2灰の迷宮(2006)
女子大行きのバスにホームレスが乗り込み、ガソリンをまく。乗客はあわてて逃げ、ホームレスは取り押さえられるが、客の一人佐々木(安藤一夫氏)は、道路に飛び出したところをトラックにはねられ、即死。パニクったドライバーは気を落ち着けようとタバコを取り出し、ライターで火をつけようとする。ガソリンの臭いに気づかないの?流れ出していたガソリンに引火し、バスは爆発するが、その直前騒ぎにまぎれて佐々木のバッグを誰かが持ち去っていたことに気づいた人はいなかった。ところでこのドライバー・・どうなった?一方行列のできるラーメン店、整理券を渡される吉敷。結局呼び出されたのでラーメンはお預け。佐々木はアイランド証券に勤めていて、東京へは出張で来ていた。ちょうど息子の浩一(橋爪遼氏)も受験で東京に。バスの中からは、受験票や参考書の入ったカバンが見つかっている。浩一が言うには、カバンを取り違えたと。あわてて父親に連絡したけど、いくら待っても約束の場に現われず、結局受験はできなかったと。それで話のつじつまは合うが、佐々木の乗っていたバスは浩一が受ける大学とは行き先が正反対。似たような大学名なので間違えたのか。いずれにせよ佐々木の死は事故死。ところがホームレスの光岡が妙なことを言い出した。20万でバスに火をつけてくれと佐々木に頼まれたというのだ。もちろん誰も取り合わないが・・。佐々木は東大出で、切れ者。エリートコースまっしぐら。彼が持っていた新聞の切れ端を見た吉敷は、すぐ警視庁へ戻る。一年前、酒に酔った状態で転落死した身元不明の男。泊まっていた宿帳に書かれた名前も住所もでたらめ。宿に残されていたのが一部が破り取られた新聞。今回見つかった切れ端とぴったり一致する。事件そのものは未解決。事故死扱いになっているが、吉敷や中村は他殺だと思っている。それにしても佐々木はなぜ切れ端を一年も持っていたんだ?男と佐々木の接点を探るためには鹿児島へ飛ぶしかない。今回も吉敷は独断で行動し、浅田(伊吹吾郎氏)を困らせる。交通費、ホテル代・・。その前に釧路から通子(余貴美子さん)がやって来て、離婚届に判を押してくれと言い出す。吉敷と他人になっておかないと迷惑をかけることになる。でも理由も聞かずに同意できるかっちゅ~の。まあ三作目でその理由は明らかにされるんだけど、見ている方からすると、そこまで隠す必要あるの?って感じ。何もかも一人で背負い込んで、それでいて気を持たせるような感じ。吉敷にすれば生殺し状態ですわな。もっとも捜査の間は彼女のこと忘れてるけど(鹿児島から戻るのが遅れること、通子に連絡していない)。中村夫婦は二人の仲人らしい。奧さん佳子役は高林由紀子さん。
灰の迷宮2
鹿児島県警の留井(温水洋一氏)は出迎えに来たものの、吉敷を雑誌のモデルと思い込み、そのせいですれ違いに。後で東京から小谷(賀集利樹氏)が来るが、ハンサムなのにびっくり。さすが東京の刑事は垢抜けていると田之上ともども感心しきり。でも警視庁にも鑑識の船田(小倉久寛氏)みたいなタイプいるけどね。さて、佐々木はクラブのホステス、恵美(星野真里さん)がひいきだったというので行ってみるが、いない。クラブのママ役は奈良富士子さん。ホステスの間では佐々木は嫌われていた。人を見下すようなところがあり、エリートには裏の顔があったことがわかってくる。その後恵美によって、例の男は壺山という元印刷工だったことがわかる。恵美は吉敷が気に入ったらしく、情報を餌に吉敷を引きずり回す。ここらへんややコメディータッチだが、こういうタイプは楽天的と言うか自信過剰で、そのうち命を落とすはめになるぞ・・と思っていたら案の定。さて、話を整理すると、光岡が前金として受け取った10万のうち、居酒屋で使った一枚から、光岡・佐々木の他に壺山の指紋も出た。