アガサ・クリスティー(その他)

アガサ・クリスティー(映画・その他)

魔女の館殺人事件(蒼ざめた馬)

原作は「蒼ざめた馬」。私はクリスティー原作の映画いくつか続けて見ているわけだが、こうしてみると日本で言う2時間ドラマみたいだな・・と。題名も「○○殺人事件」とつけられていることが多いし。ま、私は2時間ドラマは見ませんけどね。「蒼ざめた馬」は読んでからだいぶたっているので、内容はすっかり忘れていた(もちろんこの機会に読み直しましたけど)。そのせいかここが違う・・などと引っかかることもなく、新鮮な気持ちで見ることができた。うまくまとめてあり、出来はいいと思う。彫刻家のマーク(コリン・ブキャナン)は、ゴーマン神父殺害現場に偶然居合わせてしまい、警察から犯人ではないかと疑われる。何とか容疑を晴らそうと、女友達のハーミアとともに調べ始める。神父は人の名前が書かれたメモを持っていた。書かれている人の多くは亡くなっていたが、別に不審な点はない。ハーミアの知人ティリーの名もあったが、彼女は今病気だった。何かにおびえ、「蒼ざめた馬」という言葉をもらしていたティリーもそのうち死んでしまう。彼女の幼なじみケイトはその死に不審の念をいだき、マークに協力を頼む。神父とティリーの死には何かつながりがあるのでは?問題の「蒼ざめた馬」は古いパブの名前で、今は三人の中年独身女性が住んでいる。彼女達には魔女だといううわさがある。メモにあった人達は魔女の呪いで殺されたのか。ブキャナンは金髪でわりとハンサム。日本でも「ダンジール警視」というシリーズがミステリチャンネルで放映されているらしい。彼のようなハンサムが出ていると興味がわき、映画の出来はさほど気にならない(←おいおい)。体形がちょっとゆるいのがいかにもイギリス人らしい。アメリカの俳優ならムキムキとまではいかなくてももう少し胸と腹の境界わかる。びっくりしたのは巡査部長役でアンディ・サーキスが出ていたこと。脇役だが不思議な存在感があり、主役を食ってしまう。謎めいた老人ヴェナブルズ役マイケル・バーンもいい。彼は「ゴールデン・ボーイ」に出ていたらしい。ヴェナブルズは悪人だが知的で冷静。映画に重みが出る。ハーミア、ケイトなど女優陣は(英国映画らしく)容貌より演技重視なのか、いずれもぱっとしないのが少々残念。1960年代という設定なので壁にミック・ジャガーの写真が貼ってあったりする。ヘアスタイル、化粧、ファッション・・いずれもそれっぽい。

魔女の館殺人事件2

上の感想書いたのは2009年の4月だからもう13年前?その際2回は見てるはずなんだけど、どうも内容思い出せない。普通二回見ればある程度は・・。だからもう一度見返そうとずっと思ってて。NHKでルーファスのを見たせいもある。ついでにジュリア・マッケンジー版マープルのを見て、だから今私の頭の中は三種類の「蒼ざめた馬」がごっちゃになってるわけ。いや、原作もざっと読み返したから四種類か。原作にはオツムの弱いポピーというコが出てくる。食事やパーティに連れていくにはちょうどいいコ。彼女の前でみんなはあまり気にせず会話をする。どうせ理解できないに決まってるし、彼女が何かしゃべっても誰も真面目に受け取らない。ところが彼女は蒼ざめた馬のうわさも知っているし、ブラッドリーという男が窓口なのも知っている。邪魔者を片づけてくれる方法がある・・そんなうわさが流れるのはまずいけど、と言って誰も何も知らないのでは商売にならない。依頼人獲得には宣伝も必要なのだ。依頼人はまずブラッドリーの説明を聞き、その後マッチ・ディーピングの三人の魔女のところへ行かされる。その際標的の手袋とか宝石とか、身に着けているものを持っていく。儀式が行なわれ、その後外国とか離れた場所へ出かける。標的はほどなく病死。遠くにいる依頼人は疑われずにすむし、呪いで死んだのだと思っている。で、首尾よく遺産相続。万一裁判沙汰になっても法廷では呪いなんて通用しない。ブラッドリーも三人の魔女も誰が殺して回ってるのかは知らない。また、病死の場合、検視も行なわれないようだ。・・こんなふうに長々と書いたのは、別に三人の魔女がいなくてもブラッドリーと黒幕の二人だけで犯行は可能なんじゃないかとどうしても思ってしまうからだ。そんなことより、市場調査の方をもっときっちりしておけば、調査員のデーヴィス夫人に怪しまれずにすんだのに。さて、映画の方はオズボーンは薬剤師ではなく医者になっている。ヴェナブルズは原作通り強盗団の首領になっているが、足が不自由というのはウソになってる。だからオズボーンの診察を拒否したんだな。オズボーンは強盗のことは知らないけど、偶然彼が自分の足で立っているのを目撃し、それを警察に話す。おかげでルジューン達は一味をつかまえることができる。

魔女の館殺人事件3

マークは彫刻家だが、仕事してるところは一度も出てこない。ハーミアは貴族の出で大金持ち。演じているハーマイオニー・ノリスはジェーン・フォンダによく似ている。化粧のせいだろう。彼女はマークが好きなのだが、彼の方は友人としか思っていない。しかもケイトに会うとたちまち心を奪われたようで。彼女は絵の修復が仕事で、話も合う。ケイトは親友のティリー・タッカートンの死に疑問を持っている。積極的な性格の彼女は、マークをぐいぐい引っ張っていく。ケイトは原作のジンジャーにあたるキャラ。本名はキャシー・コリガンで、赤毛なのでジンジャーと呼ばれている。ショウガ色ってことか。こちらのケイトはブルネット。演じているジェイン・アッシュボーンは、笑うとえくぼがかわいい。ティリーは原作のトマシーナにあたる。継母フローレンスはギャンブル狂で、ティリーの遺産目当てで契約を結ぶ。ただ、その財産もすでに抵当に入っているようで、約束の金を払えずロンドンへ逃げるが、自殺に見せかけて殺される。殺したのはブラッドリーの部下か。この作品ではポピーはフローレンスの娘という設定。マークはゴーマン神父の殺害現場に居合わせたため、ルジューン警部に疑われ、その後もずっと犯人視される。凶器のレンチにはマークの指紋がついていたため、ますます疑われる。原作と違いこちらのルジューン警部は視野の狭い偏見男。その分巡査部長コリガンの有能さが目立つ。演じているサーキスはメガネをかけていて、口のあたりなどブレンダン・フレイザーによく似ている。バナナを食べているシーンあって、「ギャンブル・プレイ」思い出す。ラストはにぎやかなパーティ。ポピーもいたな。母親を失い、財産もなく一人ぼっちになったけど、ハーミアが力になってくれるだろう。もう少し事件を振り返って欲しかったが、そのままエンド。流れている曲はドアーズの「ハローアイ・ラヴ・ユー」をアレンジしたものか。てなわけで全体的に地味だが、マープルを無理に押し込んだり、マークを殺人犯に仕立てたりなど奇抜なことをせず、普通にやってるのがよかった。

