album

1st Album『pray』● '95/12/21 release

女優の歌手デビューとなると、脂の乗っているイメージがあると同時に、新たな魅力を届けてくれる期待もあって、楽しみ半分、怖さ半分。 しかし、松雪泰子が小西康陽の曲で歌手デビューをしたことには驚いたなぁ。 さらに精力的にシングルをリリースして、ついにはオリジナルアルバムを発表。デビュー曲「ESP」は、リミックスを施して、かっこよくなっています。 そのほかの楽曲も、ポップだったりクールだったり、リラックスムード溢れるものだったり。なかなか眼の付け所がいいミュージシャン達が揃っています。 松雪泰子のヴォーカルは、お世辞に上手いと言えないけれども、中~低音域を使い、伸びやかに響かせています。 デビュー曲の、あのぶりぶり感は何だったのだろうか。というのはさて置き、松雪泰子自身も曲作りに参加していたり、 まだまだ音楽活動も始まったばかりながら、このあとの展開が楽しみになってきますね。 ジャケット及びブックレットの写真がまた、かっこいいのなんのって。こういうビジュアルを見ると、やっぱり女優ってすごいよね。

1. 時を越えて

作詞:松雪泰子 作曲:松本俊明 編曲:黒羽康司

松雪泰子のシングルナンバー。というか、シングル2枚同時発売というのもすごいね。 勢いに乗っている証拠だ。こちらのナンバーは、いきなり「イェ~イ」と伸びやかなヴォーカルを聞かせてくれた。 と思っていたら、低いヴォーカルが流れる。あれ、デビュー曲「ESP」では、もっとぶりぶりした歌い方だったのに。もう路線変更ですか。 曲の方はポップなナンバー。アニメ主題歌ならではの力強さがありますね。作詞は松雪泰子自身が担当しているところにも注目。

2. ESP (Re-Mix)

作詞:小西康陽 作曲:小西康陽 編曲:井出靖/太田桜子

歌手・松雪泰子の誕生。デビュー曲はpizzicato fiveの小西康陽が作詞・作曲を手がけた豪華なスタート。 もうね、ほとんどpizzicato fiveなんだよね。とてもポップでキャッチー。松雪泰子のヴォーカルは、御愛嬌ということで。楽しく歌って聞かせてくれます。

アルバムではリミックスを施して収録。クラブ寄りの4つ打ちビートとパーカッションが弾けるトラック。なかなかかっこいいね。

3. Running In The Sun

作詞:吉元由美 作曲:杉真理/松尾清憲 編曲:井上富雄

ゴージャスなイントロが響いたアップテンポチューン。 爽やかな流れで、スーッと染み込んで来る様なナンバーだね。作曲に杉真理、ベースに小松秀行などの名もあって、 実に豪華な1曲。ストリングスも大活躍だ。

4. Rain -雨に抱かれて‥‥-

作詞:松雪泰子 作曲:松雪泰子/松本俊明 編曲:山川恵津子

2枚同時でシングルをリリースした松雪泰子。随分と勢いが出ているよね。 こちらのナンバーは、しっとりと聞かせてくれるバラード。なんと、作詞のみならず作曲にも参加していて、作り手の力も見せ付ける。 優しいメロディにうっとり。派手さはないけれども、曲の力は結構あるね。

5. Stay with me‥‥

作詞:松雪泰子 作曲:柿原朱美 編曲:井出靖/太田桜子

いきなりシタールの音が登場しては驚かされました。 本編は裏打ちビートがクセになるディープなミディアムチューン。ここにストリングスが入ってきては、大きく盛り上げてくる。 この組み合わせが、意外にマッチしています。なんだか、ものすごい世界。

6. 月の香る夜

作詞:松雪泰子 作曲:キハラ龍太郎 編曲:キハラ龍太郎

ボッサテイストの小粋なポップチューン。なるほど、キハラ龍太郎が作・編曲を担当。 おしゃれに仕上がっています。フルートも響いては、上品なムードが広がります。 軽やかな松雪泰子の世界。

7. Want you here tonight (『時を越えて』Brazil Version)

作詞:松雪泰子 作曲:松本俊明 編曲:黒羽康司

シングルナンバー「時を越えて」の別バージョン。 ブラジリアンテイストを出して、心地良さが出ています。リラックスムードもあったり、リゾート気分もあったりで、 面白さの出たトラックですね。ラストのコーラスもいい感じに広がってゆきます。

8. WISH

作詞:吉元由美 作曲:松本俊明 編曲:松本晃彦

アルバムからの先行を切る、4枚目のシングルナンバー。 リリース時期にぴったりな冬の切なさの出たバラードチューン。 中低音のヴォーカルで、しっとりと歌う松雪泰子のヴォーカルが、意外に芯があって、聞き応えがあります。 デビュー間もないのに、この成長振りはすごいな。ドリーミングなサウンドに包まれます。

