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Album『B-2 UNIT』● '80/9/21 ('08/3/12) release

坂本龍一の2枚目となるソロアルバム。当時、YMOのアルバムがヒットしていた最中でのリリースは、YMO脱退を考えていた坂本龍一に対して、 レコード会社がアルバムの制作費出費と残留の交換条件だったそうで。さて、アルバムの中の方はというと、これがポップな楽曲とは正反対に位置するようなナンバーが揃っています。 主たるサウンドはダブかな。どっぷりどっぷりと、ビートを加えたり、ドカドカとドラムのリズムを加えたり、これが坂本龍一?と驚きの連発です。 もうアバンギャルドもいいところだ。代表曲「riot in Lagos」やヴォーカルを自身が務める「thatness and thereness」などを収録。 全体を見ても、やっぱりコアな人が好きになる作品かな。大衆向けではないからこそ、自分が本当にやりたいことをやっては、一気に放出したんだろうな。

1. differencia

PRODUCER:RYUICHI SAKAMOTO Co-producer:Yoshitaka Goto composed and arranged by Ryuichi Sakamoto

バチコンバチコン、ドカドカとリズムを叩き込んできては、アッと驚かせるトラック。なんだ、この衝撃は。 しかも、よく聞くとマシンガンをぶっ放しているかのような音だな。「差異」というタイトル。なかなか意味深だね。 ちなみに、ドラムは坂本龍一自身が叩いたものだということで。

2. thatness and thereness

PRODUCER:RYUICHI SAKAMOTO Co-producer:Yoshitaka Goto composed and arranged by Ryuichi Sakamoto

ゆったりどっぷりした音に悩ましげなヴォーカル。なんと坂本龍一自身がヴォーカルを務めています。 クルト・ヴァイル「三文オペラ」の影響があるとかないとか、このゆったり加減に眠たさを誘って。間奏パートでは、さすがなピアノ演奏を聴かせてくれます。

3. participation mystique

PRODUCER:RYUICHI SAKAMOTO Co-producer:Yoshitaka Goto composed and arranged by Ryuichi Sakamoto

チキチキピコピコなSEを加えつつ、ドカドカとシンセ音が押し寄せてきたりと、なかなか圧を感じさせる1曲。 その後、どっしりドラムが入ってきては、弾けまくる。機械絵的なナレーションが入ってきたりと、全体的には冷たさを感じるね。 さらに後半ではギターが入ってきては、鋭さを加えてきましたよ。

4. E-3A

PRODUCER:RYUICHI SAKAMOTO Co-producer:Yoshitaka Goto composed and arranged by Ryuichi Sakamoto

軍用偵察機がタイトルとのこと。軽めのダブテイストで進行。その中に、ちょっとオリエンタル風な音も加わって、 妖しさも少々感じさせる。ブレイクを何度も挟んだりすると、どこかしら緊迫感もあるようだ。

5. iconic storage

PRODUCER:RYUICHI SAKAMOTO Co-producer:Yoshitaka Goto composed and arranged by Ryuichi Sakamoto

時代に即した音というか、「YMOの坂本龍一」というフィルターを通すとなるほどと思う。デジタルシンセの音がマイナー調メロディを繰り広げると同時に、 浮遊感やダブ要素のある音も加えて不思議な空間を旅する。

6. riot in Lagos

PRODUCER:RYUICHI SAKAMOTO Co-producer:Yoshitaka Goto composed and arranged by Ryuichi Sakamoto

坂本龍一のソロ初期の代表曲というべきナンバーかな。アフリカンビートを彷彿とさせる音を使い、デジタルシンセの差し音がふわっとさせる。 アグレッシヴな躍動感がダイレクトに伝わってくる1曲だね。メロディよりも、リズムを味わう1曲。

7. not the 6 o'clock news

PRODUCER:RYUICHI SAKAMOTO Co-producer:Yoshitaka Goto composed and arranged by Ryuichi Sakamoto

BBCのニュースをコラージュして挿入させるという大胆な手法で、驚かせる1曲。そこにエレキギターのカッティングを加えて、 スパイスを効かせる。頭の中をぐるぐると駆け巡るように、音が襲いかかってくるようだ。

8. the end of europe

PRODUCER:RYUICHI SAKAMOTO Co-producer:Yoshitaka Goto composed and arranged by Ryuichi Sakamoto

アルバムのラストを締めるのは「ヨーロッパの端」ではなく、「ヨーロッパの終末」を意味しているタイトルだそうで。 始まりからもう、ダークダーク。とにかく暗く重く、ベースの単調なリズムも不安感しかないね。

Album『左うでの夢』● '81/10/5 release

坂本龍一のソロ通算3作目の作品。前作「B-2 UNIT」のアヴァンギャルドなダブトラックから一転、今作ではポップな面が出ていて、全く正反対な位置にたどり着いたような感じだね。 ちなみに、坂本龍一はピアノのみならず、ベースやギター、ドラムパーカッション、マリンバなどを演奏しているんだけれども、それ以上にヴォーカルにたくさん挑戦しているところに驚き。 ヘタウマな、ちょっと不思議なヴォーカルがクセになるんだろうな。 「サルとユキとゴミのこども」の味わい、「Venezia」の超ポップなトラックなど、多種多様。もちろん、インストナンバーもポップさを出してきたり、 前作の延長を行くようなプログラミングトラックなどがあったり、夢見心地にさせてくれますよ。盟友、細野晴臣や高橋幸宏も参加した、濃密な作品となっています。

1. ぼくのかけら

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Words:Shigesato Itoi Music:Ryuichi Sakamoto

独特のリズムが印象的なナンバーから、アルバムは幕開け。どっしり、のっしりと、ふわっとしながら、オリエンタルなテイストを盛り込んで展開。 そして、ヴォーカルが入ってきたと思ったら、歌ではなく、ポエトリーリーディングのような、語りのような。