エンドレスナイト

原作はアガサ・クリスティーの「終りなき夜に生れつく」。DVD化されてるとは知らなかったので、レンタル店で見つけた時はびっくりした。一番下の棚にひっそりと・・きっと誰も借りていないだろうなあ・・。日本では未公開である。マイケル(ハイウェル・ベネット)は、お金持ちが車でヨーロッパを旅行する時、ずっとついて回る運転手の仕事をしている。母親にはもっとましな仕事につくよううるさく言われているが、そのつもりはない。お金はないが野望だけはある一見普通の青年。ある時建築家のサントニックスと親しくなる。病身であといくらも生きられないが、独創的な家を建てる。いつか彼に自分の家を設計してもらいたい。場所ももう決めてある。偶然見つけた「ジプシーが丘」だ。何やら奇妙ないわれのある土地らしいが、自分は気にしない。そこで出会ったのがエリー(ヘイリー・ミルズ)。お互い一目ぼれで、ちょっとあれこれあったけど、めでたくゴールイン。あれこれというのは、エリーがとんでもない大金持ちだったこと。マイケルとは別世界の人間。でもエリーはマイケルを心から愛している。マイケルだって・・。エリーには継母のコーラ(ロイス・マクスウェル)やら財産管理人のリピンコット(ジョージ・サンダース)やらがいる。彼らにとってマイケルは邪魔者だ。突然現われた素性もわからぬ貧乏な若者。この連中も気にくわないが、マイケルが最も嫌ったのはグレタ(ブリット・エクランド)。元々はエリーのドイツ語教師で、孤独なエリーが唯一信頼している友人。二人が結婚できたのだってグレタがうまく取り計らってくれたおかげ。そのせいで彼女はリピンコットらに憎まれ、クビになってしまった。彼女を見捨てるわけにはいかない。一緒に暮らしたい。その方がどんなに心強いことか。でもマイケルは三人で暮らすなんていやだ。そんな感じのストーリーで、ラブロマンス風味。マイケルとエリーに不吉な予言をする老婆が出てくるが、さほど印象に残らない。とにかく美しい映画だ。イギリスの田園風景・・丘、森、海、空。ミルズは天才子役として有名だったが、この頃は・・。確かブロンテ姉妹の一人をやるという記事が「スクリーン」に載っていて、すごく見たかったのだが(他の二人はグレンダ・ジャクソンとミア・ファローだったと記憶している)・・結局作られなかったようで。

エンドレスナイト2

エリーは途中で死んでしまうのだが、DVDを見る前は、ミルズがやっているんだし、もしかしたら内容変更されてるのでは・・なんて思ってた。死んだと見せて実は生きていて・・とか。そしたら原作通り。ただし死んでいるところははっきり見せない。エリーは落馬のショックで死んだのか。花粉などのアレルギーがあったため薬を飲んでいたが、命にかかわるような強いものではない。悲しみにくれるマイケル。彼は知らなかったが、エリーはマイケルを相続人にしていた。彼は大金持ちだ!ただリピンコットは、彼について何か知ってるようで・・。後半は火曜サスペンス風味。ああやっぱりね・・という作りだが、原作知らずに見てる人はけっこうだまされるのでは?この映画の魅力は前にも書いた景色の美しさ。それと洗練されたインテリア。もっとも私はサントニックスの設計は好きじゃないけど。部屋の中にプールとか悪趣味。次に若いミルズとベネットの魅力がある。私は特にベネットに注目していた。調べてわかったけど二人は何度か共演している。「ふたりだけの窓」とか「密室の恐怖実験」。ベネットは他に「きんぽうげ」にも出ている。そのいずれも私は見たことはなく、今作が全くの初めて。顔と名前だけは知っていた。ヘアスタイルはいかにも1970年代風。ハンサムと言うよりかわいらしい顔立ち。女の子に人気が出そうだが、一番目立つのが眉間のシワ。たてにくっきり刻まれたそのシワのせいで、一癖ありげに見える。コメディーには向かない。やさしそうに見えて実は・・というタイプに見える。裏切るだろうな・・という予感。このシワがなければ彼の役者人生も変わっていたことだろう・・って大げさ?ブルーグリーンの大きな瞳は実に美しく、マイケル・ケイン風味。体つきもすらっとしていて美しい。ミルズは額にシワがあって、やや魅力も失せたような。ただ、スタイルはいい。特に足はすらっと長く美しい。サンダースはいかにも曲者、敵なのか味方なのかはっきりしない不気味さがある。マクスウェルは「たたり」に出ていた人か。きれいで上品で落ち着いた感じの人なので、コーラ役には合っていないような気がする。調べてみたら彼女「謎の円盤UFO」にミス・ホランド役で二回ほど出ているようだ。どっかで見たような・・とは思ったんだよな。

