犯罪心理捜査官
これを借りたのはロバート・ネッパー目当て。DVDも出ているようだが、レンタル店には吹き替え版ビデオしかなかった。似たような題のがいくつかあるし、この作品も「2」と「最終章」があるようだ。テレビシリーズにもなった?7月4日、雨の夜、道路では若者達が浮かれ騒いでいる。後で気がついたが独立記念日か。これも後でわかるがここはヒューストンらしい。下水管でも換えてるのか工事をやってる。あるカップルが人間の手らしきものを見つける。その後袋に入った手も見つかる。全部で七組、男女の子供の手で、手のひらには年齢と思われる数字が刺青され、手首には縫合手術のあとらしきもの。保存状態がいいのはホルマリン漬けになっていたからか。スワガード警部(マーティン・シーン)や部下のクリードマー警部補(ネッパー)達のところへ、州警察から特別捜査官オードリー(アリー・ウォーカー)が派遣されてくる。プロファイリング、法医学、その他豊富な知識のあるキレ者らしい。若くてすらりとした美女、自信にあふれ、意欲満々。しかしクリードマー達は外部の助っ人なんかにかき回されたくない。俺達には俺達のやり方がある。・・こういうところは「テイキング・ライブス」等に似ている。頭脳派と肉体派、エリートとたたき上げ、女と男。男どもは手を組んで嫌がらせやら無視やら。女性は事件解決の他に性差別も乗り越えなければならない。「テイキング」のイリアナにしろ、こちらのオードリーにしろ、そんなことには慣れっこだから気にしない。誰かに愚痴をこぼしたりヤケ酒を飲んだりということはない。一番重要なのは犯人を見つけること。男どもの鼻をあかすことではない。こうしたらというオードリーの提案はほとんど無視される。クリードマー達はまず下水道の捜索から取りかかる。オードリーには(体の他の部分が見つかるなどの)成果が上がるとは思えない。時間の無駄だと思う。それより子供の失踪者を調べた方がいい。でもクリードマー達のやり方にも一理ある。例え何も見つからなくても「下水道にはそれらしきものは何も捨てられていなかった」ことがはっきりするのだから。さてオードリーはスワガードから州立精神病院へ行くよう言われる。現場にいたのでは衝突ばかりするから、体よく追っぱらわれたのだ。今回の事件は異常で、それで精神病院等に何か心当たりはないかと問い合わせたのだろう。
犯罪心理捜査官2
それにこたえて一人の医師が連絡してきたのだ。彼の話によると4~5歳頃からずっと入院しているジョーダンという少年が、時々発作を起こし、手首から原因不明の出血をし、発作の後壁に手の絵を描くとのこと。会ってみるとジェニーという人形を手放さず、言葉は一言も発しない。壁にはなるほど手の絵が描いてあった。しかしもう10年もここに隔離されている彼が、なぜこんな絵を?子供の手首の発見・・猟奇連続殺人といったムードなので、オードリーがクリードマー達と協力して捜査にあたるのだろうと思っていたら・・そうならなくて。精神病患者との対話・・と言ってもジョーダンはしゃべらないが・・みたいな感じに。どことなく「羊たちの沈黙」に似たムード。私はてっきりオードリーとクリードマーがコンビ組むんだと思ってた。年齢的にもキャリア的にも容姿的にもぴったりだ。最初のうちこそ反発し合うが、そのうちクリードマーはオードリーを助け始め、好意さえいだくように。たいていの映画ならそうなる。でもそうならず・・私の期待はあえなくしぼんでしまった。いや、期待って・・ロマンス、いちゃいちゃのことじゃなくて、ネッパーの登場シーンが増えるってことですよモチ。1993年頃だと彼はまだ30代なかばで、髪も大丈夫だしシワも目立たないし、登場人物の中ではハンサムな部類に入る。他はシーンやロン・パールマンだし・・。でも作り手はオードリーに焦点しぼりたいらしい。クリードマーはやたら紙コップにツバを吐く。女性から見ると好きになれないタイプだ。