不能犯

不能犯

原作があったら読みたいなと思ったけど、漫画がもとらしい。なるほどそう言えば文章より絵の方がしっくり来るな。まあ見ていてもアレなんですわ。のっけから殺す殺す死ね死ねと穏やかじゃない。一人で見ているならいいけど、そばに誰かいると困るんですわ。いったいどういう映画見てるんだ?と思われてしまう。だからうんと音量下げて。こういう時字幕があるのはホント助かる。”電話ボックスの男”という都市伝説があって、憎い相手を殺してくれる。無料だが、動機は純粋でなければならない。濁っていると、相手は死ぬけど自分にもね返って来てしまう。人間は愚かで弱いから、たいていの場合依頼した方も死んでしまう。宇相吹は自分が直接手を下すわけじゃない。相手に暗示をかけるだけ。標的は刺されたとか毒を飲まされたとか思い込むが、調べても毒は発見されない。死因は心筋梗塞や自殺となる。現場で目撃されているのが黒いスーツの男。こいつが犯人に違いないけど、証拠がなく、したがって逮捕できない。いくつかのエピソードが続くが、日本映画らしくちまちまとした感じ。でもそこがいい。CG使ってド派手に・・なんていうのはハリウッド映画に任せておけばいい。松坂桃李氏の宇相吹は顔色が悪く、髪がやや乱れ、全体的にうっそりとした感じ。うっそりと言うと眠狂四郎だけど・・って何のこっちゃ。多くの場合無表情で、たまにニヤリと邪悪な微笑浮かべる。暗示をかける時は目が赤くなるが、こんなに目が赤くなるのが似合う人もいないんじゃないかってくらい映える。一瞬孤独さを感じさせる時もあって、悪魔なのか何かの念の塊なのか知らんけど、彼もちっとも幸せじゃないのだなあと思えたり。対する熱血刑事多田は沢尻エリカさん。見るのは初めてかな?少し年上の刑事夜目が矢田亜希子さん。「クロスファイア」の人だな。多田は宇相吹の暗示が効かない珍しいタイプ。ラストは宇相吹には別の土地へ去って欲しかったな。だって今のままじゃ死人が出すぎで、収拾がつかなくなってるでしょ。自分の励ましで更生したと信じていた青年に多田が裏切られるところは「脳男」と同じだな。こっちのタケル(間宮祥太朗氏)は裏切られたと知った時の多田の顔を見るのが楽しみで芝居を続ける。このいじけ具合がすばらしい。でも多田は人を信じることはやめない。こういうことって難しくて、どれが正しいなんてない。だから無理に結論出すことない。フニャッとした結末でもいい。