白鯨

白鯨

大昔に一度見たことがあるが、何も覚えていないところをみると、おもしろくなかったのだろう。116分あるらしいから、だいぶカットされていることになる。でも、こういう古いのをやってくれるだけでもありがたい。原作は一度目はちゃんと読んだけど、今回は飛ばしに飛ばした。船が出港した後はとにかくつまらない。おっそろしく長いしゃべり、鯨に関する薀蓄。そもそも私がこれを読んだのはサマセット・モームの「世界の十大小説」に入っていたから。ついでにこっちの方も読み返したが、作者のメルヴィルのことを同性愛者と書いているのが興味深い。語り手イシュメールとクィークェグは、あまりの仲むつまじさにまわりから奇異な目で見られる。イシュメールは深い友情関係だと強調しているが、今日びの読者は額面通りには受け取るまい。映画ではそこらへんどうなのか・・ノーカットで見たわけではないのでわからない。イシュメール役はリチャード・ベースハート、エイハブ船長はグレゴリー・ペック、スターバックがレオ・ゲン、スタッブがハリー・アンドリュース。クィークェグ役フレデリック・レデブールは知らない人。牧師の説教が延々と続くが、このヒゲのオッサンはオーソン・ウェルズらしい。原作を読んでいるので、イシュメールが雇われる時に言われる777番目とか300番目とかの意味はわかる。777番目というのは船のあがり(それがいくらであろうとも)の777分の1が報酬ということ。船の建造には大金がかかる。大株主もいるが、わずかな金額を投資する者もいる。もう船には乗れない年寄り、夫を海でなくした未亡人、孤児。出港時にうつるたくさんの人々・・多くは女性・・はそういう境遇。彼らは船のあがりが頼りだ。エイハブにはあのたくさんの人々への責任がある。それなのに彼は自分の復讐のことしか頭にない。鯨の大群もどうでもいい。モウビー・ディックに戦いを挑み、負け、乗組員も船も沈んでしまう。生き残ったのはイシュメールだけ。船の帰りを待っている人々の失望はいかばかりか。原作だとエイハブには、親子ほども年の違う若い妻と、幼い息子がいるが、映画ではどうなのかな。まあホントはた迷惑なやつ!関係ないけど原作で一番気に入ってるのは、イシュメールとクィークェグが泊まる「鍋屋」の描写。朝昼晩と鍋料理。蛤か鱈のクリームシチュー。読む度に食べたくなっちゃう!