しかもニセ札だった。印刷工だった壺山が密かに印刷、気づいた社長島袋は彼をクビにし、ニセ札は焼いてしまうが、全部ではなかったようで。壺山は佐々木に1億円の儲け話を持ちかける。アイランド証券は裏金運びをやっていて、東京へ運ぶのは佐々木の役目。本物の1億は横領し、カバンにはニセ札を詰める。光岡に放火させ、焼いてしまえばニセ札だったとはわからない。1億には保険をかけてあるから、アイランド証券が損をすることはない。ニセ札を作るには原版のコピーが必要だし、そんなものがちょっくらちょいと手に入るわけもないが、暴力団が関係しているらしいというだけで、詳しいことは不明。慎重な佐々木はなかなか行動を起こさず、金に困った壺山は競馬の方で・・と考え始める。それを示すのがあの新聞の切れ端。競馬の不正の記事。それに気づいた佐々木が壺山を始末。しかしバスの中にはニセの1億円が入ってたはずのバッグはなかった。それにしても光岡がつかまれば佐々木のことを言うはずで。光岡が焼け死にでもすれば死人に口なしで大成功だが。バスが爆発したのはトラックドライバーのせいで、偶然。それがなければバスは焼けなかった。また、佐々木はなぜバスのカゲから道路に飛び出したのだろう。バッグを持ち去ったのは浩一だが、ニセ札だとは知らなかったようで。佐々木の、妻(朝加真由美さん)に対する暴力が動機だが、高校生にもなれば母親を父親の暴力から守るんじゃないの?という気もする。隠れて見ているだけってのは情けない。ただ、浩一が殺人を犯すはめになったのは恵美がでしゃばったせいで、そこは気の毒だった(恵美はあんまり気の毒じゃない)。
3北の夕鶴~2/3の殺人(2008)
この「北の夕鶴」は、吉敷がひどい目にあうのが特徴。いやもうこれでもかってくらいに。それと写真にうつった、しかも宙に浮いている鎧武者の謎。でも、テレビでは歩くだけだったな。千駄ヶ谷のホテルで女性の死体が見つかる。あわてた様子の女性が目撃されている。吉敷のところへ通子から電話がかかってくる。取り返しのつかないことをしたとか何とか。東京駅へ駆けつけたが、彼女を乗せたはやては北へ。殺人現場へ遅れて顔を出すが、被害者藤倉令子はチェックインした女性とは別人。チェックインしたのは加納通子と知ってがびょ~んとなる吉敷。旧姓なのでまだ吉敷の元妻だとは気づかれていない。でも、取り返しのつかないこととか言ってたしぃ~。五年ほど前書き置きを残して姿を消した通子。一年くらい前まではそれでも連絡あったけど・・と言うか、二作目の後通子の要求で正式に離婚したのかな。道警が釧路の通子のマンション調べると、またしても女性の死体。こちらは藤倉さなえ。令子の弟、一郎の妻。一郎の下には次郎という弟がいる。令子はクラブをやっていて、通子は客へプレゼントとして配る彫金を納入。しかし令子が代金を払わないことでトラブルになっていたらしい。これが動機か。妙なことにみんな三ツ矢マンションに住んでいる。A棟に一郎、B棟に次郎、C棟に通子。原作では川をはさんで立ってるし、形も違う。死体の数も違うし、令子が殺されたのはホテルではなく、寝台特急夕鶴の中。夕鶴ってこれが制作された2008年にはもう廃止されていたのかな。まあとにかくすべてが通子が犯人・・と指さしている。でも吉敷には彼女が人を殺すなんて信じられない。自分の元妻とわかれば捜査からはずされるので、その前に休職届け出して釧路へ飛ぶ。この事件は五年前から始まっているのだ。彼女の苦しみに気づいてやれなかったボクをゆるちて~。いくつか不審な点はある。令子の倒れ方がおかしい。二度刺されていて、すぐには絶命しなかったのではないか。とどめを刺した人物が他にいるのではないか。半年前、さなえが1億の保険に加入しているのも動機になる。クラブは経営がうまくいっていなかったし。しかし、千駄ヶ谷の件では兄弟にはアリバイがある。吉敷は三ツ矢マンションの管理人(なべおさみ氏)から妙なことを聞き込む。夜鳴き石の伝説とか。鎧武者を目撃したけど警察は取り合ってくれなかった。でも、マンションの玄関から出てくるところが防犯カメラにうつっていて。吉敷は情報屋(たぶん)の村瀬から聞いて、相場という男を訪ねる。令子の共同経営者で愛人らしいが・・。相場役浜田学氏は、浜田晃氏の息子。
