丘の上の本屋さん
イタリア、景色のいい丘の上にはカフェがあって、小さな古書店があって。石畳で車は入ってこれなさそうで。古書店の店主はリベロ(レモ・ジローネ)。常連さんもいれば一見さんもいるが、あんまりはやってなさそう。ゴミ箱をあさって見つけた本を朝一番に売りに来るボジャン。本を捨てるなんて・・リベロの心は痛む。カフェのウエーター、ニコラは何かと口実を設けては店に来る。リベロのことを気にかけてくれる気のいい男。でも一番の目的は店に来るキアラの気を引くこと。ある日リベロは一人の少年エシエンに気づく。ブルキナファソからの移民で、もう6年以上たってるからイタリア語は問題なし。彼のお目当ては店先に出ている漫画だが、お金がないから買えない。そこでリベロは彼に本を貸すことにする。読み終わったら返し、また別のを借りればいい。たぶんリベロは漫画だろうと何だろうと本に興味を持ってくれている、そのことを大事にしたかったんだと思う。彼は一人暮らし、以前病気で入院したことがあるらしい。検査結果を聞きに行くために、ニコラに留守を頼んだりする。戻った彼は浮かない表情で、こりゃあんまり先は長くないのだと予想つく。どういう病気なのかは不明。不明と言えば彼の過去のこともエシエンの家庭のことも不明。リベロが本を渡し、エシエンが公園で読む。返しに来るとリベロは本の感想を聞く。それとなく人生の指針のようなものを話す。二人の交流を本にしぼって、余計な描写がないのがいい。リベロが次にどんな本を渡すのか、興味がわく。ミッキーマウスの漫画から「ピノキオ」や「イソップ物語」のような童話へ。続いて「星の王子さま」、ど~んと分厚くなって「白鯨」。ありゃこりゃ読み通すの大変だぞ。将来医者になると言うエシエンにシュヴァイツァーの伝記。他に「ドン・キホーテ」「アンクル・トムの小屋」「白い牙」。一番最後に貸した・・じゃない、贈ったのは後でわかるが「世界人権宣言」。エシエンが何を感じたかは不明だが、最後はそう来たか・・って感じ。蔵書が持ち主の死によって競売にかけられ、バラバラになるのを悲しむリベロ。本は二度読めと言うリベロ。本は自分で読まなきゃわからないと言うリベロ。全くもってその通り。と言うわけで、自分と本、あるいは本屋さんとの関わりを振り返りたくなるような、そんな映画でした。