2022年104

【中小企業のIT投資は社長が仕切れ!】

開業医も経営者、悩みも同じ


筆者は最近、歯の治療を集中的に行っており、従兄の歯科医に診てもらっています。先日の治療後にその歯科医から質問を受けました。

「マイナンバーカードの健康保険証のことなんだけど。やはり専門の読み取り装置を購入しないと使えないんだよね?」

マイナンバーカードを健康保険証として利用するにはオンライン資格確認が必要となります。オンライン資格確認とはマイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等によりオンライン資格情報の確認ができるということをいいます。

「オンライン資格確認のためにかなりの導入コストを要するので迷っている。所属する歯科医師会の会員も同じように迷っていて、すでに導入している会員は少ない。それでもすぐに導入したほうがいいのかな?」というのが相談内容でした。調べてみると導入にかかる費用は、歯科診療所ではカードリーダー1台は無償提供されますが、それ以上の費用は以下が必要になります。


① 資格確認端末の購入と導入

② レセプトコンピューター等のアプリケーションを組み込むパッケージソフトの購入と導入

③ オンライン請求回線の導入、既存のオンライン請求回線の増強

④ レセプトコンピューターの既存システムの改修等、周辺機器の整備費


これらの費用に対しては導入段階では補助金が支給されますが、導入後のランニングコスト等はすべて歯科診療所負担となります。これは歯科診療所の経営の観点から見れば、非常に大きな問題です。全国の歯科診療所の数はコンビニエンスストアより多いのです(歯科診療所約69,000件、コンビニエンスストア約56,000件)。そのため飽和状態にあるのではないかと言われています。歯科診療所の経営というのはけっして楽ではありません。一昔前の歯科医=大金持ちというイメージではないのです。ですから、経営者でもある院長はコストに関してはシビアになります。

さらに従兄の歯科医が質問した「専門の読み取り装置を購入しないと使えないんだよね?」は資格確認認証端末のことで、数社のメーカーから製品が出ていますが、どれも筐体が大きいのです。「ウチの受付にあんな大きな端末は置くスペースが無いよ。大きな病院ならともかく、一般の歯科診療所はどこも同じではないかな」、「今どき専用の端末が必要なの?確定申告に使うようなカードリーダーではダメなの?」といった疑問を発してきました。従兄の歯科医はITに特に詳しいわけではありませんが、新しいもの好きで本来であれば真っ先に導入してもおかしくないのです。しかし、導入と導入後の維持管理コストや機器設置のファシリティ上の問題が大きく、二の足を踏んでいるのです。


開業医も経営者なのです。これは経営者としては当たり前のことだと思います。

2022月10月