龍は眠る(1993)
宮部みゆきさんの原作は早速図書館から借りて読んだ。テレビを見たのは超能力という題材が珍しかったから。アロー出版の雑誌記者高坂(石黒賢氏)は、婚約者の小枝子から別れを切り出される。原因は高坂に子供を作る能力がないとわかったため。雨の降る夜、車を走らせていた彼は、タイヤがパンクし、往生している高校生慎司(岡田秀樹氏)に出会う。その後、マンホールのフタが開いていたため、5歳の子供が落ちて死んでしまうという事件に遭遇する。道路に落ちていた傘に触れた慎司は、奇妙な反応を示すが、高坂にはなかなか理解できない。彼は超能力の特集記事を書いたりするわりにはこういうことにはひどく鈍感。それは全編通してそうで、そのためモタモタした感じになる。二人はモーテルに泊まったのだが(慎司はツーリングの最中だったらしい)、翌朝朝食をとっている時、食堂に入ってきた二人組を、慎司はマンホールのフタを開けっぱなしにした犯人だと言い出す。もちろん二人組は否定する。慎司は自分の能力を人のために役立てるべきだと思っている。自分のことを信じてもらうため、高坂の過去・・子供の頃事故にあったこと、小枝子に別れを告げられたことなどを正確に言い当てる。その人、あるいはその人の持ち物などに触れることによって、考えていることや過去がわかってしまう能力。さて、高坂のところにはなかみが白紙の手紙が数通届いている。白紙なので相手の意図がわからない。また、慎司のいとこだという直也(東幹久氏)が現われ、慎司の言うことややることはすべてデタラメだから、もう会わないでくれと言ってくる。その際どういうからくりなのかを説明する。それでいてフッと姿を消すなどするので、こらこらああやって否定した後で自分が超能力者だってこと示してどうするんだよ・・と呆れる。もう高坂は何で慎司が自分のこと当てたのかそれで頭がいっぱいで、全然仕事してない。編集長(森本レオ氏)も合理的な説明つける。あのブームになったスプーン曲げだって、結局はインチキだったじゃないか。その頃あの二人組のうちの一人がつかまったのか出頭したのか、とにかく慎司の言う通りだったことがわかる。高坂は彼の両親を訪ねる。喫茶店をやっている父親(長谷川初範氏)も、母親(田島令子さん)も、もう慎司の能力を疑ったり恐れたりする段階は過ぎている。それはそこにあるものなのだから、今は見守るしかないと思っているようだ。う~ん、まだ未熟な慎司に対し、もっと用心するようにとか警告はしないのか。
龍は眠る2
悪用されたり余計な危険招くことだって。ちなみに慎司によると、直也は彼よりもっと強い能力の持ち主らしい。高坂は直也が住んでいるとおぼしきアパートを捜し出すが、そこに住んでいたのは七恵(鶴田真由さん)という美しい女性。彼が雑誌記者と知って一度はドアを閉ざすが、そのうち中へ入れてくれる。ここで彼女と直也の関係が明らかになる。彼女は事故で喉が焼けたためしゃべることができない。ある時助けを求めることもできず部屋で苦しんでいると、直也が来て病院へ連れて行ってくれた。手術をしたらしいから盲腸か。家族の同意書は?それはともかく目を覚ました彼女は、声に出さなくても直也と会話できることに驚き喜ぶ。テレパシーってやつですな。部屋のカギも開けてたから、念動力もあるのだろう。高坂の目の前からいなくなったのはテレポーテーション?人間の醜さばかり見せつけられ、苦悩の日々を送っていた直也にとって、七恵ほどきれいな心の持ち主は初めてで。たぶん直也は彼女に恋したと思うけど、七恵の方は彼に対し兄のような気持ちしか抱かなかったようで。ここが人間の不思議なところだ。それでいて七恵は一目で高坂に惹かれたようだし。直也が現われないかと、七恵を見守る日々が続く。