影なき男

影なき男

ニックとノラのコンビ一作目。六作目まで作られたのは、この作品の出来がよかったからか。ワイナントという気難しい研究者がいて、どこへ何しに行くのかも告げず町を出るという。娘のドロシーは近くトムと結婚するつもり。ワイナントはジュリアと再婚しているが、彼女が債権を持ち出したのを怒る。おまけに彼女はマレリという男と浮気しているようで。ワイナントの元妻でドロシーの母でもあるミミは、年下のクリスと再婚しているが、金を貢ぐのに忙しい。その後ワイナントは行方がわからなくなり、式が近づいたドロシーは心配する。ニックはドロシーと知り合いで、居どころ捜しを頼まれるが断る。彼は探偵をやめ、ノラの亡父の事業を引き継いだらしい。その後ジュリアが殺される。第一発見者のミミは、ジュリアがワイナントの鎖を握っていたため、彼が犯人だと思い込む。ワイナントは連絡してきて生きてるとわかるが、姿は見せないので、たぶんもう死んでる。そのうちジュリアを追い回していたナンハイムが殺される。彼はジュリア殺しの犯人をゆすっていたらしい。次にニックはワイナントの研究所を調べ、死体が埋められているのを見つける。ワイナントを脅迫していたローズブリーンだとなって、ワイナントはジュリア、ナンハイム、ローズブリーンの三人を殺して逃亡中ということに。ドロシーは悲観して結婚をやめると言い出し、トムの慰めも聞かない。ニックは埋められていたのがワイナントで、犯人は別にいると確信している。容疑者を全員招き、そこで犯人捜しをする。クリスマスのパーティには彼の友人達が集まるが、どうも探偵時代彼につかまった連中らしい。彼のことを恨んでいる者は一人もおらず、そこはいかにもニックらしい。謎解きの場に連中が給仕として再登場するのもいい。男も女も似ているのが多く、誰が誰やらさっぱりわからないが、全員集まったところでやっと顔と名前が一致する。ドロシーが別の男と町を出ようとしていたり、クリスに妻がいるのがわかったりとかサプライズも。ニックがモレリのナイフの持ち方を注意するのが笑える。ワイナントとジュリアの不和の原因を聞いた新聞記者が、「新聞に書ける内容じゃない」とか「大衆紙じゃあるまいし」と言うのが印象的。一般紙と大衆紙との間には線引きがあったようで。

第三の影

三作目。ニックとノラ、赤ん坊のニッキー、それに犬のアスターのチャールズ一家は、ホテル・ノーサンプトンに着く。ここはニューヨークか。トランクの扱いがおっそろしく乱暴なのが印象的。何か壊れていたけど気にするふうもなし。ホテルのボーイ、クリープスは例によってニックのせいで刑務所送りになった男だが、全然恨んでない。自分より頭がいいからと恨む気になれないらしい。着いたばかりだと言うのに、マクフェイ大佐から電話が来る。彼はロングアイランドに住んでいて、ノラの遺産の管理をしているらしい。仕方なくニック達はマクフェイのところへ。子守りのドロシーも一緒。マクフェイは命を狙われていると気が立っている。屋敷には養女のロイスとその婚約者ダドリー、秘書のコールマン、メイドのべラムなどがいる。マクフェイは出所したチャーチという男に脅されている。罪をかぶらされたことを恨んでいるらしい。困ったことに、見ていても何が何だかさっぱりわからない。マクフェイはすぐ怒り出すクソジジイ。命を狙われているのだから、イライラするのもわかるけど。そのうち彼は殺され、チャーチが指名手配される。ダドリーが撃たれて死ぬのよくわからない。ロイスは父親、婚約者、それに愛犬も殺されショックの連続。おまけにべラムが実は自分が母親だと唐突に告白したりする。数百万ドルの遺産はロイスが相続する。ダドリーと結婚するなら財産はやらないとマクフェイは言っていたけど、二人とも死んじゃった。何だかよくわからないが、そのうちリンダという女がチャーチと親しかったとなる。リンダのアパートへ行くが彼女は不在。大家はニックをリンダの部屋へ入れるなどプライバシーもへったくれもなし。見ている者は、このリンダがドロシーなのでは?と思う。彼女は事件が起きると姿を消し、ギルド警部が調べると前科があるとわかったし。でも結局彼女は無関係。見る者を引っかけるためのキャラ。そのうちチャーチも殺され、ニックが謎解きをして真犯人を名指しするが、すみませ~ん、何が何だかさっぱりわかりましぇ~ん!ドロシー役は「呪いの家」で見たばかりのルース・ハッセイ、チャーチの部下ダムダムは「レオパルドマン 豹男」のチャーリーだ。

風車の秘密

ニック(ウィリアム・パウエル)は妻ノラ(マーナ・ロイ)を連れて故郷のシカモア・スプリングスへ。父親は念願の病院建設計画が動き始めたところ。銀行家ロンソンが後押ししてくれている。父親はニックが警官だと思っているようで。ノラは事件が起きてニックが解決すれば、探偵という職業も見直してくれるのではと思っている。ここは一見事件など起こりそうにない町なのだが。まわりは彼が捜査に来たのだと思っている。そうなると後ろ暗いところのある連中は心配になる。ピーターという青年が撃たれて死ぬ。彼が描いた風車の絵を、ドレイク夫妻が購入するはずだったが、ノラが買ってしまったことからややこしいことに。まあとにかく次から次へといろんな人が出てくるので、誰が誰やらさっぱりわからない。ロンソンの娘がローラベルで、そのボーイフレンドがトム。トムの兄で検視医なのがブルース。中に一人見覚えのあるのがいる。「3階の見知らぬ男」に出ていたチャールズ・ハルトンだ。絵はエックス線を通すと下にプロペラの設計図が描かれていることがわかる。ピーターは工員として働きながらも、悪事に加担していたらしい。ニックは休暇で来たと言っていたけど、結局はこの事件調べるために来たのかな。印象的だったのはノラの扱い。終盤、関係者は一堂に集められる。ニックが現われるまでの間、ノラがもう事件は解決したと吹きまくるが、彼女は何も知らないと思う。彼女が知っているのはニックが真相をつかんだということだけ。彼女はニックにヒントを与えることもない。ニックの部下か何かのブローガンを犯人と疑ってつけ回すなど、トンチンカンなことをする。絵を買ったの偶然で、もちろんニックは何の興味も示さない(ピーターが描いたとは知らないから)。また、ノラはそんなニックの態度に怒って、絵は焼いてしまうつもりだった。ニックの母親がホテルのバザーに出したのはこれまた偶然で。謎解き場面でのニックは理路整然と説明し、名探偵ぶりを見せるが、女であるノラには何の知性も期待されていないようだ。それにしても子供が誤飲したという呼び出しを無視する父親には呆れた。あんたそれでも医者かよ。