ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ

1929年、世界恐慌の頃のニューヨーク。チャールズ・スクリブナーズ・サンズ社の編集者パーキンズのところへ持ち込まれた、やたら長い小説。どこの出版社からも突き返された小説。書いたのはトーマス・ウルフ。パーキンズによって容赦なく手を入れられ、量を減らされて出された処女長編小説はベストセラーになる。新作として持ち込まれた厖大な量の原稿を二年かけて削り、出した二作目もベストセラー。二人の関係は年月につれて変化し、道が分かれたように思えた時、ウルフに突然の死が訪れる。実際はあれこれあったのだろうが、映画も小説同様編集される。いらないところを削り、わかりやすくし、見ている者が飽きる前に終わらせる。パーキンズがりっぱすぎるとか、内容が退屈と書いている人がいるが、ウルフが隣りにいたのでは、たいていの人はりっぱに見える。二人して非常識やるわけにはいかないから、片方は常識人になる。はめをはずさないから退屈になる。パーキンズ役はコリン・ファース。何となく「英国王のスピーチ」の逆を狙っているような感じ。パーキンズはサポート役。裏方に徹し、辛抱強くウルフとその作品を育てる。ウルフ役はジュード・ロウ。実際のウルフは6フィート6インチもあったそうで、映画に出てくるように冷蔵庫を机代わりにして立って書いていたそうな。パーキンズが常に帽子かぶっているのも史実通りらしい。パーキンズの妻ルイーズがローラ・リニー、ウルフのパトロン、アリーンがニコール・キッドマン。それとフィッツジェラルドの妻ゼルダなど、女性達の苦悩もそれなりに描かれる。特にアリーンは自殺を図ったり、パーキンズに銃を突きつけたり、やることが芝居がかっている。パーキンズが世に送り出したフィッツジェラルドやってるのはガイ・ピアース。ヘミングウェイはドミニク・ウェスト。なかなか豪華な配役だ。フィッツジェラルドやゼルダ、ヘミングウェイは「ミッドナイト・イン・パリ」にも出ていた。あそこでのフィッツジェラルド夫妻は毎晩浮かれ騒いでいたが、ここでのフィッツジェラルドは一行も書けず、ゼルダは精神を病んでいる。世間に見放された後の道は長いぞというフィッツジェラルドの言葉が重い。