ザ・ドライバー
見るのは久しぶり。予告だけは10回以上見た。私は同じ映画を何度も見るから、予告もそれと同じ回数見ることとなる。映画そのものは見にいかなかった。何でかな、私好みなのに。ダークでクールで・・車には興味ないけど雰囲気が。その後テレビで見て、ノベライズを見つけて買って、特集記事のある「キネマ旬報」も入手。DVDも買ったが特典ゼロ、日本語版すらついてない。おいおい、映画がシンプルだからって・・。ライアン・オニールは「ある愛の詩」で有名だけど見たことなし。こういうのは見ないのよ。私が見なくたって他の人が見る。「ザ・ドライバー」はヒットしたのかな。どちらかと言うとフランスの新進女優イザベル・アジャーニのハリウッド進出第一作目とか、カーチェイスが売りで、クールなキャラで出てくる(こういうキャラもできるんだよと言わんばかりの)オニールのことはあんまり注目されてなかったみたいで。もちろん私がこの映画を何度も見、ノベライズを読み返すのはオニールがかっこいいからだ。「サムライ」のアラン・ドロンみたい。冒頭オニール扮するドライバーは駐車場で車を盗む。「トランスポーター」の主人公とは違い、彼は自分の車は持っておらず、仕事の度に車を盗み、使った後はスクラップ工場へ。ドライバーと交互にうつされるのはカジノでのプレイヤー(アジャーニ)。チップを交換し、入口へ来た彼女は、そこにとまっている車と運転席にいるドライバーを見る。そこへカジノ強盗の二人組が来、その後はパトカーとの猛烈なカーチェイス。振り切って金を分けてまた頼むと言われたけど断る。時間に遅れたのが気に食わないらしい。この後プレイヤーは他の数人の客と共に面通しに駆り出されるが、犯人ではないと断言し、デカ(ブルース・ダーン)らを失望させる。その後ドライバーはプレイヤーを訪れ、金を払う。映画を見ていていくつかの疑問が浮かぶが、説明もないまま進んでいく。これがノベライズだと一番最初にコネクション(ロニー・ブレイクリー)がプレイヤーを訪ね、前金として半金払う。私はあの時プレイヤーがカジノの入口にいてドライバーを目撃したのは偶然だとずっと思っていたけど、実際は違うのだ。プレイヤーは目撃者となるようコネクションに雇われていたのだ。
ザ・ドライバー2
だから面通しの時、ドライバーは犯人じゃないと断言し、その後ドライバーは礼金の残りを支払うためプレイヤーを訪ねたのだ。ところでデカがドライバーの手に熱いコーヒーをひっかけ、挑発しようとするシーンがある。私がこの映画を初めて見たのは民放で吹き替えだった。声は・・野沢那智氏あたりだったと思う。コーヒーをひっかけられたドライバーが上げる悲鳴をはっきり覚えているのだが・・クールなドライバーでもやっぱり熱いものは熱いのだと。でもDVDを見たら何も声は出してなくて、ありゃそうすると私の記憶違いかね。次にグラス(眼鏡)、ティース(歯)、フィンガーズ(指)の三人がスーパーを襲うが、次のシーンではもうグラスがデカにしょっぴかれている。早い早い。この映画90分ほどと短い。あっちもバッサリこっちもバッサリ、カットしまくる。少しくらい説明不足で、私みたいに「あれ?」と首傾げている者がいたって気にしない。それとも見ている人はカーチェイスに心奪われて「あれ?」とも「はて?」とも思わないのか。ノベライズの方はその点ちゃんと描写してある。その代わり時間が前後する。あっちに飛んだりこっちに飛んだり。おまけにラスト近くではドライバーとプレイヤーがいいムードに。実際そのシーンは予告編に入っているらしいが本編ではカット。その方がいい。大金を手にするはずだったのにラストではその当てがはずれてしまい、そうなると先ほどの甘いムードなど吹き飛んで、プレイヤーはさっさとドライバーを置いて立ち去ってしまう。やや未練がましいドライバーと違い、彼女はドライだ。ドライバーとデカの間にある男の意地の張り合い、ゲーム感覚などは彼女には理解できない。彼女は女である。しかも金のかかる女である。彼女が高層マンションの一室に優雅におさまっていられるのはパトロンのおかげ。ただ、この頃月々のお手当てが滞っている。もうここ・・ロサンゼルスを離れる潮時なのかも。そうなるとまとまった金が必要。偽証したのだって金目当て、ドライバーの部屋を訪れたのだって金目当て。ドライバーの生活ぶりは質素。ミニマリストみたい。きっと金をため込んでいるに違いないとでも思ったのか。映画では二人はいいムードにはならないし、ラストでは離れたところから成り行きを見守っていたプレイヤーは金が一銭も入らないのを見て取って、スッとその場を立ち去る。
ザ・ドライバー3
何をわけわからんことを長々と書いているかと思われるかもしれないが、こちとらクルマにもカーチェイスにも興味ないもんで。人間の方に興味いくわけよ。もちろんドライバーみたいな暮らしぶりは現実的じゃない。例えば彼は固形物を取らない。コーヒーとかビール飲むだけ。まるでエンデヴァー・モースだ。さて、前々からこの映画で気になっていたことはあった。あのロッカーのカギである。何が何してどうなったんだっけ?だから今回は長年の疑惑を晴らすべく注意しながら見ていた。最初ドライバーはグラス達が銀行から奪った金の入った黒いバッグをロッカーAに入れ、そのカギを隣りのロッカーBに入れる。で、Bのカギを持ち帰る。用心のためとずっと思っていたけど、Bは交換屋の(足のつかない)金を入れるために確保しておくのだと気がついた。全然別の場所より隣りの方がまごつかずにすむ。あの交換のシーンで頭がこんがらがるのは、BにはAのカギが入っているはずだという思い込みがあるからだ。描写されないけど、Aのカギはドライバーかプレイヤーの手で取り出され、Bは空っぽになっているのだ。交換屋と接触するプレイヤーはAとB両方のカギを持っている。交換屋に最初に渡すのはBのカギ。交換屋はBに自分のバッグを入れる。入れたらカギをプレイヤーに返し、代わりにAのカギを受け取る。Aからバッグを出し、中に金(銀行から奪ったもの)があるのを確認すると、そのまま立ち去る。この後プレイヤーはBのカギを入れたバッグをティースに奪われ、それを取り戻すためドライバーが猛烈に追いかける・・となるのだが、それはおいといて。このやり方で問題なのは、交換屋は金を確認できるけど、プレイヤー達にはできないってこと。交換屋が持ってきたバッグにちゃんと金が入ってるかどうかは、Bを開けてみるまでわからない。つまり交換屋を信用するしかないのだ。結局交換屋のバッグは空っぽで、ネコババする気だったことがわかる。でも空っぽだったせいで現場を押さえて逮捕するつもりだったデカは当てがはずれるという結末。骨折り損のくたびれ儲け。プレイヤーが呆れてサッサとその場から去るのももっともな話。と言うわけで地味だけどクールな、私好みの映画でした。