天地創造
これはだいぶ前テレビで見たことがある。ピーター・オトゥールのファンだったので、パンフレットも手に入れていた。中古のせいか、開くとペリペリ音がして、そのまま破けてしまう。旧約聖書中のよく知られたエピソード・・アダムとイヴ、カインとアベル、ノアの箱舟、バベルの塔、ソドムとゴモラなどが続く。CGなんてないから、箱舟とかバベルの塔とかそれなりに作ってあって、迫力がある。人の数もすごい。アダムとイヴの部分は当然のことながら全裸。でも何も見えませんよ暗くて。イヴ役ウラ・ベルグリットは、パンフの紹介とは裏腹にたぶん有名になることもなく終わったのかな。アダム役マイケル・パークスは2017年に亡くなったのね。「北海ハイジャック」とか「ストーリービル」で存在感見せていたけど、一般的には「キル・ビル」などで知られているのかな。若い頃は・・この映画でもわかるけど・・金髪で孤独の影を宿していてステキだったのよ。テレビの「さすらいのライダー」とか(見たことないけど)。カインがリチャード・ハリスで、アベルがフランコ・ネロ。どっちも気づかんかった。気づく前に終わっちゃう。ドラマチックな題材も、あらら~という感じで通り過ぎていく。次のノアの箱舟は長い。ノアがジョン・ヒューストンで、彼はナレーションと神の声もやっていて、しかも監督なのだそうな。ネットで調べると、大味とか書かれていて、要するにあんまり出来はよくないことになっている。ただし黛敏郎氏の音楽だけはいいと、みんな判で押したように書いている。最初音楽はストラビンスキーがやることになっていたとか。は~この頃はまだ生きていたのか。さて、人々にバカにされながらも箱舟を作るノアとその家族。でき上がると、今度は様々な動物をひとつがいずつ入れる。この部分は長いが、見ていて楽しい。トラやライオンを、エサであるシマウマとかそういうのと一緒に、どうやって撮影したのかいなと不思議に思いながら見る。洪水のシーンは、箱舟がミニチュアと丸わかりなので、あまり・・。40日間雨が降り続けるけど、その後も大変だったのね。雨がやんで水が引くまでが長くて。漂着したアララト山で、今度は動物達を外へ出すが、ここもまた長い。
天地創造2
やっと終わると次はバベルの塔。正しい人であると神に選ばれたノアだけど、子孫はまたまた堕落。ニムロデ王役はスティーブン・ボイド。でも・・あら?これだけ?箱舟に劣らず金や手間がかかったはずだが、惜しげもなくスルー。気になったのは、王や取り巻きが頂上目指して上る、その通路のそこここに人が倒れていること。過酷な労働に疲れ果てて倒れているのか。それとも王達が歩くので、ひれ伏しているのかな。最後はアブラハムに課される試練。いやホント、神様ってムチャな要求するんだなと改めて思った次第。ここまででもう聖書のかなりのところまで来ているのかと勝手に思い込んでいたけど、全然違うのね。まだほんの最初の部分。これを手始めに、ディノ・デ・ラウレンティスは次も作るつもりだったけど、続かなかったとか書いてる人もいて。この映画一本だけでも相当な資金、期間がかかったけど、思ったほど儲からなかった上、評価も今いちだったということなのかね。でもまあ作ってくれておいてよかった。この時代だからできた顔ぶれってのがある。いや本音を言うとオトゥール、それもこの時のオトゥールを見ることができる!ってのが私にとってはありがたいんですけどね。それはひとまず置いといて、アブラハムがジョージ・C・スコットで、妻サラがエヴァ・ガードナー。ガードナーはあんまり・・特に若い頃の作品は全然見たことがない。見たのは「イグアナの夜」と、「北京の55日」。後者はちゃんと見たかどうか。「月曜ロードショー」だと半分しか見てない。70年代に入ると「スクリーン」とか買い始めるわけだが、「大地震」の紹介で出てくる彼女はもうオバサンで。この映画の頃は40代前半で、まだまだ美しい。不妊に悩む妻の感情を目の演技一つで表現。一方スコットは、まるで舞台でも見てるかのような力強くもオーバーな演技。アブラハムの弟ロトがいるのがソドム。ソドムとゴモラと言えば有名で、こちらもあらぬ期待をしてしまうが、あんまり大したこともなく。まぶたに目を描いてる女性がいて、目を開けたり閉じたりして、どちらも薄気味悪いのだが、そのシーンを見て、ああそう言えばこんなシーンあったなと、遠い昔の記憶が蘇った。しかしその前にオトゥールだ。彼の役は三人の神の使い・・天使なのだが、昔見た時は何がどうなってるのか意味がわからなかった。
天地創造3
オトゥールがしゃべる時は他の二人の顔は見えない。三人ともフードつきの服を着ていて、照明が当たったりして顔が見えるのは常に一人だけ。オトゥールだけ。他の二人はセリフもなけりゃ顔もうつらないわけで、役者として残念だったことだろう。三人のうち二人はヒゲを生やしている。そのヒゲもよく見りゃ生やし方が違う。ヒゲの一人は「ベケット」風で、ヒゲなしの一人は若々しく「アラビアのロレンス」風。まあこれを見られただけでも、3時間近くの退屈さも吹っ飛ぶと。アブラハムの前に三人して現われ、これからソドムへ行くと話す。悪い噂の通りなら滅ぼすと。聖書で驚くのは、〇〇が✕✕の子孫とかそういうのがずらずらッと書かれていること。こちとらには・・いや、あちとらにもそちとらにもそんなことはどうでもいいのだが、一部の人にとっては非常に大事なことなのかな。その反面、詳しく書かれているだろうなと思ってたものが、意外と簡単に書かれているだけだったりして。さて、ソドムへ来たのは二人である。もう一人はどこへ行っちゃったのかな。入口で待っていたのがロト。彼が腐敗した町で何をしていたのかは不明。一生に一度くらいは聖書を通読すりゃいいんだよな。そうすりゃわかってくることもいっぱい・・。見慣れない二人は当然町の人の目を引く。ロトは客人に手を出さないよう頼む。その代わり自分の娘二人は処女だけど好きにしていいと。え~信じられない。娘二人の人権はどうなるの?しかし天使の一人・・ヒゲなしの若い方の眼力で人々は目がくらみ、その間に一家は脱出する。ここでのオトゥールはホントにステキ。彼を起用してくれてありがとう!目がくらんだのは人々だけじゃありません、私もです!!町の崩壊は見せない。ぼわ~んと爆発したらしいってだけで。ロトの妻は禁じられていたのに振り返って見てしまい、塩の柱になる。妻役はエレオノラ・ロッシ=ドラゴ。この後オトゥールはチラッと出るだけ。最後のイサクの燔祭はねえ・・。せっかく授かった大事な男の子を生け贄にせよというあんまりな神の要求。いよいよという時にタンマがかかり、代わりに羊が・・。稲や麦じゃだめなのか、生き物を殺して血を流させるのでなきゃだめなのかと気分はモヤモヤのまま終わる。次は「偉大な生涯の物語」やってくれないかな。マッカラム出てるし。