリアス自身一度人を殺したことがあると言っていたし。でも結局は・・。困っちゃうのが最後の謎解きシーン。我々が一番気になるのはジュリアスがなぜ、誰を殺したのかということ。顔をつぶされた死体うんぬんは彼に罪を着せるためのでっちあげだとしても、彼の過去がはっきりしないまま映画が終わってしまうのは困る。でも・・事件をきっかけにトミーとタペンスはお互い心を引かれていると気づき結婚へ・・ハッピーエンド・・あら、終わっちゃったわ!他にもジェーンは何年も記憶喪失のふりをしていたのかなどあいまいな点がいっぱい。でもいくつか楽しめるところはあった。例えば公衆電話。電話機にコインを入れるんじゃなくて、電話ボックスのドアを開けるのにコインが必要とか。ラストの食事にホテルのボーイ二人がちゃんと招待されていたのもよかった。彼らの働き忘れていませんよ・・って感じで。ところで食事中ジュリアスの手の甲でハエが動き回っていたぞ。