配達されない三通の手紙

配達されない三通の手紙

これはクイーンの「災厄の町」がもとらしい。向こうが横溝ならこっちはクイーンでブーム起こしてやれとでも思ったのかな。舞台は山口県の萩。ちょっとした観光気分も味わえる(たぶん)。アメリカからやってきたのがボブ(蟇目良氏)。唐沢家の当主光政(佐分利信氏)にとっては甥にあたる。このボブ君、「○○でございます」など、やたらていねいな言葉遣いで、周囲の笑いを誘うが、考えてみりゃ彼の母親の世代は・・たぶんお嬢様育ちだろうし・・普段からこういう言葉遣いしてるんだろう。男の子のボブ君もこれが普通の日本語と、疑いもせず覚えたんだろう。唐沢家の次女紀子(栗原小巻さん)は、結婚式の直前花婿の敏行(片岡孝夫氏)がいなくなり、三年たった今も立ち直れずふさぎ込んでいる。ところがある日その敏行が戻ってきた。光政はもちろん怒るが、紀子の決心は固く、二人は結婚。敏行は光政の銀行で働き、紀子には笑顔が戻り、万事うまくいくと思われたが、敏行の妹智子(松坂慶子さん)の出現で雲行きが怪しくなる。おまけに毒物学の本にはさまれた敏行自筆の三通の手紙が見つかるが、それには妻の具合が悪くなり、ついには死んだと書いてあり・・。まあ原作を知らなくたって智子が敏行の愛人なのは想像つく。次々に殺人が起きるわけでも、血みどろなシーンが出てくるわけでもなく、全体的にお行儀がいい。松坂さんはヌードになったり(後ろ姿だけど)大奮闘だが、横溝映画のようなおどろおどろしさはゼロ。キャストは豪華なので別に退屈はしないが、物足りないのは確か。佐分利氏や、光政の妻役で音羽信子さんが出ているので、犯人の変更もありかな?と思ったりしたが、何もなかったな。智子の死に方もあっさりしすぎで拍子抜け。いくらがんばったって敏行の心は取り戻せないのだから、彼か紀子に自分を殺させよう・・そうすりゃ片方は刑務所行きで幸せな結婚生活はパーになる、幸せになんかしてやるもんかと、それくらい悪あがきして欲しかった。登場キャラの中では、光政に圧力かけられても信を曲げない検事峰岸(渡瀬恒彦氏)がよかった。長女麗子が小川眞由美さん、三女恵子が神崎愛さん、敏行の本当の妹美穂子が竹下景子さん。