血に笑ふ男
これはアガサ・クリスティーの短編「ナイチンゲール荘」が元なんだそうな。えッ、そんなのあったっけ?ああ、あった。「うぐいす荘」という題名になってる。主演はアン・ハーディングとベイジル・ラズボーン。ハーディングはジーナ・ローランズに似ているな。ラズボーンは「シャーロック・ホームズ」シリーズで有名らしいけど、私はまだ一本も見ていない。原作は宝くじではなく遠縁のいとこの遺産が転がり込む。舞台は新居のみだが、映画はパリにまで足を伸ばす。ヒロインの名前その他なぜか変更されている。ケイトやルーおばさん、メイドのエミーやらを出してきてにぎやかにしてある。キャロル(ハーディング)は平凡なOLで、ルームメイトのケイトと暮らしている。ケイトはピアノ教師。ルーおばさんのことはよくわからない。彼女はいつも体のどこかが痛いとこぼしている。ある日キャロルはフランスの国営宝くじの一等があたる。960万ペニーと言っていたけど、どれくらいの金額?早速貯金を全部下ろして買いたいものを買う。三年会っていない婚約者ロニーも帰ってくる。もう働かなくてすむし、彼と結婚もできる。そこへ一人の男性が部屋を見せて欲しいと訪ねてくる。彼ジェラルド(ラズボーン)は礼儀正しいし、世界を旅して回ってきたとかで言うことがいちいちロマンチック。化学工学技師で、趣味はカメラ、独身。要するにキャロルみたいに欲しいものも買えず、どこへも旅行したことがなく、退屈な日々を送っている女性をワクワクさせてくれる紳士。その後で現われたロニーはどうしても見劣りする。五年もスーダンで働き、これからも大金など稼ぎそうにない。世界中を旅して回りたいなどというキャロルの気持ちも理解できないし、彼女が大金つかんだことも喜んでいない。話はかみ合わず、ケンカになって、婚約破棄みたいなことになっちゃった。金を受け取るため、船でパリへ向かうキャロルとケイト。船でジェラルドと会うが、不審にも思わず、パリを案内してもらい、何しろホラ、彼は慣れてるし。後で後悔した、心配したロニーが追ってくるが、今朝結婚したと言われてガ~ン!彼はジェラルドのこといろいろ調べたけど経歴とかウソで。でもそれを聞いてもキャロルは全然。普通少しは動揺するんじゃないの?
血に笑ふ男2
ジェラルドは結婚破棄するなら受け入れるよと紳士的で、まあそれが手口なんだけどさ。あちこちめぐった後二人はロンドンへ戻る。ジェラルドは心臓が悪いらしく、ケントの人里離れた場所に家を買って静かに暮らすつもりだ。車も電話もなしって買い物ど~すんの?キャロルが書類を読みもせず、ジェラルドの言うがままにサインするシーンがある。「ナイル殺人事件」のリネットはその点偉かったな。読んでからでないと決してサインしない。金持ちはそれくらい慎重でないと、いいように金をたかられてしまう。さてジェラルドは具合が悪くても医者にかかるのをいやがる。やっとグリブル医師に見てもらうが、ペテン師だの薬は飲まないだの言いたい放題。こういう・・人の命を何とも思わないようなやつって、自分の命には細心の注意払うんじゃないの?とにかく彼は心筋の病気で、興奮や無理は禁物という状態。ラストどうなるかここでばらしているようなもの。見ていてケイトやルーおばさんはジェラルドにとっては邪魔者だという気がする。彼女達に渡る金を惜しんで殺すんじゃないの?また、自分の正体・・フレッチャーという連続殺人鬼・・に気づきそうなグリブルを殺すんじゃないの?あるいは、頭がとろいように見えて余計なことに気づいたり言ったりするおそれのあるエミーを殺すんじゃないの?原作には出てこないこういったキャラを出してくるのは、(死者を増やして)盛り上げるためじゃなかったの?でも何にもなかったな。ジェラルドが発作を起こして死ぬのは原作通り。電話はないという設定なので、正体に気づいたグリブル医師がロニーらと助けに来てくれる。フレッチャーによる過去の三件は別として、映画の中では一件も殺人は起きない。そこが(映画としては)ちょっと物足りないかな。ジェラルドがキャロルの写真をもみくちゃにするところとか、意味不明のシーンも。ラストはあっさり。原作もあっさりだけど、映画はそれ以上にあっさり終わる。見ている時は気づかなかったけど、メイドのエミーやってるのはジョーン・ヒクソン。ミス・マープルだ!!ははあ若い頃はこういう感じだったのね。