石岡タロー
お客は私を入れて四人か五人。私は猫派なので犬はどうでもいいんだけど、まあたまにはね。17年間、駅、小学校・・前知識はそれくらい。きっとけなげさに泣かされるんだろうなあ。電車で石岡の幼稚園に通う恭子。朝は玉造駅まで子犬のコロと一緒。夕方になるとコロが駅でお出迎え。つまり一日に駅まで二往復。ところがある日隣りの石岡駅でコロとはぐれてしまう。父親が駅付近をさんざん捜したけど見つからない。そのうちコロは東小学校で飼われるように。タローと名付けられ、用務員の家で暮らす。二年後、石岡駅までの2キロを朝夕往復するようになる。理由は誰にもわからない。誰かを待っているのか。恭子は幼稚園を出たから、もう石岡駅に来ることはない。描写はくり返しが多い。玉造駅までの商店街を、子供とコロが歩く。人々が見守る。タローはなぜか一年生のクラスだけ順番に見回る。朝夕小学校から石岡駅までの国道沿いの歩道を歩き、踏切を渡り、歩道橋を渡る。人々が見守る。でもそのくり返しがちっとも見ていて飽きない。何と言っても犬がいい。恭子の乗った列車を見送るコロの後ろ姿。ホームにポツンと・・何て小さいんだろう。演じている(←?)チャッピーの大きな目と耳。成長してからはタローの尻尾。途中で曲がっていて、歩く時右に左にせわしなく揺れる。もうそれを見ただけで胸がじ~んとしてしまう。何と雄弁な尻尾!石岡駅では待合室にいて、ホームには出ない。出ないから駅員も大目に見てくれている。そもそもはぐれる原因となったのは、いつも恭子が列車の中にまでコロを連れ込んだから。いつもは発車ベルでホームに下りるけど、あの日は・・。たぶんその記憶があるから待合室から動かないんだと思う。途中保健所で殺処分にされそうになるけど、何とか助かる。来る日も来る日も駅に通い続け、年を取ってだんだん弱ってきて、ある朝死んでいて。その後も映画は続く。タローの死から26年・・駅のあたりはすっかり変わる。新聞に記事と写真が載ったことで、タローが待ち続けていたのが恭子だったとわかる。東小の当時の校長や、世話をした用務員父娘、タローを見守った町の人々が集まり、再会を喜び合う。タローは幸せで、天寿を全うできただけでなく、今もみんなの心に生きている。でも恭子はやっぱりあの日のことを悔やんでいると思う。彼女の中には今でも元気いっぱいのコロの記憶しかない。あの後たくさんの思い出が作れたはずなのに。成長した恭子役が渡辺美奈代さん、元校長が山口良一氏。成長したタロー役はチャビとダイ。よく見ると顔が違うけどチャッピーも含め三人共(←?)名演でした。泣いてしまったぞ。