北の夕鶴~2/3の殺人2
それにしても、東京ならともかく釧路でなぜ情報屋(たぶん)にすぐ連絡つくの?そのうち、ワイシャツに血をつけ、そわそわした様子の男を乗せたというタクシーが見つかる。令子を殺したのはこいつでは?よくありますよね、自分が殺しちゃったと思い込み、よく確かめもせず逃げちゃうあわてんぼうな人。吉敷の推理では、令子が通子を殺すはずだったのが、何か手違いが起きたのだと。令子に殺意を持つ別の人物がいたのだと。原作には相場は出てこない。令子を殺したのは通子。でもそれじゃまずいってんで相場を出してきて、最初に刺したのは通子だけど、殺してなかったというふうにしたんだろうな。たとえ正当防衛でも、主人公の奧さん(元だけど)が人殺しじゃテレビ的にまずい。さて、通子は自殺を図ったものの死にきれず・・。吉敷はすぐ駆けつけようとしたけど一郎、次郎に袋だたきにされ・・この後は痛みや熱と戦いながらの行動。原作だと肋骨三本骨折、二本にヒビ。おまけに雪の中で動けなくなったり。まあよく死ななかったわねえというくらいひどい状態。読んでいてこっちまでつらくなる。逆に彼をそんな目にあわせる原因作った通子が憎らしくなるんだけどさ。たぶん原作読んでいて通子を気の毒に思う人あまりいないと思うよ(特に女性は)。今回なぜ彼女が藤倉兄弟の言いなりになるのか、なぜ吉敷の前から姿消したのか明らかになるが、それは置いといて(←?)・・だってどうでもいいんだもん・・令子を殺したのは相場。彼は次郎が当たり屋とも知らず(気づけよ!)、ひき逃げをネタに脅されていたと。で、思い余って。てことは愛人じゃなかったようです。一郎は保険金目当てにさなえを殺し、罪を通子になすりつけるため令子が自殺に見せかけて殺すはずだった。それが通子の反撃にあって返り討ちにされてしまったと。何だかんだ言ってもやっぱり通子は死ぬのいやなようで。それにしてもトリックがわかった後、中継点となった次郎のマンションからはっきりした痕跡が見つかったと言わないのは変だな。一郎のマンションの部屋から”微量の血痕”じゃちょいと弱い気がする。で、あの後吉敷と通子の仲はどうなるんですか?吉敷は東京へ戻っちゃうし。まあどうでもいいか。道警の牛越役きたろう氏がいい味出してる。吉敷と牛越は旧知の仲らしい。
4幽体離脱殺人事件(2008)
吉敷竹史を主人公とした作品はいくつか読んでるけど、この作品はまだ読んでない。彼は長身でハンサムで孤独の影を宿していて、あんまり愛想もよくないというイメージがあるので、ヒロインの輝子(相田翔子さん)が吉敷の笑顔に癒やされて・・みたいな描写にはアレレ。おまけに吉敷を演じているのが鹿賀丈史氏なので、笑顔と言っても・・どちらかと言うと怖いんですけど。テレビ向けに吉敷のキャラはやさしくしてあるのかな。伊勢の弁天海岸の兄弟岩のところで男性の死体が見つかる。すぐそばに打ち上げられたのが輝子。近くには彼女の靴と、犯行声明とも受け取れる遺書。管轄外の吉敷が伊勢へ飛んだのは、その一ヶ月前に起きた、武藤という男が輝子を人質に病院へ立てこもった事件のせい。武藤は院長森岡(大鶴義丹氏)の誤診で妻をなくしたと主張。しかし森岡はそれを認めず、輝子を心配するそぶりもなし。