京極堂シリーズ

姑獲鳥の夏

早速図書館へ行って原作を借りてきて読んだので、流れはわかる。先に「魍魎の匣」を見たので、あっちでは説明されてなかったことがこっちでは説明されていて、それは一作目だから当然なんだけど。昭和27年の設定で、坂を上ったところにある古本屋が京極堂。お客なんか誰も来ないような場所だが、店主中禅寺は気にしてない。あっち(「魍魎の匣」)ではあまり出てこなかったと思うけど、こっち(「姑獲鳥の夏」)では存分に見せてくれる。何が・・って店内の様子ですよ。本、本、本。土蔵が店になっていて、家とはつながっていて。本は和綴じのが多くて・・神田の古本屋街にもこういう店がある(私は入らないけど)。たいていの店は床に未整理の古本がひもで縛ったまま置いてあったりして邪魔なんだけど・・歩きにくいしぶつかるし売ってる本が見えないし・・京極堂はきちんと、すっきりとしている。おまけに中禅寺は猫を飼っていて、これがまたニャーニャーとよく鳴くんですわ、かわい~!本と猫という私の大好物が出てくるのでもうそれだけでオッケーなんだけど、おまけのおまけで陰陽師ですよ。もうストーリーなんかどうでも・・よくないか。関口が聞き込んできたのがもう20ヶ月も妊娠している女性の噂。でも中禅寺は言う。「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」。私には関口君がワトソン君に聞こえるけど。雑司ヶ谷にある久遠寺産科医院。下の娘の梗子がいっこうに出産する気配なし。夫牧朗は中禅寺や関口の一期上で、1年半前に失踪。梗子の姉涼子が探偵榎木津に調査を依頼しに来たのはそんな時。あっちを見て私は榎木津に超能力があるのかと思ったけど、こっちで説明されてた。そう言えばあっちは照明弾のシーンあったな。ただ榎木津は無責任なタイプなので、偶然居合わせた関口が涼子の話を聞くはめに。後で関口、榎木津、敦子の三人が医院へ出向き、代表して榎木津が梗子の寝ている部屋へ。この時点でもう終わりなんだけど、榎木津が変人のせいでその後も続く。おまけに次に入った関口には目の前にあるものが見えない。涼子にも梗子にも見えていない。心が脳が現実を拒否する。関口はメガネをかけているけど、レンズにはたいてい光が反射していて彼の目は見えない。見てるのに見えていないってことを表わしているのか。

姑獲鳥の夏2

この関口というキャラは原作を読んでいてもホントじれったくなる。頭の回転が鈍い。あっちではやや脇に回っている印象があったけど、こっちではキーマン。あっちの、何のためにいるのかわからないような椎名桔平氏の印象があるもんで、こっちの永瀬正敏氏のうじうじぶりがいっそう目立つ。でも原作がそうなんだよな。涼子、梗子役は原田知世さん。ネットではミスキャストなんて書かれてたりするけど、まあいつもの原田さんで。先に原作読んだからとうとう原田さんもこんな汚れ役するのかと期待(心配?)したけど、全然そんなこともなく・・。第一梗子の存在が軽すぎてどこかへ行っちゃってる。元々20ヶ月も妊娠しているという興味で引っ張っているわけでしょ?そんなに長いのはなぜか、おなかには何が入っているのか、これからどうなるのか。でも、愛欲の場面も含めてたいていは絵ですましちゃう。そう言えばおなかが裂けた後の梗子はどうなったんだ?映画では何も触れていなかったような・・。火ボーボーもいいけど、そっちの腹始末・・いや、後始末も頼んまっせ。と言うか、原作では火事はなし。火でも燃やさなきゃクライマックスにならんとか?牧朗役は恵俊彰氏、涼子達の母菊乃がいしだあゆみさん。他に原知佐子さん、紙芝居屋が三谷昇氏で、このお二人は故人か。傷病兵(水木しげる)役は京極夏彦氏。中禅寺の妻千鶴子が清水美砂さん、関口の妻雪絵が篠原涼子さん。中禅寺はともかく関口のような人の奥さんは大変だと思うよ。二作を比べるとこっちの方が出来がいいように思える。それは多分に本と猫のせいもあるけど。でもそれ以上に中禅寺役堤真一氏が魅力的。今から10数年前だからみんな若々しい。やせてるし髪は黒いし肌だって。そんな中でも堤氏にはどこか少年ぽい、女性的な部分が感じられる。古本屋の店主であり、神主であり、陰陽師でもある。古くて日本的で雑然としていて、それでいて知的科学的合理的。「陰陽師」の一作目で野村萬斎氏に感じたものが彼にもある。ところが二作目になると(「陰陽師2」もそうだったけど)それが薄れてしまう。数年しかたっていないのにね。

魍魎の匣

京極夏彦氏の作品はまだ読んだことがないが、非常に長い小説を書く人だという印象はある。いつだったかテレビで書斎を紹介していて。でもその前のコレクション紹介も長かったな。DVDがいっぱいあるのにも驚いた。で、映画だけど何の前知識もなく見ているせいか、何が何やらという感じ。原作大部だからある程度は省略・整理されているのだろうが、何でもかんでも詰め込んでいて、はみ出していて、後始末されず突っ走っていて、要するにめまぐるしい。おまけに”その10時間前”とか時間が戻ったりするので、ますますわけがわからなくなる。第一・・主人公は誰?京極堂こと中禅寺が主人公らしいが、出てくるのはずっと後。最初は榎木津という人が主人公だと・・。演じているの阿部寛氏だし、超能力持ってるみたいだし。人を見ただけでいろんなことがわかるようだが、そういう描写は最初の方だけで、その後は発揮されてなかったような。中禅寺役は堤真一氏。モフモフの人だな。あのナレーションを聞いた時はサラメシの中井貴一氏の時と同じくらいびっくりしたな。二人とも二枚目路線だと思っていたから。関口が椎名桔平氏で、もちろん他の映画のように途中で実は・・という裏のあるキャラだと思ったけど違いました。表だけでした(←?)。他に刑事の木場(宮迫博之氏)と青木(堀部圭亮氏)。この五人が幼なじみとか学校が一緒とかの設定。これに中禅寺の妹敦子(田中麗奈さん)に和寅とか鳥口とかがくっつくので、人員整理したくなる。事件の方は美少女バラバラ事件。頭部が発見されていなくても美少女。怪しげな宗教団体。美人女優美波(黒木瞳さん)の娘加子の失踪。美波の女優復帰を阻む相続問題。箱に取りつかれた男久保(宮藤官九郎氏)。そのうち出てくるマッドサイエンティスト美馬坂(柄本明氏)。盛りだくさんと言うか、しっちゃかめっちゃかと言うか。まとめようにも文章が浮かんでこない。ただ、阿部・堤・椎名三氏の共演は豪華だと思う。黒木さんは女剣士になったり楊貴妃になったり。手足を斬られた美少女とか、頭部だけ、それも半分は機械になってる・・なんてのは原作者の好みなんだろうか。まあそのうち図書館で捜して読んでみよう。