ヘル・ディセント

ヘル・ディセント

原題「THE LAIR」のLAIRは穴とか巣という意味。監督ニール・マーシャルは「ディセント」や2019年版「ヘルボーイ」で知られているから、「ヘル・ディセント」にしたのか。彼は「ドゥームズデイ」もとったらしい。2017年、帰還途中の英国空軍パイロット、シンクレア(シャーロット・カーク)はアフガニスタン上空でミサイル攻撃を受け、脱出。同僚は現われたゲリラに殺され、近くにあった旧ソ連のものらしい施設に逃げ込む。地下深くに広がる施設は打ち捨てられて久しく、悪臭がし、ひからびた死体がある。おまけに液体で満たされたたくさんの容器の中には・・。追ってきたゲリラとの銃撃戦でそれが壊れ、出てきた怪物は一撃で人間を倒し、食ってしまうが、暗いのでよくわからない。シンクレアは傷つきながらも何とか逃げ出し、捜索していたアメリカ軍のチームに運よく救出され、基地へ連れていかれる。指揮を取るフィンチ少佐は彼女の言うことは信じないが、それは表向きらしく、情報部の誰やらに連絡取っている。隊員の中では軍曹のフック(ジョナサン・ハワード)がシンクレアを信じてくれそう。フックが言うにはここはしくじった人間の集まりなのだそうで、軍医のウィルクス、手癖の悪いラファイエットなどが手際よく紹介される。夜になって怪物達が襲ってくる。例によって暗い中で騒いでいるという感じ。明るいところでやるとボロが出るからだろう。何人かがやられ、一同は武器庫に逃げ込む。朝になると今度はお約束の解剖グチョグチョシーンだ。そんなことしてないでとっとと逃げろ・・と思うけど、いちおうガソリンが少ないだのゲリラが来るなど言い訳する。今回は感染のことな考えてないらしく、たっぷり返り血だの体液だのを浴びる。手袋もせんとグチョグチョやらネバネバやらに触れる。大丈夫か?ゲリラ達の一人カビールがつかまっているのだが、彼はいわゆるカギを握る人物である。彼自身はゲリラではなく、ただの運転手役。拒むと命に係わるので、仕方なく加わっているだけ。ロシア語だけでなく英語もわかるし、彼の話によってそもそもの発端がわかる、非常に都合のいいキャラ。

ヘル・ディセント2

彼の話だけでなくその後にわかったことも合わせて話をまとめると・・1979年にこのあたりに宇宙船が落下。ソ連が侵攻してきて船内の何かと何たらかんたら。要するにソ連のアフガン侵攻はこのためだったと。あの施設ではエイリアンのDNAを人間に・・。解剖したので怪物には人間の内臓がというのはわかっている。それ以外ヒモ状の器官もあって、人間に巻きつき、考えていることを読み取るようで。太陽光線に弱いので昼間は襲ってこない。カビールのいた村でも村人がいなくなった。熊か何かの仕業ではとなって狩りに行った父親も戻ってこなかった。情報部はおおよその点はつかんでいるが、今までは証拠がなかった。でも今回はシンクレアが施設から持ってきたカメラがある。いつなかみが明らかになるかなと思っていたが、結局わからないままで終わらせていたけど。と言うか何もうつってなかったりして。フィンチは大佐だったけどフックのミスをかぶって少佐に降格。カメラと引き換えにこの掃きだめからの脱出を目論んでいたようだけど、気が変わったのかな。カビールなどは背景がわかりやすいけど、フィンチあたりはうまく描き切れていない。シンクレアの方はまだ幼い息子がいる。夫は事故死したので母親に預けている。子供のためにも何とか生き残って帰りたいはずだが、それを前面に押し出してはいない。救出された後、報告だけしてあとは基地の連中にお任せして自分はさっさと帰還・・でもいいのに、怪物の脅威を訴え続ける。そこはちょっと印象に残った。とにかく怪物の脅威は十分わかったので、プラスチック爆弾であの施設を爆破しようということになるが、もちろんフックがさらわれるというハプニングが起きて計画が狂い始める。計画通りにやっていれば犠牲者はフック一人ですんだだろうが、シンクレアは承知しない。死んだのならともかく、彼は生きている、それならなおのこと救出しなければ。ウィルクスが地上に残り、ウンチを使って他の連中を地下へ下ろす。まずいことにあと20分でミサイル攻撃が開始される。ええ~ッ、そんなぁ。攻撃するならもっと早く連絡くれればいいのに何で寸前になって・・。攻撃があるってわかってりゃ乏しいガソリン使ってこんなとこまで・・。

ヘル・ディセント3

と言うか皆さん思いませんでした?ここへ来るのにガソリン使って、計画成功したとしてその後どうするの?って。どこへも行けないんじゃないかって。20分しかないわりにはシンクレア達はモタモタしていてのん気な感じ。見せられるのは彼女が最初にここに迷い込んだ時と同じもので、目新しいものはなし。その後は地下での怪物達との戦いと、地上でのウィルクスとゲリラの一団との戦いが交互に描かれる。そうなんですよ、呼んでもいないのにゲリラがうようよ。ここで一時休戦にしてゲリラと協力して怪物退治となってもおもしろかっただろうけど、そうはならなくてウィルクスが孤軍奮闘。地下の戦いよりこっちの方がハラハラさせられた。ミサイルが飛んでくるとわかっていても、仲間を置いて自分だけ逃げるわけにはいかない。シンクレアはヒロインだから生き残るし、フックはああやって食べられずにいたところを見るとやはり生き残るのだろう。でもウィルクスの生存確率はビミョー。ラファイエット達は次々に命を落とす。カビールは・・これもお約束だが、怪物の一人が自分の父親だと気づく。父親の仇を討とうと今までがんばってきたけど、その目標が消えてしまう。彼には生き残って欲しかったけどね。さてウィルクスはものすごいピンチに陥る。ワイヤーが引っかかって仲間を引き上げようにも動かず、逆に車がじりじりと穴へ・・。必死で食い止めようとするけど人の力ではどうにもならない。その間にもゲリラ達は執拗に撃ってくるし、おまえたちはハエかよ!ってなもんよ。爆発ですべてけりをつけるというのは安易な方法だし、見せられるものは怪物を含めすべてどこかで見たことのあるものばかり。でも・・思ったより楽しめた。ジョナサン・ハワードは「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」や「スカイライン-逆襲-」に出ていたらしいが、全然記憶にない。シャーロット・カークは「デッド・シティ2055」に出ていたらしいが全然記憶にない。まあそういった印象の薄い人達が出ているってことだけど、特撮よりも彼らの好演のおかげで楽しめた。全然期待してなかっただけに、得した気分に。