強行突破で輝子は助け出されたが、ショックの中で吉敷のやさしさが印象に残ったようで。それで今回助けを求めてきたのだ。もう一人の自分が殺人を犯したようだが、自分には覚えがない。こんな証言県警の旗田達が信じるはずもなく・・。当然彼らは吉敷の存在を煙たがる。輝子は元々このあたりの出身で、親友の陽子(中村綾さん)と二人で、二人の初恋の人、津本を訪ねようと伊勢へ。旅の出発点である品川駅で見知らぬ男にしつこくつきまとわれたが、後で列車の中にもその男は現われた。それがあの死体の男。しかし輝子は彼・・坂上のことは全く知らない。入院している輝子のもとへ駆けつけた陽子だが、彼女の夫小瀬川は東京へ出張に出たまま連絡が取れない。もちろんそのうちあの兄弟岩で死体となって発見されるが、一見自殺に見える。睡眠薬を飲んでの溺死。ケータイには不倫を思わせる、輝子からの電話。で、またまた輝子が疑われる。小瀬川の死体から出たのは、輝子が使ってるのと同じ睡眠薬だし。サングラスをかけた女性の姿が見え隠れする。見ている人は森岡がこの女と不倫していて、邪魔な輝子を陥れようとしているのだと思う。輝子が警察に疑われていても心配するそぶりゼロの森岡はどう見たって怪しい。かえって早く逮捕しろと言わんばかり。結局彼らは殺人には無関係なのだが、輝子に非があれば離婚する際慰謝料払わなくてすむと思っている。ひどいやつだな、この森岡って。
幽体離脱殺人事件2
あの坂上はなぜ輝子につきまとい、誕生日を聞き出そうとやっきになっていたのか、そのうちわかる。輝子がキャッシュカードを落とし、坂上が拾ったのだ。でも暗証番号がわからないのでは下ろせない、それで・・。まあそんなことやってるから事件に巻き込まれ、命を落とすはめに。陽子と夫はお互いを受取人にしてそれぞれ保険に入っていた。死亡保険金は1億5000万。これは十分動機になる。輝子が一日早く伊勢へ来たことや、坂上の出現のせいで計画が狂ったり、その偶然を利用したり。ただ大金を受け取ったのでは当然疑われる。だから輝子を犯人に仕立て上げる。小さい頃からの大親友・・しかしその裏では大病院の三代目の妻におさまった輝子への激しい嫉妬が渦巻いていた。嫉妬し始めると輝子の言動すべてが憎しみの対象となる。しかしその輝子にしたって陽子への嫉妬が・・。修復不可能なほど冷えきった夫との仲。それに比べ小瀬川は何と陽子への愛情にあふれていたことか。うらやましい、妬ましい、ちょっと意地悪してやれ。吉敷もさぞびっくりしたことだろう。清楚なたたずまいの輝子が裏ではそんなこと考えていたなんて。陽子ならわかるけど。見ていて少し気になったことはある。輝子が書いた遺書。実は武藤に書かされたのだが、事件の恐怖などから書いたことは記憶から抜け落ちていて。偶然見つけた陽子が、何かに使えるかもと輝子が忘れているのをいいことに自分の懐へ。うん、だからその遺書には輝子だけでなく武藤や陽子の指紋がべったりとくっついているんですけど。筆跡だけでなくついている指紋もしっかり調べると思うんですけど。あと、陽子と不倫相手の保険屋仁木は塩水で小瀬川を溺死させてたけど、ただの塩水と海水とでは成分違うのでは?あと、小瀬川も兄弟岩に引っかかるのはおかしいのでは?別のところに浮いてるの見つけた仁木があそこへ移したんだろうけど、そんな必要ある?刑事や鑑識達がバーッと砂浜走ってるのもなあ。現場を荒らしてることにならないか?さて、調べてみたら鹿賀氏主演の吉敷のシリーズは四作あって、これはその四作目。これで最後なのね。一作目から見りゃよかったかな。いつだったか新聞のテレビ欄見て、あッこういうシリーズが作られているんだとその時は思ったんだけどね。他の出演は栗山が田畑智子さん(顔小さい!)、班長が伊吹吾郎氏、中村が今は亡き夏八木勲氏。