あのコップのなかみ考えただけでゾーッ。こういうのも珍しいな。協力して犯人突きとめ、クライマックスでは誘拐された少女助け出し、犯人と戦う・・そういう男の相棒いないので、オードリーは全部一人でやらなければならない。で、彼女はやり遂げてしまう!ネッパーは後半出てこなくなり・・彼目当ての私はがっくり。でも代わりにタラ・サバコフ見つけましたから。改めて書きますと、私はこれをネッパー目当てで借りたので、なかみとか詳しいこと全然知りませんの。シーンやパールマンはわかるけど、他の出演者のことはよくわからない。アリー・ウォーカーを調べたら「ユニバーサル・ソルジャー」に出ていて、ああ・・あの人かとやっと思い出した・・それくらい。サバコフの方は「ザ・セル」に出ていたらしいが覚えがない。
犯罪心理捜査官3
それで「ザ・セル」のところでも書いたけど見直してみたら・・顔が全然違う。小柄だってことくらいが共通点で、あとは髪の色も目の色も違う。とても同一人物には見えない。こちらではジョーダンとジェニーの二役やっていて。オープニングクレジットには名前出ないから誰だかわからないまま・・男なのか女なのかさえわからないまま見てるわけ。ジョーダンは男の子だけど、演じているのは女優さんに思える。何でこんな不自然な配役を?・・と思いながら見ている。そのうち彼は双子のかたわれで、もう一方がジェニーなのだ・・とわかる。で、出てきたジェニーは、女の子にしてはちょっと変てこなわけ。男の子っぽい。それでこっちはますますわけがわからなくなるわけ。手首の謎とかより、この人男?女?ってそっちの方が気になる。ラスト・・二人がめでたく再会してエンドクレジットでサバコフの名前が出て、それでやっと女優さんが男女の双子演じていたとわかるわけ。で、こんな変わった役やるサバコフってどんな人?・・とIMDbで調べ、「ザ・セル」の再見へとつながっていくわけ。まあ長い道のりだな。この映画での彼女はジャレッド・レトに似ている。喉とか見れば女性だけど、うつし方によってはモロ少年。レト似の美少年。セリフはないし、難役だと思うけど、よくやってる。手首の謎、中盤のスぺケット逮捕劇という山はあるが、全体的には静かなムード。女性が主人公のせいかな。オードリーは、ジョーダンが誕生日の7月16日に決まって発作を起こすことに注目。日付をキーワードに過去の子供失踪事件を調べてみると・・ぴったんこ。七人の失踪者が浮かび上がる。クリードマー達もそれらの事件調べたが、誰も日付の一致には気がつかなかったと・・。まあ失踪事件は多いからね。オードリーは一番最近行方不明になった少女の両親に会いに行く。事件が起きた時たまたま現場の公園を撮影してた少年がいて、彼女はそのビデオ映像と母親の話からアイスクリーム販売の車が怪しいと気づく。クリードマー達は何度もビデオを見ていながら車には気がつかなかったと・・。彼らはオードリーの引き立て役ですな。事件解決のいとぐちを見逃す無能な連中。調査の結果浮かび上がってきたのがスぺケットという前科者。家に踏み込んでみると少女達の写真や怪しげな雑誌、下着。ただ我々にはスぺケットが犯人でないのはわかっているから、冷めた目で見ている。
犯罪心理捜査官4
下水道でカメラに人体らしきものがうつった時もそうだ。思った通り・・マネキン!スぺケット逮捕後の7月16日に少女が失踪する。あの後スぺケットはどうなったのだろう。逃げようとしたことでもわかるが、後ろ暗いところはあるのだ。でも今回の事件とは無関係。疑いはすぐ晴れるだろう。オードリーのポカなわけだが、その点についての描写はなし。さぞクリードマー達は揶揄し、スワガードの彼女への評価も下がったことと思われるが、何も触れられない。オードリー自身落胆した様子もいら立つ様子もなし。ショックゼロ?とにかくすぐ次の手がかり見つける。ここからは彼女の一人舞台・・と言うより暴走である。