エンドレスナイト3

一番ミスキャストに思えるのはエクランドだろう。グレタはブリュンヒルデのような輝く黄金の髪をしていて、現われただけで男達の目を吸い寄せてしまうタイプ。ところがエクランドは・・スケールが小さい。顔立ちも体つきもちまちまっとしている。化粧が濃く、浪費家で、マイケルにさえ色目をつかいそうな未亡人コーラの方がよっぽど似合う。グレタ役はもっと背が高く、堂々としていて、まわりを引きずり回すような迫力を持った人でなくちゃ。でもそれだとベネットと釣り合いが取れないか・・。リピンコットがマイケルにグレタと面識があるかどうか聞くシーンがないとか、老婆がどうなったのかはっきりしないなどの不満は残る。どうも最後の方はかけ足ぎみで、わかりにくいように思える。そんな物足りなさはあるが、それを補ってくれるのがミルズ。途中で出番が終わるが、最後の方で幽霊として出てくる。このシーンがすごく不気味。そう言えば冒頭にもエリーは出てくる。金髪が顔にかかり、目鼻が見えない。顔の部分がぼやけているのか、ありえないことだがのっぺらぼうなのか。妙なシーンが出てくるものだ。その後のういういしいラブロマンス風味で冒頭部分は忘れてしまうが、ラスト近くでまた思い出すこととなる。エリーは木かげで何かを見ている。マイケルにはエリーが見えるが、彼女には彼が見えていない。彼女は何を見ているのだろう。エリーは死んで、遺体はアメリカで埋葬したから、あれは幽霊だ。エリーの顔がアップになる。澄んだかわいい笑顔ではない。笑ってはいるがうつろで不気味だ。原作だとそれでもマイケルへの愛情を浮かべているが、こちらでは・・。マイケルはこの先ずっとあのエリーの幽霊を見続けるだろう。存在していないはずのエリーは見えるのに、存在しているはずの自分は見えていない。自分はいったい・・マイケルは次第に狂気の世界へ・・。健康的でかわいらしいミルズのイメージを逆手に取ったこの描写はとてもいい。「世にも怪奇な物語」第3話の悪魔の少女みたいな不気味さ。ぎょっとさせられるような怖さを久しぶりに味わった。もっとも健康的なイメージというのは私のかってな思い込みで、ミルズはこういう映画にもよく出ているようで。前に書いた「密室の恐怖実験」とかもサスペンス映画らしいし、ベネットの役は異常者。機会があったら見てみたいものだが・・無理だろうな。

ゼロ時間の謎

アガサ・クリスティーはおフランスでも人気あるんですかね。こうやって映画化されているってことは。ミス・マープルを無理やり割り込ませた「ゼロ時間へ」を見たばかりだから、こちらがほぼ原作通りの出だしなのにはびっくりした。原作のバトル警視がバタイユ警視(フランソワ・モレル)になって、ちゃんと娘が巻き込まれた学校での盗難事件出てくるし。自殺未遂のアンガスことヴェルテル出てくるし。バタイユは休暇取るはずだったのに、甥で刑事のリーチことルカを手伝うことになるし。ウン、なかなか原作を尊重していていいじゃん!ところがねえ・・このヴェルテルが・・デブでヒゲでメガネで頭うすくて・・何かさえないオッサンで・・。ラスト、オードリーことオード(キアラ・マストロヤンニ)と結ばれる運命にある人なのに・・。普通もちっとマシなの出してくるでしょうが。いやいやそこがおフランスなのか。若い美女出してくる代わりに色のくすんだ鳥ガラみたいな中年女出してきたりするし(「ナイト・オブ・ザ・スカイ」みたいに)。見てくれじゃないなかみだって言いたいのよ。メアリーことマリ=アドレーヌ(アレサンドラ・マルティネス)がそう。やっぱり鳥ガラ、しぼりカスみたいで何やら鬱屈している。原作でのメアリーはオールドミスでお金もない。生きていくためにはお金を稼がなくちゃならない。体は健康だし性格は真面目。辛抱強いし楽天的。扱いにくい年寄りもいるけど彼女は誠実に仕える。今のところ暮らしには困らないし、しばられた生活だけどいつか海外旅行をしてみたい・・なんていう夢も持ってる。でもそんなはずはない、心の中には何かかかえているはず・・とおフランスの作り手は考えるらしい。表には出さないけど欲求不満・・心の中はくすぶっている・・と、そういうことにしたいらしい。で、彼女は最終的にはサイゴン帰りのトマスことトマと(原作ではにおわされているだけだがここでははっきり)結ばれる。それはいいとしてこのトマがヴェルテルとそっくりで見分けがつかんのよ。ヴェルテルだと思って見ていたらトマで、ありゃりゃ・・となる。カミーラことカーミラはダニエル・ダリューで、この人は1917年生まれだからすごい年なんだけど、いまだにこうやって映画出ていてすごいね。ネヴィルことギョームはメルヴィル・プポー。美青年ということで本に写真載っていたりするけど、映画見るのは初めて。何か・・肩幅狭いね。

ゼロ時間の謎2

プロのテニスプレイヤーという感じしない。ああ、言い忘れたけど・・書き忘れたか?・・設定は現代なのね。ギョームの妻ケイがキャロリーヌ(ローラ・スメット)で、これがまあ大変な女なんだわさ。頭がおかしいんじゃないかって思うくらい騒ぎ立てるしわめき立てるし、こんなのと一緒にいられるわけないわよ普通の男性は。だから一緒にいるギョームはよっぽど気が弱くて離婚を言い出せずにいるのか、さもなきゃ計算ずく・・って予想つくわけ。それくらいキャロリーヌは異常で、こんな感じでいて普通の男性は愛してくれるはずないわけ。ホントバカまる出しで非常識。オードと対比するためオーバーなキャラにしているんだろうけど、それにしたってねえ。たいていのお客はうんざりすると思うよ。そういうのってまずいんじゃないの?それともおフランスではこういうヒス女が好まれるのかね・・思った通りに行動するナチュラルな性格・・とか。スメットは父親がジョニー・アリディ、母親がナタリー・バイだそうな。キャロリーヌの友人テッドことフレッドは、はっきりジゴロとして描かれている。何か・・色がどす黒くて若さがなく、どよんとした目つき。ハンサムでもない。何でこういう人出してくるのかな。それともおフランスではこういうのをハンサムと呼ぶのか(腐ったハムサンドだろッ!)。さてヒロイン、オード役のマストロヤンニは・・何か顔ががっしりしているなあ。カトリーヌ・ドヌーヴママも入ってるけど、顔の輪郭とか首とかマルチェロ・マストロヤンニパパの方が優勢のように思える。優雅ではかなげで万事小作りのオードのイメージとは明らかに違う。いちおうやつれた感じは出してるけど、元夫ギョームにおびえていると言うより所帯やつれのよう。プポー君の肩幅から言って腕力なら負けないでしょ、こちらのオード。この映画でもオードがどうやって暮らしているのか説明されない。あちこち訪問して滞在して・・生活費浮かせて・・。マリ=アドレーヌの欲求不満ぶりやフレッドのジゴロぶり、召使達の生態・・好色で仕事をうまくさぼるが表向きはちゃんと働いているように見える・・は描写せずにはいられないのに、オードのそういうところは通り過ぎちゃうのね。この映画のいいところは、景色の美しさ、建物の華麗さ。内容の方は・・だんだん期待はずれと言うか、迷走ぎみと言うか。強引でもある。

