クィック・ガン

クィック・ガン

こういうのってだいたいストーリーは決まっている。主人公はわけあって故郷の町を離れていたが、久しぶりに戻ってくる。自分を待っていてくれるはずの恋人は他の男と結婚寸前、町の人の目は冷たい。町には危機が迫っている。無法者、あるいはインディアンが襲ってくる。場数を踏んでいるのは主人公だけなので指揮をとるが、たいてい邪魔が入って拘留されたり、町の者に命狙われたり。元恋人の婚約者はたいてい殺され、(元々そんなに好きでもなかったので)最後はハッピーエンド。この「クィック・ガン」もほとんどまんまの展開。1963年というとオーディ・マーフィは40近く。でもあんまり変わってないので見ていて安心した。中には太ったりたるんだり、老化と言うよりすさんだ生活が顔や体形に現われちゃう人もいるから。アルコール、睡眠薬。当時のマーフィがどんなだったか知らないけど、少なくとも外見は大丈夫だった。そりゃ昔より体重は増えているだろうけど、動作は相変わらずキビキビしている。顔もシワは増えたけどたるんではいないし、横顔はすっきりしている。クリント(マーフィ)は二年ぶりに故郷のシェルビーへ帰ろうとしている。後でわかるが、彼の家とモリソン家は土地をめぐって争っていたらしい。モリソン家の長トムが息子達にクリントを襲わせたため、彼は息子達を撃ち殺す。そのまま町を離れたが、父親が亡くなり、遺された牧場を継ぎ、恋人へレンに求婚するため戻ってきた。ところが途中でスパングラー一味に出くわす。クリントは一時ガンマンとして一味に加わっていたが、詳しいことは不明。たぶん一味が思ったより悪党なので、たもとを分かったのだろう。スパングラーは、クリントがここにいるのはシェルビーの銀行に集められた牛の買いけ金とやらを狙ってだと思い込む。いくら違うと言っても信じない。クリントはスキを見て逃げ、追っ手二人も倒す。町が危ないと知らせなければ。金を奪われるだけですまないのはわかっている。無法の限りを尽くし、最後は町を焼き払うだろう。ほとぼりもめたのではと期待したが、町の人の目は冷たかった。彼を見たリックは早速トムへ知らせに走る。彼はトムの甥。トムは息子達のことでクリントを深く恨んでいる。何あっても全部他人のせいにするタイプ。

クィック・ガン2

クリントは友人で保安官のスコッティに一味のことを知らせる。スコッティはなぜかヘレンとの結婚のことは黙ってる。そのため何も知らずクリントはヘレンに求婚。来週結婚すると聞いて驚く。ヘレン役メリー・アンダースはかなり美人。スコッティ役ジェームズ・ベストも背の高いハンサムだが、こういうのは殺されると相場が決まっとる。スコッティは何度もプロポーズしてやっと受け入れられたところ。まだクリント忘れられずにいるのは明らかだが、結婚してしまえばきっと彼女も自分のこと好きになってくれて、うまくいくだろう。それなのにクリントが帰ってきちゃった!スコッティはさっさと身を引く。何てわかりのいいやつなんだ!後でクリントは結婚祝いに牧場を譲って町を去るつもりでいることがわかるが、そんな必要なし。もうヘレンとは別れたから。クリントがクリントならスコッティもスコッティだ。ヘレンの頭の上を通り越して勝手に物事が決められてしまう。さて少し話を戻して、ヘレンが結婚することや町の人の冷たさに失望した時点で、クリントはシェルビーを去ることもできた。警告はして務めは果たしたのだから。でもそれだと映画にならないので、彼は残り、町の人を指揮することとなる。スパングラーのやり口はよくわかっているし、町の人はガンマンである自分ほど銃には慣れていない。そんな中でもトムやリックは彼を殺そうとする。音で気づかれるといけないので、ロープを使って吊るそうとする。スパングラーの撃退に成功したりすれば英雄になってしまう。その前に始末しないと。いくらロープで吊るしたって、死体が見つかれば二人の仕業ってばれると思うが(動機があるのはこの二人だけなんだし)、そういうことは考えないらしい。もちろんクリントは二人を撃ち殺し、そのせいで留置場に入れられてしまう。スコッティは法がすべての融通のきかない男。一番頼りになる男を、一番必要な時に自分達から遠ざけてしまった。おまけにアホな牧師が、相手が人間なら説得できるはずと余計なこと言い出す。こらこらそう言い出したんなら自分が行けよ。説教がアンタの仕事でしょうが。スコッティも何で一人でノコノコ出かけるんじゃい!何もできず全くの無駄死に。

クィック・ガン3

クリントがいればそんなことさせない。自分がカゲからサポートする。スコッティも何考えてるんだか。普通なら一人で行くにしても「私が一人で来ると思うか、暗闇にまぎれて仲間がおまえ達に狙いをつけているぞよ、私を無事に帰した方が身のためだぞ」とか何とか言うでしょ。まあせっかく手に入れた愛する人を失い、もう生きてる気力もなくなり、半分捨て鉢になっていたのかな。そうとでも考えないとこの行動アホすぎる。さて撃ち合いがあって町の男連中はほとんど全滅する。ケガ人なし、全員死亡というのも珍しい。生き残ったのはブタ箱にいたクリントと、普段から彼に親切なホテルの主人ダン。他は教会に集まっている牧師と女子供。一味はまず銀行へ行くが、クリントの進言で金は他へ移してある。で、一味はヘレンを人質にし、15分以内に金を出せと牧師を脅す。クリントはダンにブタ箱から出してもらい、ついでに牧師に保安官代理だとバッジ渡され、さあいよいよスパングラーとの対決だ。さて、この映画には原作があるらしいが、読む機会はないだろう。推理物と違い、西部劇物はあまり翻訳が出ないから。原作ではどういう流れなのかわからないが、せっかくのクライマックスもあまり盛り上がらない。たぶんこんなものだろうと思って見てるから失望もしないが。ややモタモタした展開の後、スパングラー達は倒される。これからは銃とは無縁の・・牧場をやるという・・生活が待っている。ヘレンと結婚し、子供を持ち・・。クリントは単純にそう思っているけど、まわりがそうさせてくれるかどうか。ほとんどの男が死んだということは、新しく男達が町へ入ってくるということだ。保安官は死んだし、たぶんクリントにその役が回ってくるだろう。そうなれば再び銃を取らなければならないことも・・。いや~この時代って生きていくの大変だね。たぶん1870年代だと思うけど。ラスト・・クリントとヘレンはキスくらいするかなと思ったけど何もしなかったな。無事を喜び合って抱き合うこともなかったな。そこがマーフィの映画らしいところでいいんだよな。これからスコッティの死体回収しに行かなくちゃならないし、男達の死体も。大量に未亡人、遺児が出たし、浮かれてるヒマはない。ところで撃たれたダンはどうなったのかな。はっきりさせて欲しかったな。と言うわけで、出来はともかくいつものマーフィの映画。あたしゃ見ることができただけで満足です。