一億円のさようなら

一億円のさようなら

私は日本のテレビはあんまり見ないんだけど、上川隆也氏はファンというほどでもないけど、わりと好きなので。原作は読んでない。1989年、アパートでのひっそりとした葬式。弔問に訪れた中年女性。遺された家族らしい若い女性。亡くなったのが道代、遺されたのが娘の夏代、弔問に来たのがおばの加津代。2019年、夏代(安田成美さん)は鉄平(上川氏)と二人暮らしだ。息子の耕平は医学部に、娘の美嘉は看護学校にと、二人とも家を出た。鉄平は富士見メディカルの試験機器調達部の部長、夏代は節約が生きがいみたいな主婦・・いや、週に何日かパートはしているようだが。彼女は元看護師、営業で病院を出入りしていた鉄平の方が彼女に一目ぼれした形。明るくて患者に献身的に尽くす夏代。でも不器用な鉄平はなかなか彼女にアタックできない。でも結局は結婚し、今日までやってきた。ところがある日突然妻の秘密が明らかになる。会社に親戚だという治夫が現われ、2000万の借金を頼まれる。そんな大金あるわけないと断るが、何と夏代には亡くなった加津代からの遺産があり、それが今では48億に増えているというのだ。呆然とする鉄平。帰宅して問いただすと、遺産の件は本当だと言う。自分のものじゃないから言う必要ないと思ったとか、忘れていたとか弁解するが、鉄平には理解できない。・・出だしは好調で、引き込まれるが、若い二人の部分が多いのにはちと意外な気も。回想で少しは出てくるだろうとは思ったけど、今と昔と半々くらい。そりゃ夏代が言うように、大金によって人生や性格が変わってしまうことはある。だから黙っていたのも無理はない。でも鉄平は自分の母親の病気のことを思い出すと、夏代が許せない。あの時お金があれば・・と、彼はずっと自分を責めているのだろう、気の毒に。夏代は治夫の借金も断った。酒造業をやっているが、火事を出してしまい・・。あれきり治夫は出てこないが、どうしただろう。莫大な財産が夏代一人に行ったことに対し、不服を申し立てなかったのかな。鉄平はバーで一晩明かすが、朝になれば少しは頭も冷える。しかし帰ってみると夏代の姿はなく、兵藤という弁護士が現われ、一億円の入ったバッグを渡される。一回目を見た限りでは鉄平の方に共感できる。夏代は何を考えてるのかよくわからないし、子供二人も問題抱えていそう。

一億円のさようなら2

夏代が電話してくる。自分も一億円を自由に使えるようにしたと。夫に向き合うのではなく、一人で旅に?大金の存在は鉄平を落ち着かなくさせる。仕事へ行っても一億円の使い道を考えてみたり。彼らはボロいマンションに住んでいるという設定。目下の悩みは風呂の追い炊きができないこと。取り替えたいが金がない。でもボロマンションにしてはきれいすぎるな。扉に傷があるとか、壁に補修のあとがあるとか、子供がいたんだからそれくらいの傷みはあると思うんだけど。一億円でどれくらいのことができるのか、どれくらいの間暮らせるのか、そんな計算をしている鉄平に比べ、夏代はホテルの朝食ビュッフェでプチ贅沢を楽しむ。家事から解放された彼女に比べ、鉄平には仕事がある。工場で爆発が起き、部下の青島が重傷を負う。妻の美穂は会社を訴えると息まくが、青島の母親はそんな彼女を激しくなじる。子供が病弱なため、産休が終わって仕事に復帰した美穂に代わり、青島が仕事が原因の鬱病と偽って休みを取っていたのだ。鉄平は青島の体調を気遣っていたが、コロリとだまされていたわけだ。過去の部分では、夏代が医師の木内(武田真治氏)と不倫していることがわかる。それでも鉄平は彼女に引かれる。不倫中の女性に引かれるものですか?少しは考えると思うけど。また、春乃というガン患者が亡くなり、夏代はショックを受ける。木内は妻と離婚し、一緒に海外へとプロポーズ。一度は承諾した夏代だが・・。春乃の娘沙那を励ますシーンでは、見ている者の涙をしぼる。沙那役の子がうまい。一方現在の鉄平は青島の意識が戻って一安心。仮病の件は不問にふすのかな。休んで給料だけもらっていたんですぜ。そのうち工場の爆発により周辺が有害物質で汚染された疑いがあると報道され始める。で、その対策委員会任されたのが鉄平。困難で損な役回り押しつけられちゃった。一方夏代が会いにいったのは木内。武田氏が老けメイクで出てくる。他に娘の美嘉は妊娠したため家に顔を出す。夏代はどこにいるかわからないので、鉄平に相談しそうになるが、きっかけを逃してしまう。今回もたぶん夏代より鉄平に同情票が集まるんでしょう。

