早すぎた埋葬

早すぎた埋葬

エドガー・アラン・ポーの短編が原案。原作は読んだはずだが、記憶はおぼろ。この映画は62分、日本では未公開らしい。タフト診療所の主任外科医クレスピ(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)は腕利きだが、まわりからは少々恐れられている。今日もトーマス医師は死亡診断書の時刻のことで怒られた。新聞にはロス医師の交通事故の記事が載っている。その妻エステルから電話も来る。ロスは頭にケガをしていて、助かるにはクレスピに手術してもらうしかない。主治医の手には負えないようで。クレスピは断るが、エステルはじかに押しかけてくる。どうも二人の間には過去に何かあったらしい。クレスピは彼女と結婚するつもりだったが、彼の助手をしていたロスに奪われてしまった。エステルは彼はクレスピの気持ちを知らなかったのだと弁解するが、後でクレスピがロスに言うところでは、彼女を奪わないでくれと言うを、ロスはあざ笑ったらしい。また、エステルは石油富豪の遺産相続人でもあったから、クレスピにとってロスは二重に憎たらしい仇でもあったことになる。クレスピの部屋には実験器具が置いてあり、何やら研究しているようだ。これは私の勝手な妄想だが、クレスピはエステルの金を使って存分に研究に打ち込みたかったのではないか。さて、彼はようやく手術を承諾する。渋っていたのは演技かも。それにしても開頭手術だってのにずいぶん速いな。とにかくエステルにはうまくいったと言って喜ばせる。すぐ脈がおかしいと連絡が来るけど、自分の部屋でぐずぐずしていて、すぐには行かない。この映画で一番怖いのって実はこういうシーン。居留守を使うとか、時間つぶして引き伸ばすとか。連絡した方はそれ以上のことはできず、ただ待ってるしかない。故意に待たされてるなんて夢にも思わない。その間に手遅れになっても何も言えないわけで。クレスピは死亡診断書に死亡時刻を書き入れる。まだ死んでいないのに!それからやっと病室へ行く。自分の作った薬を注射、その後死亡となる。書き入れた時刻通りだ。悲しむエステルを慰め、葬儀の手配は自分がやると申し出る。深夜・・霊安室へ忍び込み、ロスへの恨みつらみをさんざん述べ立てる。薬のせいでロスはマヒ状態。目は見えるし耳は聞こえるし感覚もあるけど、まつ一本動かせない。

早すぎた埋葬2

薬の効き目は24時間で切れるから、今また追加の注射。夜が明ければ葬式。自分の葬式を生きながら体験するわけだ。そのあげく2メートルもの深さに埋められてしまう。薬が切れて動けるようになってももう遅い。・・と、ここまで来れば次に見せられるのはロス味わう恐怖の描写・・と思うが、そうはならない。原作だってその恐怖の描写が一番の売りだと思うが。映画は難しい方は避けてやさしい方へ。病院の描写だって表面的。もっと人の出入りが多く、急患が運び込まれたりアナウンスがあったり外来患者がおしゃべりしたり、ざわついていると思うが。産科で五つ子が生まれても産声一つしない。これってぶきみ~!忙しいはずのクレスピはずっと部屋でうだうだしている。タバコばっかり吸うし、酒も飲んでいたような。彼の態度に疑惑を抱いたのはトーマス一人。毒殺したのだろうと面と向かって言う。バッカじゃないの?案の定首を絞められ・・縛られて小部屋へ入れられちゃった。殺されたのかなと喜んでいたら(←?)、生きていたな。何で殺さないの?でもクレスピはトーマスが何言ったって誰も信じないと自信持ってる。かえって彼の頭がおかしいと思われるのがオチ。で、トーマスは医師のアーノルドに墓暴きを手伝うよう頼むけど、なかなかうんと言わない。もう死んじゃったんだし今更・・と言うわけ。ただこのままだと映画にならないので、二人して墓を暴き、車に乗せて運ぶ。深夜になるまで待つので、それまでにロスは窒息死しちゃうぞと思うけど、二人はロスが生きてるなんて知るよしもない。診療所に運んで解剖を・・って、生体解剖だ!!でも時刻はちょうど12時で、薬が切れる頃合。ホッ。ロスはムックリ上体を起こし・・。トーマス役はドワイト・フライ。フライと言えば「フランケンシュタイン」。今回も墓暴き・・って狙ったキャスティング?おまけにロスは頭に包帯巻いてる。両手を前に差し出し、おぼつかない足取りで歩く。まだマヒがとけていないから・・って、フランケンシュタインの怪物そのままじゃないか!!看護婦が驚いて悲鳴をげる。たぶん観客は、戦慄するより爆笑すると思うんですけど。この”どことなく「フランケンシュタイン」”が私にはツボでした。