幸せなひとりぼっち
原作を図書館から借りて読んだのはだいぶ前だ。借りたのはネコが出てくるから。映画の方もそれを期待して・・。オーヴェ(ロルフ・ラッスゴード)は59歳。43年勤めた鉄道会社をクビになり、今は半年前にガンで亡くなった妻ソーニャのそばへ行きたい。この世に何の未練もない。首吊り、排気ガス、列車に飛び込む、銃・・いろいろ試みたけどその度に邪魔が入ってしまう。陽気な家族が隣りに引越してきたり、ささいなことから仲が悪くなったルネが施設に入れられそうになったり、教師だったソーニャの教え子に出会ったり。自殺を試みる度に回想シーンになる。早くに母親をなくし、父親に育てられたこと。偶然出会ったソーニャに一目ぼれしたこと。スペインでのバス旅行で事故にあい、身重のソーニャは赤ん坊を失い、車椅子生活になった。う~ん、あんなおなかが大きい時にバス旅行になんか行きますかね?この世は理不尽なことばかりで、正義は通らない。一人になったオーヴェは車の進入に腹を立て、花束の値段に腹を立て、その他いろんなことに腹を立てる。それでいてまわりからは頼りにされてる。手先が器用で何でも直してくれるし。ネコはあんまり出てこない。確か半分凍って死にかけているはずだが、軽いケガに変更してあったな。尻尾振ってるし全然弱っているふうには見えないのが笑える。原作ではどんなネコになってたか忘れたが、私のイメージでは野良猫だからやせこけてボロ切れみたいになった黒ネコ。でもこちらは毛がフサフサの長毛種。まあスウェーデンだからフサフサでないと冬は生き残れないわな。あと、びしょぬれにして半分凍らせたりしたら動物虐待になってしまうからな。オーヴェはどことなくジョン・グッドマン風。ソーニャ役イーダ・エングヴォルは美人だ。こりゃオーヴェが一目ぼれするのも無理はない。怒ってばかりいるので心臓に悪いぞと、原作読んでなくても見ている人は心配になる。自殺するのをやめた彼に、ある日死が訪れるのは皮肉。静かな中にも適度に笑わせ、適度にジーンとさせる、いい映画。