2. サルとユキとゴミのこども

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Words:Shigesato Itoi Music:Ryuichi Sakamoto

リズミカルなトラックで、ポップなナンバー。坂本龍一自身がヴォーカルを務めていて、 とっても明るく、印象的だね。歌詞は糸井重里が書いています。なんか、深いのか、浅いのか。

3. かちゃくちゃねぇ

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Words:AkikoYano Music:Ryuichi Sakamoto

タイトルがまた逸材。なんでも、津軽弁らしい。なるほど、矢野顕子が作詞。 鹿尾jの故郷が青森なんだっけ。でも、トラックは沖縄風のメロディの仕上がり。この不思議なテイストがいいんじゃない。しばらくはゆったりと。浮遊感を伴って。 後半からはリズムがさらに加わって、躍動感を増してきたぞ、びっくりだ。ということで、坂本龍一のヴォーカルがループするように繰り返されています。

4. The Garden Of Poppies

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Music:Ryuichi Sakamoto

ちゃかちゃかとした音、そしてドカドカリズム。シンセベースの深みとディストーションが効いた音も広がる、不思議な1曲。 これがポピーの花咲く庭とはね。近未来な感じもするけれども、次第に増えてゆくドラムの音にやられますね。

5. Relache

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Music:Ryuichi Sakamoto, Robin Scott, Adrian Belew

こちらもインストチューン。ピコピコポップなサウンド。電話が鳴るようなSEを加えて、軽快に展開。 時代を表す音だね。YMOと坂本龍一の両方が持つイメージがうまく音に表れている。

6. Tell'em To Me

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Words:Akiko Yano Music:Ryuichi Sakamoto

緊迫感のある深い音。アンビエント要素やダブ要素を感じさせては、心地良く。 ただ、坂本龍一のヴォーカルがまた、なんとも言えないんだよね。ボソボソと。中盤にはギターがギュイーンと、うねりをあげる。 ここはかっこいいんだ。そして、最後は急降下のごとくフェイドアウト。

7. Living In The Dark

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Words:Tetsuro Kashibuchi Music:Ryuichi Sakamoto

ガムラン的音使い。オリエンタルでエスニックな風味を加えて、元気いっぱい?に歌を聞かせてくれるナンバーです。 中盤のコーラスパートは、随分と重厚ですね。躍動感もあって、勇ましい曲です。

8. Slat Dance

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Music:Ryuichi Sakamoto

ゆったりテンポ、どっぷりSE。そして、心地良く引き込まれていくようなトラックです。 最初は淡々としていたのに、やがて入ってくるシンセの音も深く深く、沈んでゆく。

9. Venezia

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Words:Tetsuro Kashibuchi Music:Ryuichi Sakamoto

ポップでキャッチーなナンバーの登場。シンセサウンドの打ち込みポップ。そこにヘタウマな坂本龍一の元気いっぱいヴォーカルが加わる。 でも、コーラスが加わると、厚みがあって、なかなか壮大だな。メロディがやっぱりイイね。あまりベネツィア感はないけれども。

10. サルの家

Produced and arranged by Ryuichi Sakamoto Co-Produced by Robin Scott Music:Ryuichi Sakamoto

ピコピコな音を加えつつも、随分とケモノ感が伝わってくるトラックだな。 そして、これがアルバムの締めというのも面白い。猿の声もサンプリングのごとく挿入。全体的に歌がカオスなんだけどね。

Best Album『BEST SELECTION』● '90/9/11 release

坂本龍一のベストアルバム。アルバムからリリースされているので、その時代の楽曲を中心にコンパイル。 「RIOT IN LAGOS」「THATNESS & THERENESS」「サルとユキとゴミのこども」などを収録。まぁ、「B2-UNIT」「左うでの夢」をまとめたような感じだね。 ピコピコ打ち込みサウンドや、坂本龍一ヴォーカルのナンバーなど、当時の味わいが出ていますね。 この頃の音楽的趣向がよく表れた作品です。ただ、「ベストセレクション」と言われると、ちょっと違うような気もしてならないかな。

Sound Track『LOVE IS THE DEVIL』● '99/4/21 ('10/3/17) release

映画「愛の悪魔/LOVE IS THE DEVIL」のサウンドトラックを坂本龍一が担当。 ピアノやシンセサイザーで聞かせてくれるんだけれども、いわゆる綺麗な旋律をたどって1つのメロディをしっかりと聴かせてくれるような曲ではなく、 ノイズミュージックやエレクトロニカサウンドに通じるようなトラックで、曲を構成。 どちらかというと、実験的な音使いが印象的だな。その場面その場面で即興的に奏でられたようなトラックが、坂本龍一の才能をより一層深化させて聴かせてくれるような展開だね。 効果音でもあるけれども、ただ単なる音に終わらない、この絶妙なバランスが味わいを与える。もはや、サウンドトラックの域を超えた、坂本龍一のソロ作品でもあるね。

再発盤には、よりディープに聴かせてくれるTaylor Deupreeのリミックスを追加収録。

Best Album『坂本龍一の音楽 early best songs』● '99/9/18 release

坂本龍一の初期ソロ作品から、コンパイルしたベストアルバム。正直ちょっと無理があるかなと思うのは、「energy flow」がヒットしている最中のおこぼれにあやかろうという魂胆にも見えてしまうところ。 何はともあれ、「千ナイフ」「KYLYN」「The End of Asia」の中から、13曲をじっくりと楽しもうか。「The End of Asia」ならびに「グラスホッパー」は2トラック入っていて、聴き比べするのも楽しいのかな。 やはりシンセサウンドがメインでピコピコしていて、その当時の先端音楽をいち早く披露していたんだなと。