9. ゆめ

作詞:彩田瑛未 作曲:大野由美子 編曲:朝本浩史

レゲエのようなゆったりサウンドで聞かせてくれるナンバー。 アレンジが朝本浩史だったんだね。この音は納得だ。ゆったり、まったり。夢も心地な気分にさせてくれます。

10. pray‥‥

作詞:松雪泰子 作曲:柿原朱美 編曲:井出靖/太田桜子

アルバムのラストを飾るタイトルチューン。 アンビエントテイストで包み込んでくれるような音。神秘性を出している音に比べると、松雪泰子のヴォーカルがちょっと強いかな。

2nd Album『mondodelix』● '97/3/19 release

松雪泰子、待望の2nd Albumは、シングル「空っぽの愛の嵐」を筆頭に、ギターをかき鳴らすロックナンバーがメインとなる多彩な全12曲。 とにかく作詞だけでなく作曲での才能を開花する松雪泰子に脱帽。この人、すごいね。 自由自在に音を操ったり、英語詞を巧みに操ったりで、いろいろな面を覗かせる。 歌い方も、前作アルバムでは中~低音域でじっくりと聞かせてくれたけれども、 今作は音に合わせて、弾けたり艶かしかったりと、変幻自在。さすがは女優を稼業としているだけあります。 アルバムとしては統一感が出ているけれども、もう少しキャッチーさがあってもよかったかな。 何はともあれ、ジャケットで、下着を脱いで、くわえタバコで便座に座っている姿がかっこよすぎますよ、松雪姐さん。

1. はるかかなた‥‥

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

ザックリギターで幕開けるアルバムのオープニングチューン。 パーカッションのどっぷりした音が、どこかしらインディアンな風味を漂わせる。 松雪泰子のヴォーカルも、どこかしら妖しさを出して、かっこいい。本人が作詞・作曲を手がけているというだけでも、かなり驚きの1曲。

2. つかまえていて‥‥

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

いきなり英語の歌詞でかっこよさを演出。こちらも松雪泰子自身が作詞・作曲という、才能を見せ付ける1曲。 随分と歌い方がソウルフルだね。軽さと重さが上手く交差するロックチューン。ギターのGAKUがいい音を聞かせてくれます。

3. 空っぽの愛の嵐

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

松雪泰子が作詞・作曲を手がけた、渾身のシングルナンバー。 自身の出演するドラマ主題歌ながら、精力的に活動していますね。キャッチーなメロディとともに、 随分とカラッとした仕上がりで、軽快な音がポップに弾ける。松雪泰子のヴォーカルも、いい具合に突き抜けていますね。

4. Free fall lovers

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:GAKU Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

ギターが疾走するアップテンポチューン。 GAKUの腕が光る一品。松雪泰子のヴォーカルは、随分とクセを出してきたね。 さすがはいろいろな役を演じているだけあって、変幻自在。なんか、歌い方がかっこいいですよ。吠えるようで。

5. Monderelaxな夜

Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

小休憩のインストナンバー。何かが聞こえてきては、すぐに消え入ってしまうような流れで、あっさりと。

6. Free your mind and free your soul

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

こちらも松雪泰子が作詞・作曲を手がけた1曲。ラップのような早口を披露して、斬新だね。 そこにGAKUのかき鳴らすギターがかっこよく響き渡ります。場所によっては、アグレッシヴな歌唱スタイル。なかなかかっこいいですよ。

7. 空虚の夢

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:SATOSHI NAKAMURA Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

ゆったり、まったり。タイトルのような夢の雰囲気を出すミディアムチューン。 淡々とするプログラミングビートとからむGAKUのギターが味を出す。サビはキャッチーに引き込むというよりかは、さらっと流れていくように。

8. 愛しきれない‥‥

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

小さなイントロがあって、囁くように歌う松雪泰子。 なんか、艶かしいよね。雑踏のSEを入れて、ライブ感も出して。GAKUのギターは、ブルージーに響き渡る。

9. Darkness & Moonlight

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:MOMOKO SUZUKI Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

COSA NOSTRAの鈴木桃子が作曲を担当した、ファンキーなロックチューン。松雪泰子も攻撃的な面を見せるね。 サビの歌い方が、とにかくアグレッシヴだ。

10. Everybody Shake Hip

Words:YASUKO MATSUYUKI∞EIMI SAIDA Music:GAKU Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

なんと全編英語詞でクールに決めるナンバー。 歌詞の方は、もうノリで乗り越えちゃう、みたいな雰囲気だね。ヴォーカルも同じく。GAKUのギターがやっぱりいい味を出していく。

11. Sweetest

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

こちらも全編英語詞で、まったり淡々ビートが流れるミディアムスローのバラードチューン。 タイトル通りに甘い甘い雰囲気を持ち合わせている。松雪泰子のソングライティング力を見せ付ける1曲。

