三人の波紋
これはなかなかおもしろかった。出てくる俳優がみんなはまってると言うか。三人のそれぞれが描かれるけど、はっきりしていてわかりやすいと言うか。1938年春のロンドン。夜・・一人で歩く美しい女性。何となくあとをつけてしまう太った紳士。二階の女性の部屋に通されると、そこには先客。三人とも赤の他人で、名前も知らない。部屋には古代中国の女神という観音像がまつられていて、女性が言うには今夜午前0時に願い事をするとかなうんだそうな。ただし三人共通の願いでなければならない。そうなれば金・・となるが、小男はたまたま宝くじ馬券を持っている。で、それがあたるよう願うことに。利益は等分に分けるよう署名もする。で、女性がクリスタル、紳士が事務弁護士のアルバトニー(シドニー・グリーンストリート)、小男がジョニー(ピーター・ローレ)と名乗る。くじはクリスタルが預かるが、ご利益を信じているのは彼女だけで、他の二人は彼女の夢に付き合っただけ。実は彼女には夫デヴィッドに戻って欲しいという切実な願いがあった。本当はそれを願いたかったのだが、それでも金があれば何とかなるかも。部屋を出たジョニー達は階段で男とすれ違う。女の部屋にあった写真の男だ。もうご利益があらわれたのか。夫を見て喜ぶクリスタルだが、どうも様子がおかしい。彼はカナダでジャネットという旧家の娘と出会い、結婚したい。今度また外国へ行くようだがその前にきちんとしたいということらしい。クリスタルが言う一度のあやまちはたぶん浮気だろうが、デヴィッドの心が離れたのはそのせいと言うより、彼女が偶像崇拝に入れ込んでいるのが原因らしい。クリスタルは態度を一変、離婚しないと言い放つその声音が怖い。さて、ジョニーは酒びたりの日々を送っている。今も看板なのに酒場で粘っている。そこへアイシーが呼びにくる。大家が読んでいる新聞にはファロンの記事が載っている。どうやらファロンとギャビーとジョニーの三人で強盗をやり、その際警官が一人殺されたようだ。つかまったのはファロンだけで共犯二人は逃亡中。このまま有罪になれば彼は絞首刑だが、二人のことを黙っているのは、つかまって口を割られては困るからだ。アイシーが偽証したりして何とか裁判で勝とうとしているところ。二人の潜伏資金はファロンが出している。
三人の波紋2
しかし大家も怪しみ出した。弱味につけ込んで家賃を値上げしたりする。それで二人はアパートを出る。ちなみにジョニーは当時泥酔状態で、犯行には加わっていないし、何も覚えていない。アルバトニーは二年前に亡くなった共同経営者べラドン卿の信託財産を密かに流用し、株の投機をしている。未亡人のレアは主人の霊と会話しているなどと話す変わった女性。流用のことは何も気づいていない。ファロンの裁判はだんだん不利になり、死刑を免れるため取引を申し出る。共犯二人のことを話し、それを知ったギャビーは怒り狂う。二人は橋の下に隠れているのか。そこへアイシーが差し入れに来る。ジョニーが食ってるのを初めて見たとギャビーが言うのが笑える。モースみたいにアルコールしかとっていないのだろう。アイシーはジョニーに好意を持っている。子供の頃から虐げられてきたそうで、ちゃんと扱ってくれたのはジョニーが初めてらしい。彼は生まれもよく、知識も豊富だが、魂が欠けてるとか何とか。ギャビーのようにファロンを憎んだりしないけど、その代わり誰かを愛するということもない。さて、クリスタルは夫の上司ロバート卿を訪ね、夫を心配するフリを装って女性がいることを告げ口。仕事はできてもプライベートがこれではということで、転勤はふいになる。また、ジャネットのいるホテルへ行き、自分は妊娠しているとウソをつく。クリスタル(ジェラルディン・フィッツジェラルド)は冷たい感じの美しい女性、アイシー(ジョーン・ロリング)は一途でかわいいタイプ、ジャネット(マージョリー・リオーダン)はうぶないいとこのお嬢さんタイプ。三人ともそれぞれ適役。株が暴落したアルバトニーは大ピンチ。レアにプロポーズして急場をしのごうとするが、夫の霊に金目当てだと言われたとかで、彼女は会計士を呼んで帳簿を調べさせることに。藪蛇だ!もうこれでおしまいと観念し、事務員二人を帰して拳銃自殺の準備。ところで若い方の事務員・・見覚えがあるな。ジョン・アルヴィン・・「五本指の野獣」のドンだ!床を汚さぬよう新聞紙を敷くなど意外と几帳面なアルバトニー。その新聞を見てびっくり。競馬の記事が載ってる。”観音”の文字も!今の今まですっかり忘れていた。残念ながらこの宝くじ馬券の仕組みは私にはさっぱりわからない。もしわかっていればもう少し楽しめたかも。
三人の波紋3
ジョニーはファロンの証言のせいでつかまるが、何もしゃべらない。このままじゃ絞首刑だが、気にしてなさそう。クリスタルやアルバトニーは、くじのことは黙っていることにする。その方が取り分が増える。アルバトニーは一刻も早く金が欲しいので、レースの前にくじ馬券を売りたいが、クリスタルは笑い飛ばす。アイシーは何とかジョニーを助けようと奔走する。実際彼は何もしていないのだ。そのためには自分が偽証罪でつかまってもかまわない。その頃ファロンは減刑され、刑務所へ入るため列車で護送されてる。そこへギャビーが現われ、ナイフを投げつける。ファロンは死ぬ前にジョニーの無罪を告白したとかで、彼は自由の身に。逆にギャビーが投獄されるが、もう一度殺したいくらいだと言ってるから、よほど恨んでいたのだろう。気持ちが沈むジョニーだが、自由は自由だ。彼はすっかり忘れていたけど、今日はグランド・ナショナル・・例のレースがある日。本命はコーンクラッカーという馬らしいが、新聞にあった”観音”は?アルバトニーはレース前にくじを売ろうと買い手も見つけてる。クリスタルに必死に頼むが、取り合ってもらえない。最初の取り決めでそうなってるから変更する気なし。彼女は観音像を信じてる。アルバトニーが破滅だとか言っても気にしない。私だって破滅した。ジャネットにはああ言ったけど、どんなことをしても夫の心は取り戻せない。逆上したアルバトニーは像でクリスタルの頭を打ち、死なせてしまう。こりゃまずいとジョニーは部屋から連れ出すが、頭がおかしくなったアルバトニーは手に負えない。そのうち警官も来る。入れ違いにデヴィッドが来るが、死体を見て立ち去る。クリスタルのせいでジャネットはカナダへ帰ってしまい、彼は妻を殺そうとやって来たのだが・・。酒場はレースの話で持ち切り。くじ馬券はジョニーが持ってるけど三人の署名があるので金には換えられない。クリスタル殺しに関係してると思われたら大変。そこへ自由になったアイシーが来る。彼女はジョニーと二人で新しい人生に踏み出せると思ってる。ジョニー自身今回のことがあって少し考えも変わった。彼はくじ馬券を焼き捨てる。・・てなわけで、こういう内容だと三人とも悲惨な結末迎えるんだろうなあと見るのをためらっていたんだけど、ローレだけは助かったのでホッとした。