ピラミッド(1955)

ピラミッド(1955)

これを見るのは何十年ぶりだろう。「クレオパトラ」の方はよくやるけど、こっちは全然。DVDが出たので早速ゲット。今見たらたぶんあんまりおもしろくはないだろう。印象に残っているのはラストだけで、あとは全然覚えていない。・・エジプトのファラオは今回も戦に勝ち、多くの財宝と奴隷を持ち帰る。ファラオ役はジャック・ホーキンス。こういう衣装だと腕の細さが目につく。王にしては貧弱な体格に見えてしまう。戦死者は手厚く葬られるが、逃亡者などはワニに食わせる。妻ナイラは美しいが、王が戦で留守がちなため、まだ跡継ぎはなし。来世を信じる王は、どんな賊も寄せつけない墓を作りたい。奴隷の中にヴァシュターという、そっち方面にすぐれたのがいる。墓が完成したあかつきには仲間を釈放するという条件で、墓の設計を承知させる。秘密を守るため、ヴァシュターの命はないが、それは覚悟している。彼は他のピラミッドのように迷路を作るとか、ニセの墓室を作ることはしない。ふんだんにある砂を使い、棺も通路も石でふさぐ仕かけを考案する。町や村から人々が労役に駆り出される。初めは喜びのであふれていたが、そのうち歌は消え、代わりに鞭の音が響く。何年たっても工事は終わらず、石も手に入りにくくなる。上に行くほど作業も難しくなる。全然関係ないけど、昔社会の時間に先生がオベリスクとピラミッドをどうやって作ったかという宿題を出したことがあった。正解した者にはチョコレートをやると言って。・・話を戻して、王は各地域から貢物を出させるが、サキブロスだけは国が貧しいため王女ネリファー(ジョーン・コリンズ)を送り込む。気位が高く、美しい彼女はそのうち第二王妃に。この15年の間に、王にはゼーニンという王子ができた。幼かったヴァシュターの息子センタ(ディノ・マーティン)は成長し、視力の弱った父の助手を務める。墓が完成したら自分も殺されるだろうが、仲間を自由にするためだ。内部の仕事をする時は、秘密を守るため目隠しをして出入りする。時には事故が起き、センタが王の命を救ったことも。ほうびとして、粗相をして鞭打たれそうになったネリファーの奴隷キエラを手に入れる。ネリファーは財宝が欲しくてたまらない。王は年齢と共に財宝への執着心が人一倍強くなっているが、墓へ持っていくなんてばかばかしい。

ピラミッド2

財宝の見張りをする隊長(シドニー・チャップリン)をそそのかし、ナイラ殺しを計画する。このシドニーはチャップリンの息子。さてネリファーはゼーニンに笛を教えるが、実はこの音色によってコブラが寄ってくる。ヘビを見たナイラは自分の身を投げ出し、息子を救う。何というあっぱれな勇気のある行為。もちろんそれがネリファーの目的だ。この後王を殺せば自分が幼い王子の摂政として好き勝手なことができる。王はネリファーの奴隷に襲われるが命は取り止める。しかし隊長と相討ちになって死んでしまう。王の死はまだ先のことだと思っていたヴァシュター達は、その時が来たと覚悟する。センタとキエラは愛し合うようになっていたので悲しむ。確かな証拠はないものの、大僧正のヘーマーはナイラや王の死にネリファーが関わっていると疑っている。財宝への執着が露骨だし。彼は彼の一存でヴァシュター親子の命を助け、約束通り仲間も釈放する。王の葬儀・・ネリファーは墓の仕かけのことなど何も知らず、とうとう自分が王に・・と、ワクワクしているが・・。この映画はたくさんのエキストラを使い、大がかりな工事の様子を描く。CGなんてないから、人、人、人の洪水には圧倒させられる。川には舟もたくさん浮かんでいる。石は重いから一個しか載せられない。その石は全部で300万個必要らしい。そんな壮大な工事、人の洪水、かぶさる音楽が続き、見ていておなかいっぱいになる。意外だったのはこの映画は当時ヒットせず、評価も低かったこと。ピラミッドの中に残される人々のことを思うと、後味が悪かったせいかな。私でさえネリファーは当然の報いを受けるのだとは言え、気の毒に思えたし。また、ゼーニンの後見人として国を守っていくべきヘーマーが殉死するのは納得いかない気がした。この国がどうなるかということより、来世でも王に仕える・・そのことしか考えてないようで。まあ見ていて救いなのは、ヴァシュター達の帰還。彼らには永遠の命も財宝も関係ない。戻ったら国を再建し、普通に暮らしていくのだろう。というわけで、クライマックスは前に見た時ほどインパクトなかったけど・・事前にからくりを見せてしまっているから・・よくできている映画。