夜の大捜査線
ミシシッピ州スパルタの町。夜、パトロールをしていた警官ウッド(ウォーレン・オーツ)は死体を見つける。町に工場を建設する予定のコルバートで、頭を殴られたのが死因。ウッドは駅の待合室にいた黒人が犯人と思い込み、しょっぴく。ところがこの男ティッブス(シドニー・ポワチエ)はフィラデルフィアの殺人課の腕きき。容疑者としてコルバートの財布を持っていたハーヴェイがつかまり、署長ギレスピー(ロッド・スタイガー)達はもう用なしとティッブスを追い払おうとする。しかしティッブスが見たところ、ハーヴェイはシロ。早くこの町から去りたいと思っていたティッブスだったが・・。殺人事件に出くわしたのはギレスピーも初めてらしいが、捜査の手順は驚くほどいいかげん。おまけに黒人への偏見。コルバート夫人は呆れ、市長にティッブスを担当にするよう主張。でなければ工場の建設は中止だ。夫人をやってるのがリー・グラントなので、「刑事コロンボ」みたいに彼女が犯人?なんて思ってしまうが、違った。彼女が怒るのももっともだ。ちゃんと捜査して犯人をつかまえて欲しいのに、男どもはつまらない意地の張り合いをし、間違った人間を犯人にするところだった。さて、この映画はアカデミー賞作品賞をとり、スタイガーも主演男優賞をとったらしい。あら、ポワチエじゃなくて?助演男優賞じゃなくて?そりゃ貫禄があって名演技だけどあのガム噛みっぱなしはねえ・・。操り人形か腹話術の人形みたいに口をカクカク。見ていてこっちのあごまでおかしくなりそう。どの批評でもこの映画のこと傑作とかほめてるけど、私にはそんなでもないように思えた。意地の張り合いとか捜査の邪魔をするとかそんなのばっか。ちゃんと考えなくて1か10か。白か黒かでその間がない。そのせいでいったい何人の人が無実の罪を着せられたんだろ。いったい何人の真犯人を取り逃がしたんだろ。いったい何人の黒人がリンチで殺されたんだろ。ティッブスは身なりもきちんとし、知性を漂わせる。北部にいたって差別はあるだろうし、ここまで来るには・・高給取りの敏腕警官になるまでには人一倍の苦労・努力をしたことだろう。冷静に見えて時には感情的になる。ギレスピーが言うように白人を見返してやりたい気持ちもある。彼は悟りすました聖人ではない。その途上にあって、揺れ動いている人間だというのはよかったと思う。彼の努力は一生続くのだろう。ハーヴェイ役はスコット・ウィルソン。ちょっと狂気を感じさせる人で、私は見たことないけど「冷血」や「傷だらけの挽歌」などに出ていた。市長役はウィリアム・シャラート。