殺人の疑惑
ダウンは父親のチョンに溺愛されて育った。26歳になり、大学院生だが、将来は記者になりたい。でも、面接を受けても落とされてばかり。ある日、面接に役立ちそうだからと、友人達と映画を見に行く。題材は15年前に起きた男児の誘拐殺人事件。未解決のままもうすぐ時効が発生する。映画の中で流された犯人の肉声を聞いたダウンは、それが父親の声に酷似しているのに気づく。まさかそんなことありえない。今だって懸命に働き、人生のすべてを自分に捧げてくれている。ある日シムという男が現われた。どうやら母親の弟らしいが、何やら秘密をちらつかせる。ダウンにばらされたくないなら金を寄こせとチョンを脅す。亡くなったとされている母親は生きているらしいが、ガンで危篤のようで。父親が犯人なのではという疑惑だけでなく、シムが握っている秘密は何なのかという、そっちの謎もあるわけだ。その秘密は誘拐事件のことだと思ったら違うようで。当然のことながら疑問や謎は先送りにされる。チョンへの疑惑はどんどん深まるが、ダウンに問いつめられても否定する。思い余ったダウンは、記者のフリをして被害者の父ハンを訪ねる。彼は産婦人科医で、ダウンは偶然そこの病院で生まれていた。ところがハンが言うには、母親は流産したという。これって重要なことなんだけど、なぜかダウンはスルーする。結局母親が流産したため、チョンは別の赤ん坊を盗み、自分の娘として育てたと。それまでは窃盗や詐欺など犯罪にどっぷり浸かっていたが、心を入れ替えたと。ところがシムに脅され、金を要求されたため誘拐事件を起こしたと。何だかんだあったけど、時効が成立し、もう大丈夫と本性をあらわしたチョン。絶望するダウン。いかにも韓国映画らしく、ダウン役ソン・イェジンはどんな時も美しく悲劇的に描かれる。あんまりそれが続くと、芝居がかって嘘くさく見えてしまうのに。お膳立てができすぎてると言うか。ソンは「私の頭の中の消しゴム」で有名らしいが、見たことなし。殺人事件が起こるのでなきゃ韓国映画は見ませんのよ、原則として。チョン役キム・ガブスは「悪魔を見た」に出ていたらしいが覚えなし。シム役イム・ヒョンジュンは市山登(今は貴章らしい)氏に似てるかな。それにしても一方では血のつながらない娘を溺愛し、一方では罪のない男児を無残に殺すチョンの行動には首を傾げる。ラスト、病院で(美しく)眠るダウン。病室を訪れた女性は実の母親だろう。少しはホッとできるラストになっているのはよかった。