そのうち彼女の方も気づき、何やら「フォロー・ミー」みたいになってる。人とは違う能力を持って生まれてしまった慎司を中心に、物語が展開するのだと思っていたけど違うようだ。高坂と七恵のロマンスかよ。その一方で高坂へのいやがらせは続く。原因は昔のことらしいが、思いあたることはない。彼ではなく、彼の大事な人に危害を加える気らしいが・・ということで、小枝子が狙われているのでは・・となる。はあ?何で小枝子?七恵じゃないの?と、見てる人全員思う。彼がずっと七恵のアパートに張りついてるのわかっているはずだが。車でつけられたし。でも高坂が向かうのは小枝子の家なのだ。もちろん彼女は会ってくれなくて、応対に出たのは父親の川崎(勝部演之氏)。秘書の三宅(秋本奈緒美さん)も同席するが、まあいかにも怪しくて。超能力なくたってこの女何か企んでるってバレバレ。その後小枝子が誘拐される。あらやっぱり彼女が標的だったの?慎司が高坂に会いに出版社へ行くけど留守。彼に来ていた例の手紙に触れた慎司は・・。で、あれこれあって高坂を恨んでいるのは遠藤という男だとわかる。彼の息子孝明はサイキックだったが、高坂の書いた記事のせいで学校でいじめられ、屋上から飛び降り自殺。母親も死に、家庭は崩壊。警察が急行し、遠藤をつかまえるが、もちろん小枝子はいない。
龍は眠る3
実は七恵が直也に頼んで小枝子の居どころを透視してもらい、それを出版社にファクスで送ったのだが、何しろみんな犯人は遠藤と思い込んでいたから、ファクスを確認しようともしない。慎司がよかれと思ってやったことが裏目に出てしまう。仕方なく七恵は地図を頼りに一人で長浜海岸へ。小屋の中で小枝子を見つけるが・・。結局誘拐犯は三宅。計画が狂った・・と怒っていたけど、どういう計画?彼女は川崎と結婚するつもりだったが、小枝子が反対。それで彼女を始末しようと。彼女は小枝子に顔見せてるから、後で殺すつもりだったのだと思う。彼女さえいなくなればいいのだから、身代金は・・やっぱり欲しいかしら。でも川崎が警察に通報したのはわかってるし、金の受け渡しがうまくいくはずないのも。だいたい彼女一人でやろうとすること自体間違ってる。情夫がいて二人でやってるというのならまだしも。七恵のピンチを感じ取って駆けつけた直也が死んでしまうのは、予知能力ゼロの私にも予想つきます。前にも書いたけど、悩み苦しむ慎司が主人公かなと思って見始めたわけです。高校生活を送りながらまわりとうまくやっていくってのは大変なことだと思う。正義感もあるし、自分は他の者とは違うのだという優越感もある。能力をコントロールできるほど経験も積んでない。一方直也の方は年長な分だけ経験を積み、コントロールはできる。しかし慎司と違い親は理解してくれず、恐れられ疎まれた。いちおう仕事はカメラマンだが、仕事をしているところはうつらない。七恵のところへ来るのは時々で、普段どこにいるのかも不明。主人公はたぶん高坂なのだろうが、善人なのは確かだが鈍さばかりが目立ち、それでよく記者が務まるなあ・・と。つまり、見ている者の興味は直也へ向くのだ。たぶん彼は生まれて初めて人を愛したと思う。それなのに七恵の心は高坂へ傾くのだ。これってつらいことだったと思うよ。と言うわけで私には直也が主人公としか思えませんでしたな。小枝子の誘拐あたりは原作とはかなり違う。原作の方は直也が誘拐犯のフリをするなどちょっとわかりにくい展開。どんなにすごい能力があっても不死身ではないから、傷を負えば死んでしまう。また、超能力の行使は体に大きな負担でもある。アニメのように軽々と・・とはいかないのだ。でも2時間ドラマでこういうのを扱ってくれるのは本当に珍しいから・・霊能力はあるけど・・うまく扱われていたとは思えないけど、それでも映像化してくれてありがとう。