ゼロ時間の謎3

メイドや執事はコメディーっぽく描写されていて、カーミラが殺されて、泣いてばかりのメイドを、バタイユが「噴水」なんて呼ぶのがいい。トマは昔からオードを恋しているんだけど、この映画ではそれがあんまりなくて。手が不自由という設定も省かれていたような・・。トマとマリ=アドレーヌがくっついたって、原作でもそれはほのめかされているんだからいいんだけど、オードはあのデブとくっつくの?突然からくりがわかって、それこそ天の助けみたいに現われてオードを救い、事件も解決させちゃうヴェルテルだけど、その後が・・。何かラストおかしくない?ヴェルテルに求婚するオード・・見てる人、原作読んでる人全員そのシーンを確信したはずよ。いくらデブでハゲでオッサンでも命の恩人。それにデブでハゲのオッサンでもああいう美女手に入れられるなんていかにもおフランスじゃないか。見てくれじゃない!なかみの充実だ!・・でもヴェルテル出てこないのよ。どこへ行ったの?みんな彼にちゃんとお礼言った?トマとマリ=アドレーヌはくっつき、キャロリーヌとフレッドもくっつき、バタイユはやっと家族とのバカンスだ。オードだけはひとりぼっち。これから彼女はどうするのだろう。まあこれからは金の心配はない。カーミラが亡くなったため、マシューことマチューの遺産が入るから。この遺産に関しても殺人の動機として何度も出てくるのだが、この映画では遺産とキャロリーヌとの関係には知らんぷりだ。つまり原作ではマシューの遺産はネヴィルとその妻に半分ずつということになっていて、ケイは当然自分が半分もらえると思っている。しかしマシューがそれを決めた時、ネヴィルはオードリーと結婚していたから、遺産はケイではなくオードリーに行く。この映画も当然キャロリーヌが遺産に興味を示すはずだが描写されない。ラスト、フレッドと一緒にさっさと出発してしまう。ギョームが刑務所に入れば・・と言うか精神病院か?・・正式な妻である彼女に遺産が入るのでは?貪欲な彼女とフレッドがこういうおいしい機会を見逃すとは思えないのだが・・。しかし映画は終わってしまう。オードとヴェルテルのこともちゃんと始末つけず・・何だよ真面目に見ていたのに。波打ち際一人立つオードの運命は・・ってそんなことどうでもよろし。誰が心配するかっての!もう一度お願いしますベタニーとポーリーで「ゼロ時間」決定版作ってください!

そして誰もいなくなった

誰もいなくなってしまったのでは映画にならない、観客にそっぽ向かれるとでも思ったのか、結末は小説とは違っている。それ以外にもあちこち変えてある。オーウェンという男に招待、あるいは雇われた男女10人が集まる。屋敷(宮殿)は砂漠の中にあり、まわりには何もない。電話などもなく、ここへはヘリで運ばれた。オーウェンは不在・・と言うか、10人とも彼とは会ったことがない。部屋に落ち着き、荷物を解き、おいしい夕食をすませた頃には初対面の固さも取れてなごやかな雰囲気に。ここまではよかったが、突然オーウェンの声が流れ始める。10人とも殺人などの罪を犯し、しかも罰を免れているという告発。食卓には10人のインディアンの人形が置かれ、各自の部屋にも歌が額に入れて飾ってある。歌の通りに一人ずつ死に、人形は壊されていく。オーウェンはここにいる!しかし家捜ししても誰も隠れていない。と言うことは自分達の中にオーウェンが?限られた空間の中で一人ずつ死んでいき、何の解決のきざしも見えないのであまりおもしろいとは言えない。似たような顔つき、動きの少ないもったいぶった演技。映画と言うより舞台劇。大きくて入り組んだ宮殿は私好みだが、何で砂漠なんだろうという気もする。原作通り孤島の方がよかった。出演はオリバー・リード、エルケ・ソマー、リチャード・アッテンボロー、ハーバート・ロム、ステファーヌ・オードラン、ゲルト・フレーベ、シャルル・アズナヴールなど。オーウェンの声はオーソン・ウェルズらしいが、私が見たのは日本語版なので関係なし。セリフが聞き取れないので日本語版はいやなんだけど、店にはそれしかなかった。アズナヴールの声は美輪明宏氏のようだ。アズナヴールの役は原作ではもっとずっと若くて大柄で男ぶりもいい。何で正反対の彼を出してきたのかな。しかも一番先に犠牲になる。私がこれをレンタルしたのはリードが出ているから。大昔狼男の映画で彼を見てファンになった。もちろん狼男でない時の彼ですよ!彼の死はとても残念(まだ若いのに!)。それ以外ではオードランがよかった(吹き替えの声は最悪だけど)。犯人は原作読んでいなくても勘のいい人はすぐわかると思う。殺人が続くけど平板で怖さが感じられない。出来がいいとも思えない退屈な作品。でも二回も見ちゃったけどね。字幕で見ればもっと楽しめたかもしれないな。

サファリ殺人事件

原作は「そして誰もいなくなった」。あきもせず作られていて、今回の舞台はアフリカ。場所だけ変えていくらでも作れそう。少し前某新聞にポアロとミス・マープルはどちらも名探偵で、「オリエント急行殺人事件」「そして誰もいなくなった」などで、鮮やかな謎解きを見せる・・なんて書いてあって。「そして」にはポアロもマープルも登場しないのに。でも映画かテレビでは登場させたのかも。ただ「そして」の場合誰に対して謎解きをしてみせるの?誰もいなくなるんですけどぉ・・。今回集まるのはオーウェンに雇われた、あるいは無料サファリに招待された男女10人。タダほど高いものはない。無料に釣られないよう気をつけましょうね皆さん。主役は何とフランク・スタローン。シルベスター・スタローンの弟だが、ホントよく似ている。知らないで見たら無名時代の、まだ体ができ上がっていないスタローン?って思うこと請合い。でも顔は似てるけど全然オーラがないの。体つき普通で演技も平凡(あんまりうまくない)。別にこの役彼でなくてもいっこうにかまわない。要するに無個性。兄弟なのにどうしてこうも違うのかしら。その代わり顔つきがいやとか、演技見てらんないとか、そういうのもないけど。他の出演はドナルド・プレザンス。彼が出てきた時点で先が読めちゃうのはイタイけど、映画がぴしっと引き締まるのも確か。ベラ役はサラー・マウアー・ソープ。前感想を書いた「そして」同様、彼女とロンバード(スタローン)は生き残る。ベラは後半になると死体を見つけては悲鳴を上げるばかり。首吊りさせられそうになるクライマックスも、縄がすぐはずせそうでちっともピンチに見えない。ロンバードはサファリガイドだが実は別人。友人ロンバードが亡くなったので代わりに参加しただけ。だからオーウェンに告発されても彼自身には全く関係ない。今回の特徴は、不可抗力の事故とか情状酌量の余地のある者が多いこと。しかも皆常に罪の意識にさいなまれている。殺されて当然の悪人というわけではない。したがって犯人の方に少し頭がおかしくなって、マンハンティングを楽しんでいる・・という要素を持たせている。他にブレンダ・ヴァッカロ、ハーバート・ロムなど。毛深くて巨体のポール・L・スミスは迫力がある。10人のインディアンの人形は黒いせいか見づらく、どこが壊れているのか何体あるのかわかりにくい。重要な小道具なのにそれじゃだめじゃん!

