ふたりの桃源郷
テレビでよくリタイアして田舎暮らしを始めてなんてのをやっているけど、体が動かなくなったり病気になったらどうするんだろうっていつも思う。余計なお世話と思いつつ、10年後20年後を想像してしまう。このドキュメンタリーは25年にわたって、ある老夫婦とその家族を追ったもの。25年のうち、最初の方はいいけど、後半は見ていてつらくなるだろうなってのは予想がつく。でもまあダンナは興味あるみたいだし、付き合ってやるか。何ヶ月か前にやって、その時はまあいいやと思って行かなかった。でも再上映している。こりゃ見に行けってことなんだろう。お客は私達を含め四人か六人。この映画館は名所の一つでもあるので、観光客も見に寄る。観客かと思ったら観光客だったなんてことも。ファーストシーンは山また山。びっしり木が生えていて・・「蟲師」思い出す。山口県岩国市。戦争を経験すると、何よりも食べるものの確保が大事だとわかる。そのためには自分達で作るのが一番。ずっと山奥にいたわけじゃない。町で暮らしていたこともある。子供のためには稼がないと。でも子供が独立するとまた山奥へ。電気は来てないから発電機、水道はないから山のわき水。畑仕事だけでなくマキなど燃料の確保も必要。やることはいっぱいあるけど、二人でいて幸せ。娘三人は老いていく両親を心配し、面倒を見たいが、自分達の生活もある。それに二人は山にいたいと思ってる。都会はアパートが林立し、車がひっきりなしに行きかう。歩道を歩けば自転車が。空気は悪いし騒音はひどいし危険もいっぱい。山に帰るとホッとする。何年かたつと、病院や老人ホームの場面が出てくる。いろいろ病気が出てくる。家族の方が両親を訪ねてきてくれる。来てくれた時はうれしいけど、帰る時がさびしい。私達夫婦には子供がいないから、子供や孫が来ることもない・・と、ふと思う。うれしさもないけど別れるつらさもない。三女のダンナさんがスシ屋をたたんで田舎へ移る。自分の親には孝行できなかったから・・と、妻の両親に尽くす。その姿にウルウルする。帰っていく娘達の車に向かって直立不動のまま頭を下げるじいちゃんの姿にウルウルする。結局今の日本を作り上げたのは・・これからも支えていくのは、こういう真面目で誠実な人々なのだと思う。