この後の行動については、彼女は居場所を報告し、応援を頼み、到着を待つべきである。スぺケットのことでいやみ言われ、応援を無視されるとかそういうシーン入れてもよかった。そうすれば彼女の単独行動の言い訳も立つ。この後の彼女の行動は危険も顧みず勇敢・・というふうに見えるが、その背後にある彼女の心の闇もくっきりと浮かび上がる。「羊たち」との共通点が指摘されるのはそのせいか。彼女は背中に傷がある。ムチで打たれたあとか。彼女は閉所恐怖症でもある。ジョーダンに対し、シンパシーをいだくのは、彼女にもひとりぼっちで閉じ込められ、誰ともつながっていない孤独がわかるからだ。クライマックスで犯人に対し、怒りを爆発させるのも、弱い者を力で支配するのが許せないからだ。たぶん彼女は幼い頃父親あたりに虐待され、心に傷を負っているのだ。今回は明らかにされないけど「2」か「最終章」で説明されるのか。彼女の人一倍のがんばりは、男に負けてたまるか、力に負けてたまるかという闘争心から来ている。なかみは今でも傷つきやすく・・いや、傷ついたままだが、気力や知性でおおい隠し、まわりには気取られないようにしている。でもたまにポッキリ折れたり、逆ギレしたかのように犯人に組みついたり。何度も書くが、普通の映画ならクリードマーあたりが彼女を癒し、1時間10分くらいたったところでラブシーンとなる。今回のようにロマンスゼロ、好意のほのめきすらないというのはとても珍しい。今まで書いてきたようにストーリーには、描写には、おかしなところ、つながらないところがある。あまり出来がいいわけではない。しかしそういうのを差し引いても残る、すぐれたものがこの映画にはある。
犯罪心理捜査官5
心の琴線に触れるもの、訴えかけるもの。オードリーの置かれた境遇に共感を覚える女性は多いだろう。男社会での孤独、いら立ち、無力感、闘争心。オードリーは見ようによってはでしゃばりのいやな女だが、その一生懸命ぶりには好感が持てる。クライマックスでは二人の無力で足手まといな少女かかえ、犯人とわたり合う。犯人は恐ろしいし(パールマンだし)、地下室だし。オードリー以上に心を引かれるキャラはジョーダンである。彼はとてもピュアな存在だ。彼にはたぶんテレパシー能力があるのだ。ジェニーにもあって、二人は子供の頃からずっと交信していたのだ。父親が彼を養子に出したのは、彼を分娩中に愛する妻が亡くなったからか。妻の死の原因。女の子の方を手元に残したのは、妻そっくりに育ち、妻と同じピアニストになって欲しいからか。ここでもまた疑問がわく。もう10年にもなるジョーダンの入院費用は誰が払っているのか。養父母か、実父か。隔離病棟には彼一人しかいない。患者一人のために病棟まるまる残すのか。医師が最初ちょこっと出たきり後は全然・・というのもおかしい。オードリーとの面会でジョーダンにはかなり変化が見られる。それなのに興味なし?一番首を傾げてしまうのはもちろん手首の縫合手術。あんなことできるの?切ってつなげて・・つながるの?しかも数年おきに何回も。血液型とか男女の別とか無視されてるし。まあ「X-ファイル:真実を求めて」の首すげ替えよりはマシ?でも、これらもラストシーン・・やっと出会え、涙を流すジョーダンとジェニーを見れば・・気になりませんてば。おめでとうよかったねこれからは幸せにね・・とこっちまでウルウル。まあ二人とも障害があり、身寄りもなく(たぶん)、この先どうやって暮らしていくのかという不安はあるが・・。てなわけで他の二作も見ようっと。ウォーカーはDNAを研究する科学者という変わった経歴の持ち主らしい。サバコフも女優の他にモデル、デザイナーの顔も持ってるらしい。「連鎖犯罪/逃げられない女」にも出ていたようだ。ネットではサブコフと表記している場合が多いが、私はサバコフでいきます。てなわけで・・シーンやパールマンやネッパーは・・出てるだけ。インパクトという点では今回は女優二人の勝ち~!!
