ラサへの歩き方~祈りの2400km

ラサへの歩き方~祈りの2400km

この館へ来るのは今年三回目だ。少しは貢献できてるかな。お客は私達夫婦を入れて五人くらいか。これを見る気になったのは、我々とは少し違う考え方をする人達に興味を覚えたからだ。私だってお寺や神社に行くが、2400キロも、しかも五体投地で一年かけて行くなんて想像もつかない。しかもチベット自治区だから寒いし風も強い。しかも子供や妊婦まで加わるのだ。ますます信じられん。しかも・・彼らにとってはそういうことをするのが・・巡礼が・・人生最大の望みらしい。五体投地をする一行の脇を、トラックがビュンビュン通る。昔は道も整備されていなくて大変だったろうけど、交通事故の心配はなかったと思う。今はいつひかれるか・・危険がいっぱいだ。スピードをゆるめてくれる気配ゼロ。道が冠水していても五体投地で進む。途中で車と衝突してトラクターが壊れてしまった。仕方がないから荷車の部分だけ引っ張る。ある程度行くと戻って、歩いた分だけまた五体投地。ずるはできないし、しない。出かけた時は11人。誰が誰だか最後までよくわからない。区別がつくのは子供と最年長の叔父さんだけ。途中で妊婦が産気づき、赤ん坊を産む。臨月までやっていたのか・・信じられん。出産後すぐまた五体投地・・ますます信じられん。やっとこさラサへ着く。巡礼中に生まれたなんてめでたいと坊さんが祝福してくれる。さらにカイラス山を目指すが、途中で叔父さんは死んでしまう。でも巡礼の途中で死ねたのだから幸せだ。子供や妊婦や年寄りを行かせるなんて非常識な・・とは彼らは思わないようだ。赤ん坊が生まれ、老人は死ぬ。冬が来て春が来てそのうちまた冬になる。果てしなくくり返される五体投地。この映画そのものが輪廻転生を表わしているようだ。ちょっと気になったのは時々画面右下に出る字幕。起点から〇〇キロとか出るけど、起点ってどこよ。出発した村からかなとも思ったが3000キロ以上の数字になってるのが腑に落ちない。ホームページには地図が出ていて、それを見るとラサは中間くらいだ。たぶんあの後はもっと過酷な状況になるのでは?うつされる風景は本当にすごくて圧倒される。しかも雨や雪、強風。しかも・・巡礼は他人の幸せを祈ってやるのだ。次に自分。いやはやそういう考え方もあるのだ・・と言うかできるのだ人間には。てっきりノンフィクションだと思っていたらフィクションらしい。でも、すごい映画。