一億円のさようなら3

「麒麟がくる」の録画がたまっている。でもこっちの方がおもしろいので、つい先に見ちゃう。今回は若い二人の部分は少なめ。中年になった方の鉄平ががんばる。いや、若い方の鉄平もがんばっているけどさ。接待で毎晩のように遅くなる。休日は2歳になった美嘉の相手。夏代は二人目ができた。ますますがんばらなくちゃ!現在の鉄平は、爆発の後始末に追われる。元はと言えば新プラント建設のため、古い方のメンテナンス費用をケチったのが原因。それなのに川俣らは無理にでも計画を推し進めようとする。それには会社買収の話が絡んでいるらしい。それだけでも頭が痛いのに、美嘉の妊娠を知って驚愕。男とは別れたというのはウソで、卓郎という青年と同棲。夏代は卓郎のことは知っているらしい。おや鉄平は蚊帳の外ですか。彼女とはずっと連絡が取れない。弁護士兵藤の態度は冷たい。相談は1時間1万円などとほざく。でも、後の方で鉄平と一緒に飲んでたな。さて、卓郎は中絶させる気でいて、美嘉も同意するが、手術直前に病院からいなくなってしまう。後で、耕平からの連絡で、彼のところにいるのだとわかる。美嘉は一人で育てると言い張り、耕平まで大学をやめて事業を起こすと言い出す。大学と言っても耕平の場合医学部だから、かなり金がかかったはず。はいそうですかとはならないわな。そりゃ怒るわな。鉄平は美嘉と子供のために一億円を使おうと思ったりするが、卓郎の母に手切れ金500万を出され、考えが変わる。美嘉はやはり自分の力で生きていくべきだ。まあお金のことを黙っていたのは正解だった。耕平が知ればきっと出資してくれと言い出す。夏代が黙っていたのも少しはわかる気がする。もちろん母の病気の時も金を出さなかったことは引っかかるが。さすがに夏代も姿を現わすが、家には戻らずしばらく美嘉のそばに。夏代のバイト先にあいさつに行った鉄平は、以前彼女のところに男が訪ねてきたと聞かされる。その男木内が鉄平の前に現われる。次回予告では美嘉や耕平は本当に自分の子なのかと疑って、鉄平が夏代に平手打ち食らっていたけど、疑われるのも当然ですわな。夏代は木内に、鉄平とはもう関係ないとか言ってたけど、どういうつもりでそんなこと言うのかね。

一億円のさようなら4

木内は営業マンだった鉄平が出向になったことを知っていた。なぜ自分のことを知っているのかと、鉄平は不審に思う。仕事では周辺の住民に頭を下げて回る。最初は冷たかった彼らも、鉄平の誠意を感じ取ったのか態度を和らげたようで。工場爆発による汚染もわずかですみそうで一安心だが、川俣らの計画推進は急ぎすぎてはいないか。そもそも買収しようとしているのはどこの会社なのか。ワールド・バイオテクニカルという外資系の会社・・何だか聞き覚えがある。夏代が二億円投資したと治夫が言っていた会社だ。夏代は弁護士の兵藤(先代)に頼まれて・・と説明していたが、息子の方の兵藤には心当たりはない。第一弁護士が依頼人にそんなこと頼むはずがない。何だかいつの間にか兵藤とも付き合い始めたぞ。冷たく見えた兵藤だけど仕事・金一辺倒でもないのね、何だか安心した。このワールド・バイオテクニカルが木内の会社なのは予想がつく。しかし木内は表には出ないようにしているので、鉄平は気づかない。調べてみると有望そうなので、買収される前に手を打ち、合弁会社という形に持っていくよう会議で提案する。川俣らは反対したが社長は同意し、うまくいくが、手柄は他の者に。しかし鉄平は気にしない。人員を削減しないですんだことに一安心。ところが今度は不正なリベートを受け取っていたという理由で、退職を迫られる。呆然とする鉄平だが、どうやらワールド・バイオテクニカル側から鉄平をはずすよう言われたらしい。同じことは前にもあった。営業成績も伸び、そろそろマイホームを・・と考えていた時に、突然出向を言い渡された。給料も減った。どちらも木内の差し金なのだが、合弁会社うんぬんの案を出す前から、菅原常務らは鉄平を陥れる用意をしていたようにも思える。彼は味方に思えたのに・・。この、誠意を持って尽くしているのに裏切られるという感触・・誰にもあることだと思う。家を出た夏代が木内と会っていたこともショックだった。こうなるといくら彼女が弁解しても信用できず、鉄平はとうとう家を出る。故郷に戻って両親の墓参りをしているとやってきたのが、波江という女性。幼なじみか?