華麗なるアリバイ

これはアガサ・クリスティーの「ホロー荘の殺人」の映画化。「ゼロ時間の謎」とか「奥さまは名探偵」とか、フランスでも彼女の作品はよく映画化されてるようだ。エリアーヌ(原作のルーシー・・以下同様)、アンリ(ヘンリー)夫妻の家に、週末集まった客達。医師のピエール(ジョン)が、ある患者・・老婆ジェヌヴィエーヴの治療に心血を注いでいること(病気の種類は違うけど)。疲れて無意識に「家に帰りたい」とつぶやくところ(今は家にいるのに!)。不器用な妻クレール(ガーダ)が、夫を待っているうちに肉が冷えて固くなってしまうこと。こういう原作のちょっとしたエピソードが、うまく散りばめられている。ピエールの愛人エステル(ヘンリエッタ)は悩んでいる。お互いに愛し合っているが、幸せにはなれない。クレールに告白してしまいたいが、決心がつかない。ピエールは10年前(15年前)はまだ若く、情熱的な恋をしたが、今はもうそんなことはしない。平凡な女と結婚し、子供も二人できた。エステルがいるとは言え、もう昔の彼ではない。ぐずなクレールにはいらつくが、それでも彼が一番愛しているのは、実は彼女なのだ。エステルにはそれがわかっている。彼女に気があるのがフィリップ(エドワード)。原作とは違い、彼はマルト(ミッジ)と同棲している。エリアーヌ達の姪がクロエ(デヴィッド)。甥が姪に変更されていて、ただでさえ多いのに、ますます女性の登場人物が増える。「名探偵ポアロ」では、デヴィッドは省略されていた。彼らを見ていると、これから列車に乗って葬式に行くのではないか・・と、錯覚しそう。何って・・「愛する者よ、列車に乗れ」という映画があって・・。あっちほどうじゃうじゃ出てはこないけど、ぞろぞろぺちゃくちゃくっついただの離れただの。エリアーヌは他にも二人招いて、そのうちの一人が女優のレア(ヴェロニカ)。10年前ピエールが火のような恋をした相手。早速ピエールはレアと浮気。もう一人はレアの運転手ミシェルだが、何かありそうでいて何もなく、何のために出てきたのか不明。この映画にはポアロは出てこない。いったい誰が真相を突き止めるのだろう。ピエールがプール脇で殺され、最初はクレールが疑われるが、犯行に使われた銃と、彼女が持っていた銃は別だとわかり・・釈放される。見ている者は、捜査するグランジュ(グレンジ)警部に期待するのだが、これが全然だめ。

華麗なるアリバイ2

頭は悪いし気は短いし。無能な彼に代わり、奔走するのがフィリップ。でも私は、どうもこういう・・色のなまっちろい、とろんとした目の、鼻の垂れ下がった、口元に締まりのない、もう少したつとぶくぶく太りそうなタイプは好かん。どうしてもうちょっとしゃきっとした美形出してこないのかね。フィリップは売れない作家で、マルトが働いて生活を支えている。彼はアル中気味で、時々記憶をなくす。ピエールの時もよく覚えていないし、レアに会った後のことも覚えていない。彼女と寝たかどうか・・。レアは惨殺され、彼が贈った自著のせいで、警察に疑われる。何も知らないフィリップとマルトがエリアーヌの家に行くと、何だか態度がおかしい。テレビをつけようとしないし、フィリップに話があると言われたアンリは、銃を持っていく。ここらへんはコメディータッチ。で、あれこれあって、勘違いしたフィリップは、プールで自殺を図るが、危ういところをマルトに助けられる。原作だとガスオーブンに頭突っ込むが、自殺の理由は全く別。アル中もレアが殺されるのもフィリップが疑われるのもなし。つまりここらへんになると、原作とはかなりかけ離れた内容となる。クライマックスも、クレールの死に方も違う。違っていてもまとまっててくれればそれでいいが、この作品はばらけた感じ。ぺちゃくちゃうるさくてご都合主義で、いつの間にか解決する。推理・謎解きの妙があるわけでもない。エリアーヌ役はミュウ・ミュウ。ピエールがランベール・ウィルソン。ちょこっと水着になるが、おなかが出てないのはさすが。エステルがヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。彼女は「愛する者よ」に出ていた。サルコジ大統領夫人カーラ・ブルーニの姉。少し老けたけど、味のある雰囲気に。ジェヌヴィエーヴ役は何とエマニュエル・リヴァだ。「二十四時間の情事」で有名らしいが、私はやっぱジャック・ブレルの奥さん役で出ていた「先生」だな。マルト役セリーヌ・サレットは「ヒア アフター」に出ていたらしい。人を引きつける不思議な魅力があるが、タバコを吸ってばかりいるので、見ていて心配になった。なぜかパスカル・グレゴリーに似ているが、時には体操のボギンスカヤにも見える。それにしてもなぜこんな題名をつけたのだろう。アリバイって・・誰の?普通なら出てくる説明シーンもほとんどないし・・たぶんこれは恋愛映画なのだろう!!

