エストニアの聖なるカンフーマスター
この映画のことは何も知らない。チラシを見てもよくわからない。ブラック・サバス?何それ。見に行ったのは・・いかにも誰も見に行かなそうな映画だから。お客は私を含めて三人くらいか。1970年代・・中国とソ連の国境。空を飛んできた三人の武術の達人(たぶん)が国境警備隊を襲う。理由は不明。生き残ったのはラファエル一人。なぜ殺されなかったのか理由は不明。その後自動車整備工として働くが、仕事より自己流のカンフーに熱中。ある日車が修道院の前でエンコ。修道士達のカンフーを見て自分も・・と願い出る。まともなストーリーのあるまともな映画だとははなから思っちゃいない。無茶苦茶な映画は昔香港製功夫映画でさんざん見て免疫ができてる。それでもクライマックスではラファエルがあの三人の武術の達人と戦うのだろう。そして修道院の危機を救うのだ・・と(いちおうは)思ってる。ところがいつまでたっても三人は出てこない。あら、このまま終わっちゃうのかしら。じゃあ何のために彼らを出してきたんだ?ラファエルのキャラも取りとめがない。なぜかは不明だが、彼には救世主にもなれようかという素質があるらしい。単純だからそれなりに修行にも励む。能力が開花し、長老の後継者にもなれそうだ。しかし長続きしない。彼には欠けているものがある。母親の許可を得るため実家へ向かう途中の車の中で早速タバコを吸っている。必ずと言っていいほど行列に横入りする。それにしても・・この映画がアメリカで作られていたらラファエル役は絶対ニコラス・ケイジだな。30年くらい遅いけど。ラファエル役ウルセル・ティルクがケイジに見えて仕方がない。彼の出現に危機感を抱いているのがイリネイ。もうここで七年も修行していて、後継者は自分と思っていたのに突然ライバルが現われた。イリネイ役はカーレル・ポガ。整った顔立ちで、ザ・ゴールデン・カップスのルイズルイス加部氏(若い時の)に似てるかな・・と。いやホント私ずっと彼を見てました。好きなものはお茶と魚ですなんて・・その慎ましさに胸キュン。絵に描かれた人物の手の形には意味があることを初めて知った。また、何回か流れる男声の聖歌の温かさが胸にズンときた。何度かくり返される”謙虚になりなさい”という言葉も心にしみた。