一億円のさようなら5

今回は若い頃の描写はほとんどなし。もう出尽くした?波江の兄と鉄平は同級生で、鉄平は波江の初恋の人といういかにもな設定。彼女は二度離婚し、今は小料理屋をやっているとか。行ってみるとなかなかりっぱな店で、女手一つで細々とやってるのだと思ったら・・。従業員は三人で、そのうちの一人、莉緒の作った海苔巻きを食べた鉄平はそのおいしさに驚く。いいものは売れる・・営業マンの血が再燃したのか、自分が出資するから店を出さないかと言い出す。ずいぶん唐突な展開だ。みんな驚くが、莉緒は乗り気だし、波江は引き抜きを快諾する。場所や設備、手続きなどは莉緒の友人達が引き受け、とんとん拍子に話は進む。店名は莉緒の祖母がやっていた”はちまき寿司”。ところが”はちまき寿司”の登録商標は莉緒の母、薫が持ってる。母娘は以前から仲が悪く、莉緒は母親が経営に絡むなら自分はやめると言い出す。もう開店のチラシは配ってあるし、莉緒が祖母から受け継いだ味がキモなのに・・と、鉄平達は困惑する。思い余った鉄平は、200万持って薫に会いにいくが、断られる。あらまあ・・鉄平さんよ、アンタ卓郎の母親とおんなじことしてまっせ。いきなり金じゃなくてまずは話し合いでしょうが。一方富士見メディカルの方は合弁会社設立となる。鉄平の部下後藤は木内にへいこらする上司達を見て、会社が信じられないとつぶやく。そうそうあんな連中信じちゃいけません。鉄平は夏代との離婚を考えている。夏代も仕方ないと思っている。元はと言えば自分が悪いのだ。でも、不貞を疑った鉄平の言葉だけは断じて許せない。うん、でも彼をそこまで追い込んだの誰でしたっけ?手続きを任されることになる兵藤は、最初の頃の冷たい印象はどこへやら二人のことを心配している。鉄平が不当にやめさせられたことに怒り、訴えるべきだと勧めたりする。また、飲み友達がいなくなったのをさびしく思っているようだ。あらまあなかなかいいコじゃないの。夏代は子供達には鉄平が出張に行ってるのだとごまかしている。莉緒と薫の方は結局丸くおさまる。夜・・波江が店の残り物を持って訪れる。彼女も夕食はまだだと言う。おやまあ見え見えですな。頃合を見て鉄平ににじり寄り・・オヨヨどうなるんでしょう。それにしても夏代と波江、後藤と耕平、美穂と美嘉・・皆さんよく似た顔してますな。

一億円のさようなら6

鉄平の危機(←?)は、波江が思いとどまってくれたので回避(ホッ)。”はちまき寿司”開店初日は長い列ができるほどの盛況。夜には波江や板長櫛木が差し入れを持って訪れ、成功を喜び合う。鉄平はすでに一億円に手をつけている。減り始めると早い。退職金はどうしたのかな?夏代は再びパートに出始めたようだ。美嘉は安定期に入る。鉄平の母美奈代の命日が近づいてきている。いつもなら墓参りに行くところだが今年は・・。美嘉は祖父母の位牌がなくなっていることに気づく。しかし夏代はまだ鉄平とのことを話さない。耕平は何とか大学はちゃんと卒業するという方向へ。子供二人のことはひとまず安心。鉄平や夏代の思いは、美奈代のことに。肝臓ガンのステージ4というのは、二人にとっては寝耳に水だった。しかも後でわかるが、手術もできない状態。故郷を離れたくないという美奈代を説得し、東京の病院へ。隣りの患者の咳が気になって眠れず、かと言ってあいているのは高額の特別個室だけ。鉄平もあきらめるしかない。後でわかるが、この時夏代は大金を相続したことを美奈代に打ち明けていた。しかし彼女はそのお金を使うことは断った。一方波江は男にあとをつけられたりするので、見ている我々は木内の手が伸びてきたのかと心配するが、櫛木の妻周子が雇った探偵で。彼女の家は裕福らしく、何もかも面倒見てくれたが、櫛木にはそれが重荷で。つい他の女性に手を出してしまったと。今の周子は、夫が帰ってこないのは波江のせいだと思っている。調べてみると波江は鉄平とも親しいし、二股かけてるのだと思い込む。これには鉄平も波江もびっくり。さて、店は相変わらず繁盛しているが、今のままでは莉緒の負担が大きすぎる。それでアルバイトを雇うことに。兵藤からは夏代の署名捺印ずみの離婚届が来る。鉄平は夏代にわびる長い手紙を書き、自分も署名捺印して送り返す。冷静になって考えてみれば、夏代のことばかり責めるわけにもいかないことに気づいたのだ。そんなある日、波江は偶然金の入ったバッグを見つけてしまう。私なら家のあちこちに分散して隠しておくな。たとえ見つかっても数百万なら退職金だと言い訳できる。

