心の旅路
原作は一度読んだが、だいぶ昔。それでこれを機会に読み返した。映画を見るのは初めて。まあ・・何ですな、小説なら目の前にいる秘書が実は自分の奥さんだっていうのもスルーできる。私もこれを読んだ時には気に止めなかった。でも映画だとそうはいかない。秘書イコール奥さんってバレバレ。まあ順番に書いていくと、第一次世界大戦も終わりに近づいた頃、精神病院に記憶を失った軍人(ロナルド・コールマン)が収容されていた。名前がわからないのでスミスと呼ばれている。もしや息子ではと老夫婦が面会に来るが違っていて、双方失望する。ウ~ム、その前に写真で確認できるのでは?出征時必ず写真とるでしょ。・・霧の中、スミスは散歩に出るが、そこで起きたのが休戦騒ぎ。そうか、終戦ではなく休戦なのか。門番まで持ち場を離れていたので、スミスは外へ出てしまう。近くに工場があって、工員達も大騒ぎ。スミスは近くのタバコ店に入るが、店主の老婆(ウナ・オコナー)に怪しまれてしまう。ボーッとしているスミスを助けてくれたのがポーラ(グリア・ガースン)。彼女は劇場でやってるショーの主役。原作では端役だが、映画はそうもいかない。超ミニ姿で歌い踊るシーンが出てくる。原作にも映画にもインフルエンザという言葉が出てくる。そうだ、この頃猛威をふるっていたんだっけ。原作と違い、映画はわりとうわっつらをなでるような感じで推移する。ポーラに比重がかかっている。コールマンは二枚目の紳士役で知られるが、この映画の頃は50を過ぎていて、いささかくたびれた感じ。原作では戦争で失っていた記憶を取り戻した時点で26歳くらいである。だからポーラとの結婚の記憶を失い、我が家へ帰って家族と会い、15歳の姪(血はつながっていない)キティ(スーザン・ピータース)に惚れられても不思議じゃない。映画だと何でこんなオジンにポーッとなるかよ・・となる。老けてヒゲまでしおたれて見える。その分ガースンが生き生きしてるけど。特に前半。ポーラは登場した時から主導権を握り、スミスを引きずり回す。彼の逃亡を助け、結婚し、男児をもうける。スミスは物書きで生計を立てる。仕事の件でリバプールへ”一人で”行くことになるが、これが運命の分かれ道。産後のポーラは一緒に行けない。
心の旅路2
事故で頭を打ったスミスは、自分がチャールズという名前であることを思い出すが、代わりにここ三年間の記憶を失う。実家へ戻ってみると父親が死んだところ。家族はこんな時・・遺言公開時に現われるなんてと怪しむが、本人に間違いない。家業についたチャールズに、美しく成長したキティが猛アタック。彼も結婚を考えるようになる。途中ポーラは夫が生死不明のまま七年たったということで婚姻無効届を出すが、このままチャールズがキティと結婚すると、知らぬこととは言え重婚になるからかな。それとも自分がまた彼と結婚する時のことを考えてかな。原作にはこの行動はなし。と言うか、秘書の時のポーラはほとんど出てこない。彼女はチャールズが自分のことを忘れてしまっているのを、悲しく苦しく思うが、口には出さない。息子を失い、秘書になるための勉強をし、何とかチャールズのもとで働けるまでになった。見ている者は辛抱強い、奥ゆかしいと感心するのだろうか。たいていの人は、もう一度チャールズの頭ポカリと殴れよ・・とじれったく思うのでは?あと、記憶を失っていた三年の間の手がかりとして家の鍵が出てくるが、スミスは結婚指輪はしてなかったのかな。キティは何かを感じ取って結婚を直前に解消。チャールズのもとを去る。ピータースはガースンより若いだけに美しさが光り輝いている。原作だとキティは別の人と結婚し、マラリアにかかって若死にしてしまう。演じているピータースも、映画の10年後31歳で病死。もったいないね。キティがチャールズを熱っぽい目で見つめるシーンがあるけど、気のせいか視線がビミョーにはずれている気がする。うつし方のせいだろうけど、視線をはずしたくなるのはわかる。若いハンサムならともかくしょぼくれたオジンだもんねえ。これは原作も映画も大ヒットしたらしい。普通すれ違いと言うと二人がなかなか会えなくてヤキモキさせるけど、こっちは目の前にいるのに、結婚までしているのに思い出してもらえないという・・。そう、ポーラは再びチャールズと結婚したのだ。それなのに・・。まあ今なら黙ってるなんてバッカじゃないの・・と思うんだろうけど。それこそ引きずってでもあの家に連れていって、家の鍵が合うことを見せると思うけどね。