忘られぬ死(1983)

これはまだ原作を読んでいない。映画を見ながらずっと「どこかで読んだような」と思ってた。青酸カリ、財産の行方、不倫、謎の男性との恋・・どこかで見たような読んだような。新鮮味ゼロ。「忘られぬ死」とほぼ同じ内容でポアロの出てくる「黄色いアイリス」という短編がある。私はこっちは読んだことがある。主演は一時日本でも人気のあったデボラ・ラフィン。背が高く足がすらっと長い。スカートよりジーンズが似合う。水上スキーとか脚線美見られる。サラサラの美しい金髪、清楚な顔立ち・・日本人(特に男性)はこういうタイプに弱い。私自身は彼女の作品は見たことがなく、今回が初めてだと思う。ミア・ファローとグウィネス・パルトロウに似ている。感じはいいし演技も無難だが、何だろう・・そのうちあきてくる。一点のくもりもないさわやかさ、清純さで最初から最後まで通されると何か別のもの見たくなる。例えば完璧に潔白に見えた彼女が実は犯人だった・・とか。でも完璧に潔白のままで終わってしまうので、見ていてつまんないのだ。・・イギリスからアメリカへ戻ってきたアイリス(ラフィン)。姉のローズマリーはスティーブンと浮気していたが、別れを切り出され動揺する。スティーブンの妻サンドラはアイリスの友人。サンドラもローズマリーの夫ジョージも不倫に気づいている。知らないのはアメリカを離れていたアイリスだけ。結婚記念日の席上、ローズマリーが毒殺される。遺書めいたものもあり、自殺に見えなくもないがジョージはアイリスの誕生パーティを同じ店、同じメンバーで開く。その席上で犯人をあばこうと何やら計画していたらしい。しかし今度はその彼が毒殺される。そのうちアイリスも狙われるようになり・・。ローズマリーの財産は妹のアイリスへ。彼女が死ねば伯母のルシーラのところへ行く。ルシーラが犯人なのか。ジョージがアイリスの代わりに死んでしまったからくりはすぐわかる。でも犯人は最後までわからなかったな。アイリスは記者と称するトニーと親しくなる。謎めいたトニーの正体は実は私立探偵。それを知ったアイリスが何を調査しているのか尋ねないのは不自然。答えてくれるかどうかはともかく普通聞くでしょ?トニー役アンソニー・アンドリュースはマイケル・ケイン似。今ではすっかり老けてしまっている。前に感想を書いた「親指のうずき」でトミー役やってたらしい。

忘られぬ死(2003)

GWに東京へ行った時、中古DVDを見つけた。最初はデボラ・ラフィンの1983年版がDVD化されたのだと思った。でも違うようで。キャストを見てびっくり。ジョナサン・ファースが出てる~即購入。他に知ってるのはスーザン・ハンプシャーくらいか。「永遠のエルザ」に出ているが、見たことはなし。あんまり美人ではなく、つまんだような鼻の形に特徴がある。クリスティーの作品はだいぶ制覇したけどこれはまだ。あと「無実はさいなむ」もまだ。本屋に行けばあるけど、105円の見つけるまでがまん・・いやせめて半額とか。こちらはケイトとジェフリーという初老の夫婦が出てきて、表向きは学校の教員と軍の年金課に勤めてる。でも実は・・情報部員っぽい。本職は実の娘にさえ秘密。大富豪ジョージの妻ローズマリーがレストランでの会食中に殺される。同席してたのは夫のジョージ、ローズマリーの妹アイリス、伯母のルシラ(ハンプシャー)、文化・スポーツ大臣のスティーブンと妻のアレクサンドラ、ジョージの個人秘書ルース、ジョージがオーナーのサッカーチームの有望新人フィズ。この七人のうちの誰かがグラスに毒を入れたのだ。あたしゃてっきりジョナサンの役はデボラ版の時のトニーの役だと。アイリスとトニーが犯人突きとめるのだと。その過程で恋に落ちるのだと。でもこちらではトニーに当たるのは黒人でヴィン・ディーゼル似のフィズ。あんれまあがっかり。ジョナサンはルシラの息子マーク役。ケイトの部下アンディ(ドミニク・クーパー)は最新機器駆使して情報集める。世界中どこの監視カメラの映像も見られる。顔の特徴からある人物を特定検索するなど「シックス・パック」と同じ。原作は読んでないから比較するつもりはない。どうせ大幅に改変してるだろうし。とにかくトミーとタペンス調になってるのが意外で。いやホントモロトミタぺ。こういう設定にしとけば夫婦の会話で時間稼げるし、笑えるシーンも入れやすい。それにしても何だか変な内容だ。時代設定はモロ現代。アイリスは運動トレーナー。デボラのような清純さはなし。ローズマリーの自殺癖はなぜ?なぜスティーブンと浮気を?子供の中絶はなぜ?アンディの調査で、ジョージがマークにお金を与えていたってわかるけど、なぜ?彼のようなお金にうるさい人が、働きもせずカジノ通いしている遊び人にお金渡すはずないでしょ。

忘られぬ死2

幼くして両親をなくした姉妹を育ててくれたのは伯母。今の伯母はお金に困っている。アイリスは喜んで援助するつもりだ。ジョージも金持ちだが、姉妹も大金持ちなのだ。でもアイリスはマークにも援助申し出る。お金渡したってカジノでするとわかっていて?皆変に気前がいい。さてマークはルースをあやつってローズマリー達を殺すわけだが、彼がレストランの監視カメラにうつるようなへましますかね。私てっきり彼がカジノ抜け出し、給仕に化けて毒入れるんだと。ルースがやるのなら彼その場にいる必要ないじゃん。犯行がばれてもルースがやった、自分は何も知らないと主張できるよう、カジノのカメラにうつるようふるまうはずでしょ?でもまあそんなことはどうでもよろし。ジョナサンさえ見られればいいの!DVDのカバーはいったい何だ!表と裏に同じ写真使う手抜き。しかも許しがたいことにジョナサンの写真がない!これはもう犯罪だ~!最初この人かな~ちょっと老けてるけど~「シックス」が2000年でこれが2003年で数年しかたってないけど美人薄命・・でもッ!違いましたッ!これはスティーブン役ジェームズ・ウィルビーでした。ありがたいことにジョナサンは「シックス」と変わらぬ美しさでしたッ!いやホントペレーズに似ているわ~。違うのは彼を見ていても髪の心配しなくていいこと。いやに額が広いなあとか。将来はともかくこの時点ではモウマンタイ!「シックス」の時は存在自体が幽霊みたいで。でも今回は確かに人間で。美しくて気ままで、特に女性は彼に気を許しちゃう。でも外見とは裏腹に彼は邪悪で。まわりが援助するのは当然で。それでいて自分に援助申し出るなんて何思い上がってるんだと憎悪して。母親やルースのことバカにしてるし。情報いっぱいあるダグラスって感じ?死体損壊して楽しむ変態じゃないけど、両者には共通点大ありで。我々は今回は明るいところで彼を見られるわけ(あっちは暗かったもんね)。見れば見るほどこういうキャラはジョナサンにぴったりで、これからも見たいけど、イメージが固まっても困る(トニパキみたいに)?いや全然困りませんッ!ジェフリー役オリヴァー・フォード・デイヴィスはどこかで見たような・・「ジョニー・イングリッシュ」のカンタベリー大司教だ。彼の写真もカバーにはなし。ほとんど主役なのに!