一億円のさようなら7

2003年美奈代が亡くなり、実家は売りに出された。帰るところがなくなってしまったように感じる鉄平だが、夏代の温かさと子供達の存在が支えになった。ある日ひょっこり耕平が店を訪れる。ネットで見つけたらしい。家に戻って夏代や美嘉に話す。こうなるともう夏代も隠してはおけず・・。離婚は美嘉にはショックだったようだ。一方ショッピングセンターのフードコートに店を出さないかという話が来る。鉄平は時期尚早と慎重だが、莉緒達は乗り気。波江はあのお金が気になって仕方がない。給料は気前よく払われているらしいし、銀行の融資も受けてない。思いきって鉄平に聞きに来る。横領でもして逃げてきたのでは・・。鉄平は正直にいきさつを話す。彼は自分は何もしていないのではと感じている。お金だって実際は自分のものではない。ある日美穂から電話がかかってくる。青島はケガは治ったものの、原因不明の頭痛に悩まされている。鉄平は、自分が青島の仮病を不問にふしたことが裏目に出ているのでは・・と気づく。結局青島は同僚の前で真実を告白し、会社をやめる。菅原は数百人の従業員とその家族を守るために鉄平を切ったことを話す。会社を第一に考えたことに後悔はないが、今の富士見メディカルは富士見製薬から見限られ、木内の独裁体制になっているとか。彼の目的は自分の研究に使う資金の捻出。夏代に出資を断られたせいで苦しくなってきているのか。ちなみに不正なリベートを受け取っていたのは川俣。木内はそれを見逃す代わりに鉄平を追い出させた。菅原はそれを知りつつ黙っていたわけだが、その彼もなぜ木内がそこまで鉄平を目の仇にするのか不思議に思っているようだ。2号店に向けて準備が進むが、ショッピングセンター側の意向が納得できない鉄平は、出店を断る。ショックを受けた莉緒は何もしてないくせにと鉄平をなじり、波江は波江で鉄平にとって商売は娯楽などと冷たく言い放つ。莉緒だって二つの店の切り盛りと味を守ることの難しさはわかっているはず。しかし彼女やその仲間は若いだけに波が来ている時に乗らないと・・という考え。失敗したらやり直せばいい、次の波が来るのはいつになるかわからないし、第一来ないかもしれないというわけだ。それにしても・・莉緒は恩知らずだし、波江の冷たさにもびっくりだ。たぶん二人の亭主と別れる時もあんな感じだったんだろうな(←?)。

一億円のさようなら8

いよいよ最終回。結局鉄平は先方との話をまとめ直し、2号店出店となる。最初からきっちり話をつければゴタゴタせずにすんだのに。その後も店は好調で、元本を取り戻し、それ以上の利益も。鉄平は夏代に会って、一億円を返す。最後のデートということで映画を見たり神社にお参りしたり。その二人の姿に若い頃の二人の姿が重なる。鉄平(現在の)がスクリーンを正視できずにいるのが笑える。見ているのはホラー映画か。一億円を返し、精神的に身軽になった鉄平は店を若い者に譲り、故郷の欅野を離れる。結局波江は全然振り向いてもらえなかったことになる。もっとも仮に一緒になったとしても鉄平は早々に追い出されただろうけど。青島からは告白のおかげで頭痛が治ったとメールが来る。最終回なのであっちでもこっちでも後始末だ。富士見メディカルは木内のせいで親会社から見捨てられようとしている。鉄平は契約社員の面接を受け、今の会社は腐っていると断言する。一方夏代の日記を読んだ美嘉は鉄平を呼び出して渡す。プライバシーもへったくれもないな。いくら家族でもこんなことしちゃまずいと思うけど、美嘉からすると非常手段。何しろ鉄平も夏代もお行儀がよすぎてこのままじゃ関係を修復できない。母親の死、加津代の登場、思いがけない遺産、親族から責められ絶望していた時に出会った鉄平。都合の悪いこと・・木内となぜ不倫関係に陥ったかなんてのはスルーされる。見ている者はそこんとこ知りたいと思ってるんですけどぉ。日記を読んだことで鉄平の誤解も解ける。途中兵藤のところで書類にハンコ押した夏代が、その後すっきりした表情で外へ出てくる。私は離婚成立かな?と思ったんだけど、その後の展開見ると、遺産をそっくり株につぎ込んだその手続きとも思える。富士見メディカルの株価は低迷していたはずだから、たくさん買えたのでは?彼女は筆頭株主となり、したがってもう木内の思い通りにはならない。その後美嘉に無事赤ん坊が生まれ、耕平は真面目に大学へ通い、鉄平は再び富士見メディカルで働き始め、ついでに青島も現場復帰。木内を除き、誰も彼もハッピーハッピー。あの~離婚届は?なんてこだわってるのは私だけでしょうか。