地下室のメロディー
先日亡くなったアラン・ドロンの若き日の、水もしたたるいい男ぶりが拝める作品。と言っても彼はなかなか出てこなくて、当時の観客はじりじりしたことだろう。五年の刑を終えて出所したシャルル(ジャン・ギャバン)。彼は盗んだ金1000万フランを妻ジネット(ヴィヴィアーヌ・ロマンス)に預けていたらしい。それが900万残っている。警察に怪しまれないようジネットは働いている。遊び暮らしたりはしない。偉い。残った金と家を売った金で南仏で小さなホテルをやりたい。でもシャルルはあくせく働くなんてまっぴら。計画はできてる。カンヌのカジノのシーズン売り上げ10億フランをいただくのだ。自分はもう歳なので、刑務所で一緒だった若いフランシス(ドロン)を仲間に引き込む。運転手が必要なので、フランシスの義兄ルイも雇う。せっせと働いても暮らしは楽にならず、それでも懸命に生きている人達がいる。その一方で一攫千金を狙い、大金持ちになって外国で暮らすことを目論む人達もいる。シャルルは刑務所へ入ってもちっとも懲りていない。フランシスの方も真面目に働く気なんてない。母親の脛をかじり、フラフラとその日その日を送る。カンヌでは二人とも金持ちのフリをする。高級ホテル、気前のいいチップ、たぶんあの900万が使われたのだろう。計画を立てたり必要なものを揃えたりするのはシャルルで、動き回るのはもっぱらフランシス。身が軽く、まるで「ミッション:インポッシブル」のイーサンのようだ。実直な働き者ルイは、計画に乗ったものの、消えていくお金や、こういう世界に身を置くことで自分が変わっていくことに恐れをなす。仕事はするけど金はいらないと言い出す。正常な人間の当然な反応だと思うが、もちろんシャルルにはルイの心の揺れなど理解できない。10億フランの強奪には成功するが、その後は・・。ほとぼりがさめるのをゆうゆうと待つつもりが、急いで逃げ出すはめに。まわりには警官がいっぱい。金の詰まった大きなバッグは目立つ。と言うか別のもっと目立たないバッグ何で用意しなかった?一個を目立つところに置いて発見させ、その騒ぎに紛れて逃げればいいのでは?いやいや、作り手には見せたいシーンがあったのよ。あの印象的なラストシーン。すべてはそこへ持って行くため。