アガサ・クリスティー ねじれた家

これは前々から見たかった映画。公開時に原作読み返して、今回また読み返した。でないと誰が誰だか、関係がつかめない。注射のシーンから始まる。富豪のレオニデスが死亡する。彼は糖尿病で、インスリン注射が欠かせないのだが、ビンのなかみはインスリンではなく・・。原作だとエゼリンだが、映画ではただ毒物となっていたような。後でシアン化物が出てくるが、これだとすぐに苦しみ出すはずで、翌朝まで気づかれなかったってことは?レオニデスは緑内障の治療のため目薬を使っているが、それ・・エゼリンは服用すると死ぬこともあるらしい。でも映画では緑内障はなし。レオニデスにはロジャー、フィリップ(ジュリアン・サンズ)の二人の息子がいる。映画ではなぜか兄弟の順が逆になっている。フィリップは原作では「長男のロジャーばっかり」と不満をもらし、映画では「自分が長男なのに」と不満をもらす。関係ないけど文庫の解説ではロジャーの妻クレメンシーが舞台女優、フィリップの妻マグダが科学者になっているが、実際は逆。クレメンシーが科学者でマグダが舞台女優。映画ではクレメンシーは化粧品メーカーの研究員。演じているのはアマンダ・アビントン。原作のクレメンシーはかなり変わったキャラ。放射線の研究をしていて、自分達が住む部屋は病院か修道院のように簡素にしている。ロジャーはケータリング社を任されているが、商売の才能はなく倒産寸前。そのため一時はレオニデス殺しの容疑者になるが、実際はレオニデスは彼を救うため高額の小切手を書いており、容疑は晴れる。しかしクレメンシーはレオニデスの金が自分達をだめにすると考えていて、バルバドスへ移住する計画を立てている。レオニデスの遺産も欲しくない。映画だとクレメンシーはバルバドスで孤児院をやると話すが、これはいかにも取ってつけたような感じ。彼女は自分と夫のことだけを考えており、他人・・孤児のことを考えているようには全然見えない。フィリップとマグダの間には子供が三人いる。長女ソフィア(ステファニー・マティーニ)、長男ユーステス、次女ジョゼフィン。ジョゼフィン役オナー・ニーフシーは「マイ・ブックショップ」のクリスティーンだ。マグダ役はジリアン・アンダーソンだが、ずいぶん老けて見えると言うか、劣化した感じ。

ねじれた家2

ユーステスは小児マヒのせいで、少し足を引きずる。ロックンロールに夢中という設定だが、そうすると原作より時代設定は後になる。原作は戦争が終わってまもない頃、映画は遺言書の作成が1957年なんて言ってるから、10年くらいずらしてあるのか。さて、主人公はチャールズという私立探偵。演じているマックス・アイアンズはジェレミー・アイアンズの息子だそうな。「ザ・ホスト 美しき侵略者」に出ていたらしい。体つきはたくましいけど、顔立ちは繊細でダニエル・ラドクリフ似。そのせいかどの批評見ても存在感がうすいとか、頼りにならないとか書かれている。まあホームズやポアロのようなタイプが特異なのであって、実際の探偵はこんなもんでしょ。終わり近くに関係者全員集めて謎解き・・をどうしても期待しちゃうけど、この映画はそういうのなし。さて、事務所には手伝いのおばあさんがいるけど、どうも仕事は全然なさそう。チャールズは以前外交官で、カイロにいた時ソフィアと出会い、恋に落ちた。と言うか、彼の方からソフィアに近づいた。それと言うのもレオニデスはCIAの協力者で、彼の事業のある部分が大目に見られているのもそのせいなのだとか。そのレオニデスの娘がカイロに来ているのには目的があるのでは。探れということに。原作にはCIAなんて出てこないし、結局何も絡んでこない。くっつけてみただけよってか?普通に出合って恋をして、でも仕事で二年東洋へ行くことになって。帰ってきてまだ気が変わっていないようなら結婚しよう。で、帰ってきたらレオニデスの訃報。それでいいのに。映画ではソフィアの方から別れを言い出したようで。何やら思わせぶりにしてある。また、チャールズの父親もロンドン警視庁の警視監だったが殺され、犯人はまだつかまっていないみたいな。原作ではちゃんと生きてるから、テレンス・スタンプが出てきた時にはてっきり父親だと・・。でも違った。タヴァナー主任警部役。うん、でもスタンプは80近いのよ。いくら何でも年取りすぎでしょ。でも見ることができて・・まだ元気でやってるなとわかってうれしいけど。最初ソフィアが仕事頼みに来た時・・殺人者は家にいる、警察より先に調べてくれ・・チャールズは断った。でもそれだと映画にならないのでレオニデスの屋敷へ。タヴァナーは二日間だけ待つと猶予をくれた。