12. Mondodelixな夜

Music:SATOSHI NAKAMURA Arrangement:SATOSHI NAKAMURA

アルバムのラストを飾るインストナンバー。 弾むピアノから、優雅な雰囲気が伝わってくる。笑い声なども入っては、まるで映画の一幕のように。

3rd Album『32'05”』● '98/6/17 release

松雪泰子、3枚目となるオリジナルアルバムは、変にひねりも加えず、収録分数をそのままタイトルにしてしまうというもの。潔いね。 そして、音楽のパートナーから私生活のパートナーにもなったGAKUの世界を見事に仕上げた1枚。 それにしても、松雪泰子は果敢に作曲に挑戦するね。類まれなる才能を発揮する。 歌詞はよくある内容だけれども、メロディがいいね。そして、全体のプロデュースを手がけるGAKUのアレンジも、 軽いものから重いものまで、ギターを中心としたロックチューンでガッツリと聞かせてくれますよ。 前作「mondodelix」以上に松雪泰子のロック感が出ているんじゃないかな。 少ない曲数だからこそ、ストレートに伝わり、コンパクトな収まり具合もいいね。 先行シングルにもなったドラマ主題歌「愛の世界」のできは本当にいいです。

1. ウソつき

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:GAKU

淡々としたビートを聞かせて始まるミディアムチューン。 松雪泰子のヴォーカルも幅を利かせて。今回も作詞と作曲を担当しては、 クリエーター魂を見せる。サビの畳み掛けはすごいな。それ故、ちょっと声に疲れも感じる。

2. 天使の森

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:GAKU Arrangement:GAKU

カラッとしたギターを聞かせるアップテンポナンバー。 かき鳴っては、軽やかに。サビではキャッチーなメロディを聞かせる。終始優しく、全体的にあっさりとした印象。

3. なんてバカなんだろう…

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:GAKU

松雪泰子が作詞・作曲を手がけたネオアコロックチューン。 ちょっと気だるい歌い方が、逆にそそりますね。音の方はカラッとリズムよく。歌詞の方は、ちょっと切なく仕上がっています。

4. 赤い毛糸

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:GAKU Arrangement:GAKU

イントロからギターの音が渋いね。 でもって、弾けるドラムとともに、ロックしています。松雪泰子の歌い方、なんだか舌足らずじゃない? NOKKOみたいに聞こえます。

5. 愛の世界

Words:CHIDORI MURATA and YASUKO Music:GAKU Arrangement:GAKU

松雪泰子、お久しぶりとなるシングルナンバーは、かき鳴るギターの音がクセになるポップチューン。 メロディパートは軽めながら、サビではどっしりと引き込んでくるようなつくり。キャッチーなメロディもいいんだよね。 このギャップがいいね。3分にも満たないサイズながら、濃い印象を与える曲に仕上がった。

6. TO BE FREE

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI and GAKU Arrangement:GAKU

パーカッションがポップに弾むミディアムロックチューン。 メロディパートは力があるのに、サビは妙にサラッとしすぎでつまらないぞ。 ラストサビだけ、歌い方が変わって良くなったかな。

7. BLUE

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:GAKU

アコーディオンが頭から鳴り響いています。しかも、松雪泰子本人がアコーディオンを弾いているとは。 作詞・作曲・歌にアコーディオンと、芸達者ですな。 ちょっと物憂げなヴォーカルも、いい感じに、間奏やアウトロでのリコーダーが温かさを生む。

8. そっとね

Words:YASUKO MATSUYUKI Music:YASUKO MATSUYUKI Arrangement:GAKU

耳元で囁くように歌う松雪泰子がセクシーですよ。 さらには、バックで鳴り響いているピアノの演奏も松雪泰子。 アルバムのラストを締めるにふさわしいバラードナンバーです。

Best Album『M.M.M.』● '99/2/17 release

3年間の音楽活動を総括する、松雪泰子の初のベストアルバム。 本人選曲で、こだわりのある全10曲を収録。この10曲という数の少なさが、逆にこだわり感を出しているよね。 全シングル曲をすべて収録するのではなく、きちんと取捨選択していたり、これまでリリースした3枚のアルバムの中から、1曲ずつチョイスしたり。 こういうつくりのベストアルバムは大歓迎。 しかも、収録シングル曲も、オリジナルアルバムには未収録だったものが多く、ここでようやく補完できたという形になった。 デビュー曲「ESP」がpizzicato fiveの小西康陽ということもあり、華々しいデビューで随分と驚かされたけれども、 その後はポップな路線を辿り、2枚目のアルバムからは自分で作曲をするようになり、 3枚目のアルバムでは、公私ともどもパートナーとなったGAKUとの二人三脚で聞かせてくれたり。 松雪泰子は、結構、音楽に挑戦しまくった3年間だったんじゃないかな。女優の枠を大きく飛び越え、見事に花が開いた音楽活動をここで凝縮して聞かせてくれます。