犯罪心理捜査官2
六年くらい間あいてるけど、映画では二年経過。オードリーはケリー・マクギリス、スワガードはブルース・ダーン。女性が五人も殺され、スワガードは同一犯の仕業と確信しているが、州警察の署長はそう思ってないし、オードリー寄こすのも拒否。彼女は使い物にならん・・と、もう二ヶ月半も休暇取らされている。スワガードは内緒で彼女に応援頼む。冒頭やや刺激的なパッパッとした映像なので、こりゃ「1」とは方向違うかも・・と思ったが、そうでもなかった。とは言え今回は犯人捜しの妙もなく、なぜ殺すのかの謎解きもなし。犯人は冒頭から出てくるし、彼ドウェイン(デヴィッド・キース)は何かあると「おまえが悪い」と責任なすりつけるありきたりなタイプ。犠牲者発見時の姿勢なんて男ならともかく、女性ならすぐお人形さん座りってわかるでしょ。でもオードリーは気がつかなくて、後で図書館で調べていてやっと気づく。見せ方がありきたり。見てる方はとっくに結論出しちゃってる。今回オードリーの補佐をするサイロ刑事(D.W.モフェット)は、「1」でクリードマーがやらなかった全部のことをやる。即ち彼女に振り回され、協力し、好意をいだき、ラストではしっかり抱き合う。でもクライマックスではやっぱり彼女は単独行動・暴走。彼は肝腎な時には無視され、何もしてやれない。これって頭にくると思うよ。今回はスワガードと署長の対立、オードリーとデブ刑事の確執など足並みの揃わなさを強調。遺族が見たら「何やってる早く犯人見つけろ!」と怒るでしょうね。オードリーが壁に被害者ごとの資料貼りつけてるのを見てサイロが驚き、納得の表情になるのがいい。骨董市で飾っていたアンティークドールが美しい。他の人形には女優の顔に似せたわざとらしいものもあったが、この人形はすばらしい。危うく難を逃れたパトリシア役ニコール・フォレスターは輝くような笑顔の美女。今作でオードリーの過去が明かされる。彼女にカゲを落としていたのは死刑囚のエヴァンス・・と思わせといて、実は・・となるのは、ひねりがきいていていい。私は父親の虐待かと思ってたけど違うのね。でもトラウマの原因がドウェインなら、骨董市で会った時ぴんとくるはずでしょ?てなわけでそれなりにおもしろいが、何でもやってくれて見せてくれて、でもそのせいで平凡になってしまった作品。説明しなかったせいで強い印象残した「1」とは対照的。難しいね。
犯罪心理捜査官 最終章
こちら「1」「2」とは全く関係なし。どさくさにまぎれてレンタルさせようという魂胆。ええ・・引っかかりましたとも。こちらオーストラリア製です。見ていても何を描きたいのかさっぱりわからん。ウィルソン(べリンダ・マクローリー)は殺人課の刑事で、何やら精神的に病んでいるらしくセラピー受けてる。幼児を殺害するミスター・クリープってのがまた現われた。そうか、この連続殺人鬼をウィルソンが追うのか。精神的に病んだ者どうしの対決。・・でも描かれるのは麻薬課等の刑事の腐敗・堕落ぶり。ウィルソンは相棒のウォルシュ(ジョン・ブラプトン)信頼してるけど、彼すらブラウン警部補と組んで後ろ暗いことやってるらしいんだな。それらの汚い手口延々と見せられる。「フェイク シティ ある男のルール」風味。一方で新米警官が水死体見つけるけど、古参は見なかったことにしろと言うわけ。ほっときゃ流れていく。わざわざ手間を増やすな。それがまた別の場所で見つかるけど、そこでも見なかったことにしろ。漂っていくうちに死体は腐敗していくけど、警察の腐敗もそれに劣らないってことを言いたいのか。二度ほど甘ったるい歌が流れ、ヒロインはメランコリックな表情で酒や薬を飲み、オフロに浸かり、ついでにヌードも。肝腎のミスター・クリープのことはちっとも進まない。いっそのことクリープのことなんかなかったことにして、てってー的に腐敗描いて最後は全員死ぬとか。「全員死亡捜査官 最終笑」。でもそこまでやる覚悟もなくて。あまり根拠のないことでブラウンこそクリープだってことになって、ウィルソンはいきなり撃つ。しかもはずす。まあヒロインの暴走はこのシリーズのお約束。たぶんあの後ウォルシュも撃ったのだろう。ウィルソンが虚無的な表情で話すシーンが何度かはさまれ、ああ・・これは事件の後だな・・とわかる。「ボーダー」風味。レンタルビデオ店主が犯人について自説を開帳するシーンは笑える。熱弁ふるった後で素に戻って「そのビデオおもしろいよ」。検死シーンで死体は見せず、電動ノコギリの音だけ聞かせるのもいい。俳優達は何やら安っぽく、中には演技へたなのもいる。作り方は一人よがりで辟易するが、ところどころ(上に書いたような)いいシーンもある。関係ないけど予告で「23 トゥエンティースリー」てのが入ってて。主役のアウグスト何とかって「ソルト」のマイクだよね。