ねじれた家3

チャールズの仕事ぶりはそんな聞き取りでいいの?ってくらいあっさりめだけど、探偵事務所のさびれ具合からもわかるけどあんまり有能じゃないんだろう。ソフィアからしてあまり協力的じゃない。レオニデスには50歳くらい年が離れた後妻ブレンダがいる。彼女は元ダンサーで、当然のことながら家族の者から白眼視される。みんなレオニデスを殺した犯人がブレンダならいいのに・・と思っている。特にロジャーは敵意剥き出し。チャールズはそんな彼女を気の毒に思う。レオニデスの亡くなった前妻の姉イーディス役がグレン・クローズ。彼女はレオニデスを嫌っていたが、母をなくした子供達を育て上げる。登場した時はモグラ退治のためショットガンを持っている。他に乳母のナニー、ユーステスやジョゼフィンの家庭教師ローレンス。ローレンスは原作では臆病で、何もしてないのにドツボにはまるタイプ。レオニデスが彼を雇ったのも、彼ならブレンダと深刻な問題起こしそうにないかららしい。ブレンダはロマンチックな空想・・ローレンスに崇拝されている・・するだけで満足するタイプだし、ローレンスは臆病すぎて行動起こさない。ブレンダからのラブレターを隠していたため、二人して逮捕されるが、そのラブレターにしたって殺しの相談してるわけじゃない。映画ではローレンスは臆病でもなく、ややはっきりしない性格。ラブレターもブレンダには書いた覚えがなく、後で犯人が偽造したものとわかる。ジョゼフィンはいろいろ嗅ぎ回り、ノートに書きつける。自分は何でも知っているとチャールズに自信ありげに言う。それでいて肝腎のことは黙っている。他の大人は誰も彼女のことは気に止めない。母親のマグダは「取り替え子」と無神経な呼び方をする。ナニーはうるさく彼女を叱る。彼女を心配してのことだが、彼女にはそんなことはわからない。ナニーは嫌い、おじいちゃんも嫌いだった。バレエを習いたいのにへただからとやめさせられた。原作を読んでいるとジョゼフィンは「悪い種子」のローラそっくりだ。しゃべり方が・・口が減らないと言うか。原作では顔立ちも醜いということになっている。映画ではそれほどでもない。一番年少なのだから、本来ならかわいがられて育つはず。でもこの屋敷ではみんな自分達のことにかまけて、クリスティーンの存在は無視される。生意気なのは確かだが、かわいそうにも思えてくる。そんな彼女がケガをする。

ねじれた家4

映画ではツリーハウスに上るための縄梯子が切られて・・となっている。後でチャールズは剪定バサミを見つけたりする。ハサミはイーディスのものだが、見つかったのはローレンスの引き出し。あれ?でもジョゼフィンは梯子を切った後、ハサミを引き出しへ入れることはできないぞ。梯子を切ってハサミを引き出しへ入れたのなら、ツリーハウスへはどうやって上ったのだろう?とにかくチャールズはこうなることを恐れていた。犯人を知っているなどと平気でしゃべるジョゼフィン。チャールズがいくら警告しても聞かなかった。それにしてもソフィアの態度がはっきりしない。彼がブレンダに同情すると嫉妬するし、愛情が燃え上がったように見えたかと思うと突き放す。クビだと言ったりもする。チャールズは振り回されっぱなし。もちろん彼女にも彼女の悩みがある。レオニデスの遺言書では財産は妥当な分け方をされていた。ところがそれは無効で、後から出てきた有効な遺言書では、財産のほとんどはソフィアに。ロジャーやクレメンシーは気にしないが、フィリップやマグダは大ショック。原作ではユーステスも怒り出す。自分は男なのに。ここらへんは「犬神家の一族(76)」みたいだ。財産のほとんどが珠世へ行き、みんなショックを受ける。映画では小夜子が自分は全く無視されていると怒り出す。そう言えば映画では犬神佐兵衛の写真がやたらうつって、松子を操っているように見えたが、こちらでもレオニデスの大きな肖像画が何度もうつる。ラストシーンも!とにかくソフィアはたくさんの事業を受け継ぎ、切り回していかなくてはならない。彼女はこの遺言書のことは前から知っていて、カイロでチャールズと別れたのはこのためらしい。とは言え、何かの冗談だと思っていたのも確か。それが現実になってしまった。レオニデスが彼女を選んだのは、それだけの能力があると見込んでいたからだが、彼女を一生束縛することになっても気にしなかったようだ。ずいぶん勝手なジジイだ。原作ではそういう事情だからこそ彼女には支えが必要で、それがチャールズとなるわけだが、映画は・・どうなるのかね。話を少し戻して・・ブレンダとローレンスが逮捕され、チャールズの仕事も終わりとなって、探偵事務所へ戻るけど、気分は晴れない。あの二人が犯人ならいいと思ってたくせに、イーディスやソフィアはできる限りいい弁護士をつけたいなんて言ってる。二人が逮捕されてあからさまに喜んでいるのはロジャーだけ。

ねじれた家5

手伝いのおばあさんが、事件を解決した探偵だと言うので、仕事が増えたと喜んでいるのが微笑ましい。だが事件は終わっていなかった。ナニーが毒殺されたのだ。使われたのはシアン化物。チャールズはイーディスがモグラ退治をしていたことを思い出す。あれにシアン化物を使うではないか。その少し前、ジョゼフィンは退院してきていたが、例のノートがないと気に病んでいた。ナニーの件で屋敷の内外がゴタゴタしているので、イーディスは口実を作ってジョゼフィンを車で連れ出す。私が残念に思うのは、彼女が腫瘍科の医者へ行き、あと数ヶ月の命と告げられるシーンをわざわざ入れたこと。彼女が外出する。戻ってきたけど、車の中で物思いにふけっている。そういう間接的な描写でいいと思うんだけど。グレン・クローズが出てきた時点で、見ている人は彼女がカギを握る人物だと予測する。だから後でチャールズ宛てのメモですべてが明らかになるまで、余計な情報は見せない方がいいと思うんだけど。おまけにチャールズとソフィアはイーディスの車を追跡。何もかも見せすぎだ。原作では何の病気かははっきりしない。ナニー殺害に使われたのが、彼女の心臓の薬ジギタリンなので、心臓が悪かったのは確か。チャールズ達の目の前でイーディスの車は崖から落ち、炎上する。チャールズは駆け寄ろうとするソフィアを止める。だから見ている者には車がどういう状態なのかは直接は見えない。したがってどうしても想像してしまう。いちおうは下を見てみたら?もしかしたら途中で引っかかってまだ生きてるかもよ・・って。ジョゼフィンだけ生き残っていたら、それこそ小説の方の「悪い種子」のラストだけど。結局犯人はジョゼフィン。ノートにみんな書いてあった。おじいちゃんはバレエをやめさせた。ナニーはいつも叱ってばかり。ネットで調べていたら、ジョゼフィンが犯人と気づいたイーディスが彼女を殺そうとココアに毒を入れたのを、ナニーが飲んでしまったと書いている人がいて、なるほどそういう考え方もあるのかと思った。実際はジョゼフィンがナニーを殺そうと自分のココアに毒を入れた。自分が飲まなければナニーがもったいながって飲んでしまうと見越しての犯行。イーディスはジョゼフィンをかばい、自分が犯人だということにし、死ぬことに。自分は長くないし、ジョゼフィンが生きて罪を問われることには耐えられない。で、映画は終わってしまうので、前にも書いたがこれからどうなるかは不明のまま。チャールズは別の人見つけた方がいいと思うよ。